決まった手順で人を選ぶ制度が、作中には大きく3つあります。ハンター試験、ハンター協会の会長選挙、カキンの王位継承戦。
どれも手順どおりには進んでいません。そして3つとも、用意した側の望みとは違う終わり方をしている。
同じ基準で比べると、割れるのは1か所だけでした。手順から外れる者が出たとき、決めた側がどう動いたか。塞いだのが2つ、塞がずに残したのが1つです。
※ハンター試験編・会長選挙編・王位継承戦編に触れます。単行本39巻までの範囲で書いています。
3つの制度を比べる基準
比べるのは次の3点。制度そのものの中身は、それぞれの記事に譲ります。
| 基準 | ハンター試験 | 会長選挙 | 王位継承戦 |
|---|---|---|---|
| ルールを決めたのは誰か | 会長と各試験官 | ネテロの遺言をもとに十二支んが決めた | 代々の慣習を今回のやり方で始めた国王ホイコーロ |
| 手順から外れたのは誰か | 決めた側(試験官) | 参加者(手順の中で引き延ばした) | 参加者と、その周りに付いた者 |
| 外れたとき、決めた側はどうしたか | その場でやり直させた | 手順を動かさず結果を受け入れた | 外れる余地を勝負に含めた |
1行目は3つとも似ています。上に決める人がいて、下に手順で選ばれる人がいる。
2行目で早くも割れる。ハンター試験だけ、外れたのが受験者ではなく決めた側でした。
手順から外れたとき、試験と選挙は逆に動いた
二次試験は、試験官のメンチが受験者全員を不合格にしたところで止まっている。寿司を作らせる課題で、味まで採点した末の判定でした。
会長のネテロは、合否を決め直してはいない。試験官をメンチのまま続けさせ、やり直しを指示しただけだ。課題をゆで卵に切り替え、クモワシの巣から取ってくる内容にしたのもメンチ本人です。(試験官の裁量の広さは → ハンター試験の試験官に基準はない)
手順は守られなかった。それでも、この期は7人が合格しています。あの判定のままなら、合格者はゼロだった。
選挙のほうは逆だった。当選には投票率95%以上と過半数の2つが要ります。条件が満たされないまま、投票は9回続いた(回ごとの数字は → 会長選挙が9回続いた理由)。
パリストンがやったのは、この2つの条件を承知のうえで引き延ばすこと。手順の違反はどこにもない。それでもチードルら十二支んの多くは、この進み方を望んでいませんでした。
それでも誰も手順を変えず、9回ぶんを最後まで続けた。そして当選したパリストンは、就任した直後に自ら辞めた。あとを継いだのはチードルです。
試験は手順を捨てて目的を取り、選挙は手順を守って目的を落としている。2つは同じ場面で正反対に動きました。
王位継承戦だけ、抜け道が塞がれていない
3つ目は動き方が違う。塞ぐか守るかの前に、外れることが勝負の中に入っています。
規定を合わせて読むと、王子本人が勝ちに動く手段はほとんど残りません。自分から仕掛ければ、王族殺しとして極刑になる。実際に戦うのは護衛や私設兵だ。(規定の中身は → 王位継承戦で王子は自分では戦えない)
普通ならここが制度の穴になる。ところが国王ホイコーロは、生き残りの基準をどう解釈するかも継承戦の一部だと述べている。穴の使い方まで含めて勝負だと、決めた側が先に言っている。
だから継承戦では、抜け道を使っても手順から外れたことになりません。試験のように上から止める人もいなければ、選挙のように守るべき手順の重みもない。
塞がれていない制度が、どこまでも緩いわけではない。カチョウとフウゲツは勝ちを目指さず、船から逃げるほうを選びました(→ 2人セゾンと秘密の扉)。逃げることを禁じる条文は出てこない。それでも船の外へ出ようとしたカチョウは襲われ、命を落としています。
条文がないのに、罰のようなものだけが働いた。書かれていない部分が結果を左右するのは、書かないと決めた制度の特徴です。
3つの制度で差が出たのはどこか
決めた側の動き方は、次の3通りに分かれる。
- ハンター試験: 想定から外れたら、決めた側が自分でやり直させる
- 会長選挙: 手順は動かさない。望まない結果でも受け入れる
- 王位継承戦: 外れる余地を残したまま、解釈も勝負に含める
この差は制度が何を選ぼうとしているかから来ていると俺は見ています。
ハンター試験が選ぶのは、これから伸びる人間だ。途中で課題が変わっても目的は損なわれません。むしろ手順を守って全員を落とすほうが、選ぶという目的から遠ざかる。
会長選挙が選ぶのは、協会全体が納得する代表です。ここで手順を曲げれば、選ばれた人物の正しさがそのまま崩れる。手順そのものが結果の値打ちを支えている。
継承戦が選ぶのは、王として残る1人だけ。国王が見ているのは勝ち方ではなく、生き残ったという結果のほうだと読めます。手段を問わないなら、抜け道を塞ぐ理由もない。
選ぶ対象が違うから、手順を守るべき度合いまで違っている。同じような制度に見えて、手順の重さは3つとも別でした。
作中の制度がどれも思いどおりに動かないのは、そこで人が予想外に動くからでもある(→ ハンターハンターの主人公交代はヨークシン編で起きていた)。制度の中で正しく勝つ話は、この作品にはあまり出てきません。
まとめ|3つの制度を比べて分かること
- ハンター試験・会長選挙・王位継承戦は、どれも決まった手順で人を選ぶ制度。3つとも作った側の望みどおりには終わっていない
- ハンター試験では、外れたのが決めた側だった。試験官が全員を不合格にし、会長がやり直しを指示している
- 会長選挙では手順そのものを破った者がいない。それでも当選したパリストンは、就任直後に自ら辞めた
- 王位継承戦では、生き残りの基準の解釈も継承戦の一部だと国王が述べている。抜け道を条文で塞いでいない
- 差が出たのは「外れたとき決めた側がどう動いたか」の1点。何を選ぶ制度かで、手順の重さが変わっている
3つを別々に読むと、どれも思いどおりにいかなかった話に見えます。同じ基準で比べると、うまくいかない場所が制度ごとに違うと分かる。
手順を守るほど目的から遠ざかる制度もあれば、手順を守らなければ結果の値打ちが消える制度もある。冨樫はその両方を同じ作品に置いたうえで、3つ目には手順の外側を最初から残しました。
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