終わったのは群れのほうで、個体はそれなりに残っている。キメラアント編の結末は、そう読むほうが原作に近い。
編が閉じたことと、蟻がいなくなったことは別だ。東ゴルトーの外には、パリストンが回収した約5000体ぶんの戦力まで残されています。
キメラアントのその後をめぐる受け取り方を3つ取り上げ、原作の描写と照らし合わせます。
※キメラアント編と会長選挙編、暗黒大陸編の入口までの展開に触れます(単行本既刊分)。
キメラアントの生き残りはコルトだけではない
質問サイトには、いまも「生き残ったキメラアントは誰か」という質問が立ちます。そこに付く答えでは、挙がる名前が10体を超えることもある。誰が残ったのかが、そもそも把握されていないわけだ。
原作で確かめると、名前のある個体が複数残っています。
| 個体 | 王の死後にどうなったか |
|---|---|
| ウェルフィン | 生き延び、のちに王の最期をめぐる場面に立ち会う |
| イカルゴ | キルアと組んで戦い、生還する |
| メレオロン | 討伐隊側について生き残る |
| コルト | 女王が遺した子を育てる役目を選ぶ |
倒されたのは、王と護衛軍を中心とした群れの中枢だ。群れの外側にいた個体まで一掃されたわけではありません。
イカルゴはキメラアント編の途中から、はっきり人間側で戦った個体だ。メレオロンも討伐隊として王宮へ突入し、中ではナックルらと組んで戦っています(→ メレオロンの神の不在証明は“消えるだけ”)。
コルトは女王の最後の子を前に、この子は自分が守ると決めた。その子が誰だったのかはカイトの転生は同じ人物なのかで扱っています。
ウェルフィンだけは少し違う。人間側についたのではなく、生き延びるために動き続けた個体だ。それでも王に仕える側には戻らなかった(→ ウェルフィンの念能力ミサイルマンは尋問の道具)。
生存者はコルトだけではない。群れの命令から外れた個体が、それぞれの判断で残っている。
産むのは女王だけ? 王と女王を失っても数は止まらない
質問サイトでは「子を産むのは女王だけなのか」という問いも立っています。産むのが女王だけなら、その女王が死んだ時点で数も止まる。そう読めるからだ。
当たっているのは前半だけ。止まったのは、増え方のうちの片方だけです。
キメラアントは、他の生物を食べてその特徴を子に取り込む摂食交配で強くなります。女王が兵を産み、やがて王を産む。その王が別の種の雌に次の女王を産ませる。次の王と女王が生まれる前に両方を失えば、種としては続きません。
ただし数そのものが止まるとは描かれていない。大手の設定資料では、増やすこと自体はできると整理されています。生まれるのは、摂食交配ができない個体だけ。
下級の個体にも生殖能力はある。王が不在のときは、自分から他の種の雌との間に子を作ろうとする、とも書かれています。
実際に動いた個体もいる。ザザンは女王の死後に自ら女王を名乗り、流星街で自分の群れを作りました。時期でいえば、女王が死んで数話しか経っていない。もっともザザンは幻影旅団のフェイタンに倒され、その群れは長く続きませんでした。
だから絶滅でも安泰でもない。摂食交配で強くなる増え方ができなくなっただけで、増えること自体は止まっていない。代わりに生まれてくるのは、王を目指せない個体のほうです。
蟻の問題は片付いていない|約5000体の行方
編が王の死で閉じたので、蟻の話もそこで終わったと受け取られやすい。ところがこの読み方が、原作からいちばん離れています。
会長選挙編のあと、パリストンが東ゴルトーからキメラアントの繭を回収していたと明かされます。数はおよそ5000。回収の時点では繭でした。すでに孵化しているとみられ、念を使える個体も含まれるとされました。
ジンはこれを、パリストン得意の二者択一だと読んでいます。協会が動かなければ次のハンター試験に送り込み、動けば世界へばらまく。協会がどう動いても損をしない形になっている(→ パリストンの念能力が描かれない設計)。
大事なのは、約5000体が倒されたと描かれていない点だ。ジンは二択を見抜いており、パリストン自身も、その後は会長を辞任して協会を離れた。計画が実行された描写はないまま止まっている。
連載が再開したあとも、話の中心は王位継承戦。蟻や繭に触れた場面は、いまのところ出てきていません。放置されているのではなく、まだ触れられていないだけの状態が続いている。
つまり王の死は、蟻という問題の終わりではない。中枢を潰したことで一度止まっただけ。約5000体そのものは、別の人間が回収したまま残りました。
3つの受け取り方を比べて見えてくること
3つを比べると、ずれ方は同じだ。
どれも「編が終わった=対象が消えた」と読んでいる。実際に終わったのは王を頂点にした群れだけだ。そこから外れた個体も、外に出た約5000体も、消えたとは描かれていません。
原作と矛盾しない理解はこうなる。キメラアントは種として強くなる増え方を失い、群れとしても解体された。ただし個体は残り、増える動きも止まっていない。
王という一点を潰せば全部が止まる。討伐隊の作戦はその読みで立てられ、実際に王は倒れました。ところが同じ理屈で、王とつながっていなかったものはそのまま残る。この食い違いこそ、蟻の話がまだ閉じていない理由だと俺は見ています。
生まれた時点で群れの頂点だった王が何を持っていたのかは、メルエムはなぜ最強で生まれた?でも掘り下げました。
まとめ|キメラアントのその後
- 生き残りはコルトだけではない。ウェルフィン・イカルゴ・メレオロンも生存し、それぞれの判断で動いている
- 王と女王を失った時点で、摂食交配で強くなる増え方はできなくなった。ただし増えること自体は止まっていない
- 下級の個体にも生殖能力はあり、ザザンのように自ら女王を名乗った例もある。その群れは幻影旅団に潰された
- 蟻の問題が片付いたという読み方が、原作からいちばん離れている。パリストンが回収した約5000体は、行方が描かれていない
- 終わったのは群れであって、名前のある個体も約5000体も別々の場所に残ったままだ
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