車がある。携帯電話もある。それでも登場人物が長い距離を動くとき、出てくる乗り物は飛行船か船です。
ハンター試験の会場移動も、ヨークシンへの往復も、暗黒大陸への出航も同じ。旅客機に乗り込む場面が、ほとんど見当たりません。
ただ、この世界で人を止めているのは乗り物の側ではない。移動が止まった場面を、止めていたものごとに分けるとはっきりします。
※ハンター試験編・ゾルディック家編・ヨークシン編・キメラアント編・暗黒大陸編の展開に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ハンターハンターの移動手段は飛行船と船に寄っている
まず、長距離の移動で使われている乗り物から。
ハンター試験では、二次試験の会場から三次試験のトリックタワーまで飛行船で運ばれる。受験者は塔の屋上に降ろされ、そこから72時間の課題に入ります。三次から四次のゼビル島へは船で2時間ほど(→ ハンター試験の日数は10日ぶんしか確定していない)。
暗黒大陸へ向かうブラックホエール号も船だ。カキンの国家事業として出港し、船内が5階層に分かれている(→ ブラックホエール号の内部は5階層)。
技術が遅れている世界ではありません。車も電子機器も普通に出てくる。戦闘機や核ミサイルまである。それでも民間の空の便は飛行船と気球が担っているとされます。なぜ速い便が広まっていないのかは、作中で説明されていません。
速い乗り物が無いのではない。速い乗り物が旅客に使われていないだけだ。
ハンターハンターで移動を決めているものは3つ
原作にこの3分類が出てくるわけではない。移動が止まった場面を集めて、止めていたものごとに分けたものです。
| 決めているもの | 具体例 | 足りないと何が起きるか |
|---|---|---|
| 金 | 飛行船や船の運賃/暗黒大陸ツアーの費用 | 出発できない |
| 資格や立場 | ハンターライセンス/ブラックホエール号の第1層と第2層の席 | 入れる場所が狭くなる |
| 許可 | 暗黒大陸への渡航申請 | 順番が来ない |
上の2つは分かりやすい。金が無ければ動けず、立場があれば行ける範囲が広がる(作中の金額の感覚は → ジェニーは円の9割)。
3つ目だけ性質が違う。金と立場をそろえても、許可を出す側が見るのは誰の名義かだ。個人で暗黒大陸へ渡ろうとすれば、紹介状と手続きに何か月もかかる。通っても加われるのは監視付きのツアーだけ(→ 暗黒大陸の渡航禁止が足止めするのは個人だけ)。
3つで、作中の移動はだいたい説明が付く。付かない例が2つ残ります。
NGLは乗り物ごと入れない国
1つ目はNGL自治国。ここで問われるのは、どうやって着いたかではない。何を身につけているかです。
カイトたちが国境の検問所で受けた入国審査は、機械類・貴金属・石油製品・ガラス製品を外すこと。眼鏡も認められず、化学繊維やプラスチックを含む服も通らない。体内のボルトやインプラントのように、その場で外せないものがある人は入国そのものができません。
条件をそろえられたのは5人だけで、しかも監視付きの入国だった。
つまり、乗ってきた物を全部手放せるかどうかが入国の条件になっている。移動の手段を持っている側ほど、この国には入りにくい。車で乗り付けても、車ごと置いていくしかないからです。
審査は徹底していて、機械の持ち込みが見つかれば死刑になることもあるとされる。それでも国の中ではキメラアントが育っていきました(→ NGL自治国は機械しか止められなかった)。
金でも資格でもなく、装備で弾かれる。3つの分類のどれを満たしても、NGLには入れません。
試しの門は力で押し開けるしかない
2つ目はゾルディック家の試しの門。ここには運賃も、資格も、許可も要りません。要るのは扉を押し開ける腕力だけです。
門は重さで段階が分かれていて、どこまで開けられるかにその人の力がそのまま出る。開けられない者に回り道は用意されていない。この門以外から入れば侵入者と見なされ、番犬のミケに襲われます(重さの数え方は → ゾルディック家の試しの門は何トンか)。
金で通れる場所は金を持つ者に開き、資格で通れる場所は資格を持つ者に開く。この門だけが訪ねてきた人の体そのものを条件にしている。持ち物も肩書きも関係ない。
ただし、拒む判断をしているのは門の内側の人間だ。門を抜けたゴンたちの前には執事見習いのカナリアが立った。その先では執事のゴトーが「キルアの友達としてふさわしいか」を試している。母のキキョウは追い返す側に回り、最後に会わせると決めたのは父のシルバでした。
門は誰も拒まない。拒むかどうかは、門の内側で別の人が別の基準で決めている。
移動を止めているのは乗り物の側ではない
例外の2つは、どちらも乗り物と関係のないところで人を止めていました。NGLは装備を条件にし、試しの門は腕力を条件にしている。国境まで車で行けても、門の前まで歩けても、その先へ進めるかは別に決まる。
この見方で3つの分類に戻ると、どれも同じ形をしていると分かります。運賃を出せるかは、乗せる側が値段を決めた結果だ。ライセンスで入れる範囲が広がるのは、入国を管理する側が資格を認めているからでしかない(→ ハンター協会は国家の上にいない)。3つ目の許可にいたっては、申請を通す相手を選ぶ制度そのものです。
暗黒大陸に着けないのも、船が遅いからではない。V5が渡航を禁じているからだ。
5つの場面を見るかぎり、移動を決めていたのは乗り物ではなく、行き先の側の条件だと読めます。
そう考えると、長距離の便が飛行船のままなのも、速さを競う理由がどこにも無いからだと思えてくる。俺はここに物語の側の都合も見ています。速い便で1日で着く世界なら、飛行船の中の時間そのものが消える。ゴンとキルアがネテロとボールを取り合う場面も無くなる。ヨークシンへ向かう道中で顔ぶれが入れ替わる時間も残りません。
念で距離をどう縮めるかは、また別の話になる(→ 念での移動は何を動かしているのか)。あちらは個人の技で例外を作る側で、こちらは全員に等しくかかっている条件の側です。
まとめ|ハンターハンターの移動手段と、その手前の条件
- 長距離の移動で描かれるのは飛行船と船。車も電子機器もある世界で、旅客機に乗る場面はほとんど出てこない
- 民間の空の便は飛行船と気球とされるが、速い便が広まっていない理由は作中で説明されていない
- 移動を決めているものは3つ。金(運賃)/資格や立場(ライセンス・上層の席)/許可(渡航申請が通るか)
- NGLは3つのどれでもなく、機械や貴金属を外せるかで入国が決まる。乗ってきた物を持つ側ほど入りにくい
- ゾルディック家の試しの門は、金も資格も要らず、開けられる力があるかどうかだけを見ている
移動の場面をたどると、乗り物の性能の話はだんだん減っていきます。残るのは、その先が受け入れてくれるかどうかだけ。
行き先の条件が、乗り物より先に移動を決めている。飛行船が長く使われているのも、速く着く必要がない世界だからだと思います。
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- ゾルディック家の試しの門は何トンか — 腕力で決まる入り口の数字
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