ポックルは“蟻編の戦犯”なのか?キメラアント編を動かした役割

「あそこでポックルが喋らなければ」。キメラアント編の話になると、こういう言い方をよく見かけます。念の知識が敵に渡り、蟻が強くなった。だから戦犯だ、という読み方です。

俺の見方は逆で、ポックルは失敗した脇役ではない。念の知識を敵側へ渡す役として置かれた人物だと考えています。登場のさせ方をたどると、この役が彼にしか務まらないことが分かる。

19巻あたりまでのキメラアント編に触れます。読み進めている途中の方はご注意ください。

ポックルが姿を見せるのは2回だけ

彼が動いたのは、大きく2つの場面。

1回目はハンター試験。弓を持った青年として登場し、第4次試験では気配を消して標的に近づいた。矢に塗った薬で動けなくし、プレートを奪っている。仕留めずに確実に取る、堅実なやり方です。

念能力は「七色弓箭(レインボウ)」。オーラで作った矢を撃ち分けるもので、作中に出たのは赤と橙の2種だけ。系統は本編で明言されておらず、公式資料では放出系とされています。

2回目がキメラアント編。NGLの調査に入ったところをザザン隊に襲われ、神経毒で動けなくなり捕らえられた。奥歯に仕込んだ解毒剤で抜け出そうとしたものの、ネフェルピトーに見つかっています。そこで頭蓋骨を開かれ、脳に針を差し込まれ、念の知識を残らず引き出された。

本人が姿を見せるのはこの2回だけ。間の天空闘技場編では、ウイングが「練の習得にてこずっている」と名前だけ口にしています。

ポックルの2回の登場は、同じ結末のためにある

2つの場面を突き合わせると、関係がはっきりする。1回目でしているのは、読者に彼を覚えさせること。名前と顔、そして「有能で感じがいい」という印象が渡されます。自分の非を認めてクラピカに謝る場面もあり、好感を持ちやすい人物として描かれている。

2回目でしているのは、その人物から念の知識を敵に渡すこと。1回目の登場は、2回目を成立させるために置かれた。俺はそう読んでいます。

知らない誰かが拷問で喋っても、読者には何も起きない。試験で見た顔だから、脳をいじられる場面が重く届く。この重さが、そのまま知識の重さになります。あの人が全部話したのなら、蟻は本当に全部知ってしまったのだと伝わるからです。

なお、蟻が念に触れること自体はポックルより前に起きている。ラモットがゴンたちの念の一撃で精孔(しょうこう)を開かれた。そこから殴ることで、念は他の蟻へ広がっている。ポックルから渡ったのは、系統や纏・絶・練といった体系のほうです。

キメラアント編そのものの流れは → メルエムの進化 の側から見ると分かりやすいはずです。

念の知識を渡す役に必要な条件は3つ

同じ役を他の人物が担えたのか。条件を洗い出すと、かなり狭いことが分かります。

1つめは、念を体系的に説明できること。2つめは、生きたまま捕らえられること。3つめが、読者が名前を知っている人物であることです。

カイトは1つめを満たすものの、2つめで外れる。実際、彼はピトーと戦って敗れ、知識を渡していません。強い人物は捕まる前に死ぬか、戦って終わる。カイトがどう敗れたかは → カイトの念能力 で扱っています。

同じ隊にいたポンズは3つめを満たします。ハンター試験編にも登場していて、読者は名前を知っている。ただし捕らえられることすらなく、逃げる途中で撃たれて終わった。生きたまま捕らえるという条件は、そう簡単には満たされません。

強すぎれば戦って終わり、弱ければ捕らえる前に殺される。生きたまま捕らえられるのは、その間にいる人物だけ。

ポックルは3つとも満たしている。プロハンターとして念を修めていて、弓使いなので接近戦に弱く、毒で無力化できる。しかも読者は彼を知っています。

ポックルは戦犯なのか|責任を負わせられない渡し方

ここで根拠になるのが、ネテロの評価です。最終試験のトーナメント表の組み方からは、ポックルがゴンとハンゾーに次ぐ2番手だと読み取れます。同じ位置にいるのはクラピカとヒソカ。無能ではない。

それでも神経毒で動きを止められ、頭を開かれて全部話してしまう。もし油断していた新人なら、話は「気を抜いたから負けた」で片づく。有能な人物が同じ目に遭うからこそ、蟻という相手の異常さが伝わります。

さらに、知識を渡したのは彼の意思ではない。脳に直接触れられて引き出されている。裏切りでも失言でもありません。

責任を負わせられない渡し方になっている。冨樫はここを、本人の落ち度にならないよう作ったのだと考えています。戦犯という言い方は、ポックルの側に選択があったことを前提にしている。作中にあるのは、選択の余地なく引き出された知識だけです。

蟻がどう念を身につけていったのかは → メルエムの念系統 で扱っています。

知識が渡ったからキメラアント編は成立する

仮に、ポックルが何も話さずに死んでいたらどうなるか。蟻は念を体系として使いこなせないまま、数を増やすだけの相手になる。殴って伝えるやり方では、系統や応用の知識までは渡らなかったはずです。

人間側が総力戦を強いられる後半の展開も、まるで別物になっていたでしょう。あの尋問がなければ、キメラアント編は途中で形を変えていた。

捕らえられた人間に対して、ピトーがまずしたのは知識を取ることだった。この点も見逃せない。腕力で押すのではなく、相手の仕組みを先に知りにいく。この順番については → ネフェルピトーの念能力 でも触れています。

まとめ

  • ポックルが姿を見せるのはハンター試験編とキメラアント編の2回だけ
  • 1回目で読者に人物を覚えさせ、2回目でその人物から念の知識が敵へ渡る
  • 念を説明でき、生きたまま捕らえられ、読者が知っている。3つを満たす人物は他にいない
  • 渡ったのは念そのものではなく、系統や纏・絶・練といった体系のほう
  • 知識は本人の意思で渡されていないので、落ち度として責める材料は作中にない

念能力の六系統 を知っておくと、念の基本を敵に教えることの重さが実感しやすくなります。

ハンター試験に受かった同期がその後どこへ向かったのかは → ハンター試験の全体像 で整理しています。

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