ハンターハンターの伏線回収が後出しに見えない|答えは先に出ている

伏線を回収する漫画は多い。ただ、回収された瞬間に「そんな設定あったの」と白ける作品もあります。ハンターハンターでそれが起きにくいのは、冨樫が伏線を隠していないからだ。

回収された伏線を、置かれ方で分けると4通りになる。どれも置いた時点で読者に見えている形をしています。そのうえで、4つのどれにも入らない例が2つある。そこまで見ると、驚きの正体が「後から出てきた新しい設定」ではないと分かってきます。

※ヨークシン編・グリードアイランド編・キメラアント編・会長選挙編の展開に触れます(単行本既刊分)。

回収された伏線は、置き方で4通りに分かれる

分ける基準は、置かれた時点で読者にどう見えていたかだ。

置き方 置いたとき読者に見えていたもの
ルールとして説明する 世界の仕組みの説明 死後に強まる念
予言の言葉として渡す 当たるか分からない占い 天使の自動筆記の詩
主人公の目的にする ゴンが追いかけているもの ジンを探すこと
念のルールとして示す 能力に共通する決まり 制約と誓約

4通りに割れるのは、基準を1つしか使っていないからだ。読者に見える形は、説明・言葉・行動の動機・能力の決まりのどれかになる。作中で一度も言葉にならないまま背景に紛れている、という形はここには入りません。

ルールと予言|先に言葉で示すタイプ

前の2つは、誰かが口に出して説明している。

死後に強まる念は、ヨークシン編で語られるルールだ。強い恨みや未練を残して死ぬと、その念はかえって強く残る。旅団側はこれを、クラピカに手を出せない理由として口にしていました。

回収されるのはキメラアント編。ゴンに頭を潰されたネフェルピトーの体が、意思のないまま立ち上がってゴンの右腕を引き裂く。ルールを知っている読者には、起きたことの意味がその場で分かります。仕組みそのものは死後の念はなぜ消えない?で掘り下げました。

天使の自動筆記(ラブリーゴーストライター)の詩も同じ形だ。幻影旅団のために書かれた詩には、避けるための助言まで入っている。ネオンがクロロを占った詩には「向かうなら東がいい」という道案内がありました。

読んだ時点では、当たるかどうか分からない占いにすぎない。それが後になって、除念師を探す旅団側の動きと重なって見えてきます。詩の的中率そのものは天使の自動筆記は的中率100%?で検証しました。

読者はどちらも答えを先に受け取っている。伏せられていたのは、その答えが誰に効くのかという部分でした。

目的と念のルール|物語を動かしながら効かせるタイプ

残りの2つは、説明で終わらず物語の中で働き続ける。

ジンを探すことは、ゴンの目的そのものだ。1巻から動機として置かれ、ハンター試験を受ける理由になった。天空闘技場もグリードアイランドも、進む先を決めたのはジン探しです。伏線として置かれたまま止まってはいない。

回収は会長選挙編の終わり、世界樹の上での再会だ。しかもここでジンが語るのは、再会そのものより世界の外側の話でした。目的が果たされた場所が、そのまま次の話の始まりになっている。ジンが何を追っているのかはジン=フリークスの目的は何なのかで扱いました。

制約と誓約も同じ働き方をする。念の強さは、自分に課した縛りと引き換えに上がる。ヨークシン編でクラピカの師匠イズナビが語り、クラピカの鎖でそのまま示されました。グリードアイランド編のゲンスルーの爆弾でも、同じ考え方が使われています。

説明されて終わりではなく、編をまたいで何度も使われた決まりだ。読者は何度も目にしているので、あらためて覚え直す必要がありません(→ 制約と誓約は「念の交換レート」)。

カイトの転生は、4つのどれにも当てはまらない

4つの置き方に収まらない例が、まずカイトの転生だ。

ピトーに首を落とされたカイトが、キメラアントの赤毛の少女として戻ってくる。作中で最も驚かれた展開のひとつです。ところが4つの置き方に当てはめようとすると、どれにも入らない。

転生を予告する言葉が、判明の直前まで置かれていないからだ。ルールとして説明されたわけでも、予言されたわけでもない。目的として働いてもいなければ、能力の決まりとして示されてもいません。

かわりに置かれていたのは、カイト個人とは関係のない2つの設定だ。キメラアントには、精神力の強い者ほど前世の記憶が残るという説明がある。とりわけ念能力者はその傾向が強いとされている。そして死んだ女王の胎内には、最後の子が残されていました。

読者が持っていた材料はこの2つだけ。カイトの自我がその子に宿った理由そのものは、はっきり説明されていない。ジンが「多分そーいうことだ」と口にするだけです。予告なしに、すでにあった設定の隣から出てきた展開だ。

驚きの中身は、隠されていた情報が出たことではない。知っていた設定が、そこで繋がるとは思っていなかった。そこに驚いたのだと俺は考えています。人間カイトとの地続き具合はカイトの転生は同じ人物なのかで比べました。

ゴンさんは、示されていなかった上限を実際に示した

もうひとつの例外は、ゴンの変身だ。制約と誓約という決まりの回収に見えるが、細かく追うと回収と呼びきれない部分が残ります。

制約と誓約のルールは、差し出すほど強くなるとしか言っていない。どこまで差し出せるのか、上限は作中で明示されていない。

ゴンがやったのは、その上限を実際に示すことだった。念能力者としてのこの先ごと引き換えにして、大人の姿になった。事前に用意された答えを取りに行ったのではなく、決まっていなかったところを自分で決めています。

だからゴンさんは、予告された答え合わせではない。ルールがどこまで通用するのかを、やって見せた場面だ。同じ決まりから生まれていても、カイトの転生とは向きが違う。あちらは設定の組み合わせで、こちらは設定の限界の更新にあたります。

冨樫の伏線が後出しに見えないのは、隠していないから

4つの置き方も、2つの例外も、1つの点で共通している。

置かれた時点で、情報が読者の側にある。ルールは説明され、予言は作中に書かれ、目的は毎回語られ、決まりは何度も使われていた。例外の2つでさえ、材料になった設定は先に出ています。

読者に足りないのは情報ではなく、それがどこで効くのかという1点だけだ。だから回収の場面で受け取るのは、新しい事実ではありません。すでに持っていた事実の意味が変わる感覚です。

後出しだと感じるのは、回収の瞬間に初めて聞く設定が出てきたときだと俺は見ている。冨樫が選んでいるのは、隠して驚かせるやり方ではない。答えを先に置いたうえで、効く場所だけを伏せる形です。

まだ答えの出ていない謎の側は、ハンターハンターの未回収伏線まとめで仕分けています。

まとめ|回収された伏線の置き方

  • 回収された伏線は4通り。ルールとして説明する/予言の言葉として渡す/主人公の目的にする/念のルールとして示す
  • 死後に強まる念はヨークシン編で説明され、キメラアント編でピトーの体が動く場面として回収された
  • ジンを探すことと制約と誓約は、置かれたまま止まらず、物語を動かし続けながら回収へつながった
  • カイトの転生は4つのどれにも入らない。予告する言葉は判明の直前まで置かれず、なぜ自我が宿ったのかも確定した説明はない
  • ゴンさんも回収と呼びきれない。制約と誓約の上限は作中で明示されていない。決まっていなかったところを実際に示した場面だった

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