ゴンの母親は誰なのか。確かなことは2つだけです。ミトは血のつながった実母ではなく、ジンのいとこにあたる育ての母。そして実母は、今のところ一度も姿を見せていません。
検索すると「ミトさんが実の母親」「冨樫がもう作中に出していると言った」など、いろんな話が混ざって出てくる。でも原作で確定している事実は、意外なほど少ない。広まっている説を一つずつ取り上げ、どこまでが原作で、どこからが誤解や噂なのかを分けていきます。
この記事は単行本既刊の内容に触れます。
通説1:ミトさんがゴンの母親?
いちばん多い受け取られ方が、「ミトさん=ゴンのお母さん」というもの。赤ん坊のゴンを引き取り、くじら島でずっと育ててきました。母親だと思って読んでいた人も多いはずです。
ただ、原作をたどると血縁の関係ははっきりしています。くじら島には、ゴンを育てたばあちゃんもいた。このばあちゃんが「ジンはあたしの長男の息子で、ミトは次男の忘れ形見」と語っています。
つまりジンの父とミトの父は兄弟。ジンとミトはいとこ同士になります。ゴンから見ると、ミトは父ジンのいとこで、続柄でいえば叔従母(いとこおば)にあたる。母ではなく、親戚の中の育ての親です。
血のつながりだけ見れば、ミトはゴンの実母ではありません。ここは原作の描写と食い違う通説です。
それでも「ミトは母親ではない」と言い切って終わらせるのは違う気がします。ミトはジンが島を出る前に、裁判で正式にゴンの養育権を勝ち取っていました。血のつながらないゴンを、自分の子として育てる道を選んだ人物です。
ゴン自身も「俺の母親はミトさん」と口にしている。血はつながっていなくても、ゴンにとっての母はミトで決まっています。
整理すると、こうなります。生物学的な母親ではない、というのが原作の答え。けれど育ての母としては、まぎれもなくゴンの母親です。「ミト=母」という言葉は、血縁の話としては誤解ですが、関係の実感としては間違っていません。
通説2:旧アニメでは母親の正体が出ていた?
「昔のアニメでゴンの母親の設定を見た」という声もあります。これは半分本当で、原作の話ではない。
1999年版のアニメには、原作にない独自設定があった。そこではミトがゴンの叔母、つまり実母の妹という関係です。実母はすでに亡くなっていて、その妹のミトが育てている、という形になっていた。この設定だと、ジンは自分のいとこではなく、亡くなった妻の妹と暮らしていたことになる。原作の「ジンのいとこ」とは、血縁の組み立てそのものが違います。
ただ、これはあくまでアニメ版だけの設定。原作の漫画では、ミトとジンはいとこ同士で、実母についての具体的な設定は出てきていません。
アニメで見た記憶を原作と混同すると、「漫画でも母親が判明している」と勘違いしやすい。媒体ごとに設定が違う、という典型例です。原作だけを根拠にするなら、実母の正体はまだ白紙のままです。
通説3:冨樫が「母親はもう作中に登場している」と言った?
ファンの間で根強いのが、「冨樫が、ゴンの母親はすでに作中に出ていると発言した」という話です。これが本当なら、登場済みのキャラの中に母親がいることになる。考察が一気に盛り上がるネタです。
この発言の出どころをたどると、根拠がかなり怪しい。最初に広まったのは2013年ごろの個人ブログでした。そこでは「某雑誌のインタビュー」とだけ書かれ、雑誌名も掲載号も示されていない。
その後、まとめサイトやSNSで「冨樫が公言した」という形に育っていった。けれど、もとになったはずのインタビュー本体は、今のところ見つかっていない。
俺はこの説を、事実として扱うべきではないと考えています。出典がたどれず、公式に確認できない発言を「冨樫が言った」と前提にすると、そこから先の考察が根拠のないものになってしまう。
正しい理解はこうです。「母親はもう登場している」は、公式の発言として確認できない噂。可能性として楽しむのはいいが、原作の事実とは切り離して扱うのが安全です。
原作で確定しているのはどこまでか
ここまでの通説を取り除くと、原作で言い切れることは驚くほど絞られます。
- 父親はジン=フリークス
- 育ての母はミト。血縁ではジンのいとこ(ゴンの叔従母)
- 実母は一度も登場せず、名前も明かされていない
実は原作にも、母親の核心に近づいた場面はありました。ゴンは、ジンが残した音声メッセージを聞く機会を得る。その中でジンは、ゴンの母親に触れようとしていた。
ところがゴンは、その先を聞かずにメッセージを止めてしまう。母親がどんな人物だったかは、ゴン自身の手で語られないまま終わりました。情報があと一歩のところにあって、主人公がそれを受け取らなかった。
冨樫はなぜ母親を描かないのか
冨樫が母親を空白のままにしているのは、描き忘れではなく狙いがあると俺は見ています。根拠は、ゴンの行動そのもの。
ハンターハンターは、ゴンが父ジンを探す物語として始まった。ゴンの原動力は、会ったことのない父への興味です。母ではなく父に向かっている。
そしてゴンは、母親の正体を「知ろうとしない」。ジンのメッセージを途中で止めたのが、その象徴です。ゴンの中では母はミトで満たされていて、実母を探す動機がそもそもない。
主人公が求めていないものを、物語がわざわざ説明する必要はありません。母親を空白にしておくことで、「ゴンにとっての母はミト」というテーマが、よりはっきり伝わる。母の不在は、ゴンがどんな人物かを際立たせるための設計だと俺は考えています。
だからこの謎は、回収されないまま終わる可能性もある。ゴンが知りたがらない限り、物語が無理に明かす理由は薄いからです。
まとめ
ゴンの母親について、原作で確かなことと、噂にすぎないことは次のとおりです。
- ミトはゴンの実母ではなく、ジンのいとこにあたる育ての母(叔従母)。ただしゴン自身は「母親はミトさん」と断言している
- 「実母の妹がミト」は1999年版アニメの独自設定で、原作の設定ではない
- 「冨樫が母親はもう登場していると発言した」は、出典のたどれない噂。公式には確認できない
- 原作で確定しているのは、父はジン・実母は未登場という事実だけ
- ゴンは母の情報に触れる寸前まで行きながら、ジンの音声メッセージを自分で止めた
母親を空白のままにしているのは、ゴンが父を追う物語だから。そしてゴン自身が、実母を知ろうとしないから。この空白は、父ジンの存在の大きさと一対のものです。父の側の謎はジンの目的は“探すこと”そのもので掘り下げているので、あわせて読むと家族の構図が見えてくる。ゴンというキャラクターそのものに興味がわいたら、ゴンの念能力ジャジャン拳が単純すぎる理由もどうぞ。


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