NGL自治国は機械しか止められなかった|蟻が育つまで誰も気づかない国

キメラアントの女王が海を漂ってNGLに流れ着いたのは、たまたまです。ただし、その後の被害の大きさは偶然ではない。流れ着いた先がNGLだったことが、被害の桁を変えました。

NGL自治国には、中で何が起きても外から見えなくなる条件が揃っていた。その条件は3つ。そして同じ数だけ、それをすり抜けて中に入ったものがいます。

※キメラアント編の展開に触れます。

NGL自治国は表と裏で別の顔を持つ国

NGL(ネオグリーンライフ)は、機械文明に頼らず自然と共に生きることを掲げた自治国。建国したのはジャイロという人物とされる(→ ジャイロの正体はどこまで描かれたか)。

掲げている理念は自給自足だ。電気で動くもの、自動車、銃はもちろん、化学繊維や金属のボタンまで持ち込みを拒む。国境の検問所では、入国する人の持ち物を細かく調べます。

ところが、この国では麻薬「D²」が密造されている。作られている場所は、自然保護区として立ち入りを禁じた山の中だ。機械を締め出すという理念は、外から見張られないための建前でもありました。

自然を守るための国という表向きと、麻薬の生産地という実態。この二重の作りが、そのままキメラアントに都合のいい条件になる。

NGLが外から遮っていたのは情報・人・念

原作にこういう分け方が出てくるわけではありません。NGLが外との間で何を遮っていたのか。種類ごとに並べ直すと次の3つになる、という当サイトの整理です。

遮っていたもの 中身 キメラアントにとっての意味
情報 電気で動くものを持ち込めない。通信は手紙、移動は馬 中で何が起きても外へすぐには伝わらない
検問所での持ち物検査。一般の旅行者や商人が来る国ではない 異変に気づく第三者が入ってこない
念を使える住民が本編に出てこない 兵隊の段階の蟻でも一方的に人を狩れる

被害を長引かせたのは、たぶん情報の遮断だ。急ぎの知らせを送る手段が手紙しかなければ、人が消え続けても外へ届くまでに時間がかかる。

実際、外の世界が最初につかんだ手がかりは、遠く離れた浜に流れ着いたキメラアントの体の一部でした。国の中から知らせは出てこない。蟻はそこにいるはずだと当たりをつけたハンターが、自分たちで調べに入っている。

人の遮断は、その状態をさらに長引かせた。麻薬の密造国に、好んで立ち寄る旅行者はいない。国の側にも、外から客を呼ぶ理由がありません。外から誰も来ないので、消えた人を探す者も来なかった。

念については、遮断というより結果です。NGLの住民は念を知らない一般の人たちで、念を使う住民は最後まで本編に出てこない。念を持たない相手なら、生まれたばかりの兵隊でも捕らえられる(→ 念を知らない相手に念は効くのか)。1日に人間50人分を狩れと女王が命じても、止める者がいなかった。

3つが同時に効いて、女王は誰にも邪魔されずに巣を大きくできた。摂食交配で人間を取り込み、質の高い個体を産み続けます(→ キメラアントの階級は何で決まったのか)。蟻に必要だったのは強さではなく、邪魔の入らない時間のほうでした。

NGLの遮断をすり抜けて中に入ったもの

3つの遮断は、機械を持った人間を止めるようにできている。だから、機械を持たないものには効かなかった。中へ入り込んだものが3つある。

女王|検問のない側から入ってきた

いちばん大きな例外は、キメラアントの女王そのものだ。傷ついた体で海を漂い、NGLの浜へ流れ着いて、海辺の洞窟に身を隠しました。ゴンとキルアがグリードアイランドを出た頃だとされています。

誰かに運ばれたわけでも、検問を通ったわけでもない。NGLの入国審査は、陸から来る人と、その人が持つ物を調べる仕組みです。海から流れ着く生物を止める仕組みは、そもそも用意されていない。

機械を持ち込まない生物にとって、この国の審査はないのと同じだ。女王は理念のいちばん外側から、何の抵抗も受けずに入った。

ハンター|正面から通れる資格を持っていた

次の例外は、検問を正面から通った人たちです。カイトは生物の調査チームを率いてNGLへ入り、ゴンとキルアが同行する。ポックルとポンズも、別のチームでこの国に入っていました(→ ポックルは”蟻編の戦犯”なのか?)。

彼らはNGLの決まりに従って入国している。機械を置いていけば通れるのだから、ハンターにとって検問はほとんど障害にならない。表の「人」で数えていたのは一般の旅行者や商人。資格を持って調べに来る側は、数に入っていなかった。

ここで遮断は逆に働きます。ポックルは蟻に捕らえられ、ネフェルピトーに脳を開かれて念の知識を抜き取られた。念を使う住民のいない国に、外から念の知識が持ち込まれた形だ。

念の遮断が届いていたのは、NGLの中にいる人までです。外から入ってくる念能力者までは数えていない。蟻が念を覚えたのは、その数え落としからだ。

麻薬|閉じた国が外とつないでいた1本

3つ目は、物のほうの例外だ。NGLは麻薬D²の生産地で、この薬は国の外へ流れている。機械も情報も遮った国が、麻薬の取引だけは外と続けていました。閉じているのは表向きで、商品の流れる道は最初から開いている。

とはいえ、この道を通って中の異変が外へ伝わることはなかった。麻薬の取引をする側は、国内で人が消えていることを外に言う立場にないはずです。むしろ知られたくない側だろう。

外とつながる道は1本だけ。しかもその相手こそ、国内の異変を外に出したくない側だった。情報が外へ出ない条件としては、これ以上ないほど揃っていたと言えます。

NGLの遮断は機械が基準|だから機械を使わない相手に効かない

3つの例外に共通しているものがある。NGLの遮断は、機械を基準に作られていました。

機械を持った人は止められる。持たない生物は止められない。機械を置いてきた念能力者は、検問を通っても何も引っかからなかった。そして機械を使わない麻薬の取引は、最初から遮断の内側にあります。

ジャイロがこの国を作った目的は、麻薬D²の製造と売買にあったとされている。自然回帰の理念は、それを覆い隠すための手段だ。その狙いが本当に働いたのなら、同じ仕組みが蟻の巣も隠したことになる。

外の世界が蟻に気づくのが遅れたことは、討伐隊の入り方にも表れています。最初にNGLへ送り込まれたのはネテロ・モラウ・ノヴの3人で、弟子を加えても6人にとどまった(→ 討伐隊はなぜ6人だったのか)。事態が外に知れた時点で、蟻はもう手のつけられない段階まで来ている。

蟻編がここまで膨らんだ理由は、女王の強さよりも国の側にある。俺はそう考えています。冨樫は蟻を強く描く前に、蟻が育つまで誰にも見つからない場所を用意した。機械という基準で外を締め出した国は、機械を使わない相手だけを通してしまう。

まとめ|NGLが蟻に与えたもの

  • NGL自治国は自然回帰を掲げた国で、実態は麻薬D²の生産地。機械の排除は外から見張られないための建前でもあった
  • 外から遮っていたのは情報・人・念の3つ。急ぎの知らせを送れず、旅行者も商人も来ず、念を使う住民も本編に出てこない
  • 遮断をすり抜けた例は3つ。海から入った女王、検問を正面から通ったハンター、外へ流れ続けた麻薬
  • 遮断の基準が機械だったので、機械を使わない相手には効かなかった
  • 蟻に与えられたのは強さではなく、誰にも見つからずに育つ時間だった

女王が流れ着いた先が普通の国だったなら、兵が数十体に増えた時点で軍が動いていたはずです。被害の桁を決めたのは、蟻の側ではなく国の側でした。

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