針を抜いてキルアは変わった。そう語られることが多い。ただ、抜けたあとのキルアも、勝ち目がないと見た相手からはやはり引きます。
引くこと自体は針の産物ではありません。針が握っていたのは、引くかどうかを決める権利のほうだった。針の前後を同じ基準で見ていきます。
※キメラアント編と会長選挙編の展開に触れます(単行本既刊分)。
イルミの針がキルアに入れていた命令
比べる前に、針そのものを確認しておきたい。
イルミはキルアの脳に針を1本埋め込んでいた。命令の中身は、勝ち目がないと判断した相手からはすぐ逃げろというもの。洗脳と呼ばれることも多い仕掛けです。
外れるのはキメラアント編。キメラアントの潜む森で、キルアは兵隊長ラモットに一方的に攻められます。そこで、逃げようとする自分の思考が自分のものではないと気づいた。そして自分の頭に手を突っ込み、針を引き抜いた。
抜いた直後、キルアはラモットを瞬殺している。逃げる相手ではなかった、と見立てが変わったわけです。
キルアが針の前後で変わった点を、3つの基準で比べる
比べる基準は、この3つ。
| 基準 | 針が刺さっていた時期 | 針が抜けたあと |
|---|---|---|
| 勝ち目のない相手を前にしたとき | 引く | 引く |
| 引くと決めたのは誰か | イルミの言葉に上書きされる | 自分の見立て |
| 引いたあとどこへ行くか | その場から消える | 戦いの中に残る |
上の1つには差がない。差が出たのは下の2つです。
キルアが針を抜いても、引く判断そのものは消えていない
抜いたあとのキルアも、勝ち目のない戦いには居座りません。
王宮でユピーと当たったとき、キルアは落雷(ナルカミ)でナックルを救います。電気で硬直したユピーを、神速(カンムル)で攻め立てた。押していたのはキルアのほう。それでも電気を使い切ると深追いせず、その場を離れる。
ピトーと向き合った場面でも、キルアは戦いに加わっていません。ゴンには同行しながら、手を出さずに終わった。ピトーの能力がどう組まれているかは ネフェルピトーの念能力に”攻撃技”は一つもない で扱っています。
引く判断そのものは、針が入れたものではない。暗殺者として育った人間の見立てが、もとからそこにあったと考えられます。ユピーの手強さは ユピーの念能力は戦いながら進化する で詳しく書いています。
針の前後で割れたのは、決める人と、そのあとの行き先
差が出た2つを見ていく。
ハンター試験のキルアは、まずポックル戦で自分から降参しました。ここはイルミが出てくる前で、キルアの判断だった。
ところが次の試合では兄と当たります。正体を明かしたイルミの言葉に押され、キルアは降参した。そのあとボドロを刺し殺し、反則で失格になる。
失格のあと、キルアはククルーマウンテンへ帰ります。自分からは戻ってこない。連れ出したのはゴンたちのほうでした。試験の性格そのものは ハンター試験は強さを測る試験? で検証しています。
抜けたあとは行き先が違います。ユピーから離れたキルアは、王宮の外へ消えたりしない。充電のための一時退避です。
そのあとパームと戦い、電光石火でゴンの戦場まで駆けつけた。ピトーの死後の念からゴンを庇ったのもキルアでした。
会長選挙編ではもっとはっきりします。動けなくなったゴンのために、キルアは兄イルミにも引かずに向き合う。そしてアルカを連れ出した。ナニカの力に何が要るのかは ナニカ(アルカ)のおねだりのルール で整理しました。
引いたあとの行き先が、逃げ場から役目へ移っている。俺はここが最も大きな差だと考えています。
針が奪っていたのは勇気ではなく、決める権利
2つの差から言えることがある。
針は臆病さを植え付ける仕組みではなかった。植え付けたのなら、抜いたあとのキルアは無謀な戦い方へ変わっているはずです。実際には慎重なままで、見立ての精度はむしろ上がっている。
握られていたのは、引くか残るかを自分で決める権利のほうです。だから抜けたあとも撤退は消えない。むしろ撤退が、自分の作戦の一部に変わった。
イルミの側から見ると、この設計は効率がいい。弟を殺さず、戦力としても損なわず、決定権だけを取る。針1本で足りる。弟を死なせないための措置だった、という読み方もできます。ただ、イルミ本人が針を刺した理由を語る場面は確認できません。
ゴンとキルアの組み合わせがどう働いてきたかは ゴンとキルアの念能力はなぜ噛み合う? で比べています。
まとめ|キルアとイルミの針で変わったこと
- 針が入れていた命令は、勝ち目がないと判断した相手からはすぐ逃げろという一点
- 抜けたあともキルアは勝ち目のない相手から引いており、引く判断そのものは残っている
- 差が出たのは、引くと決めたのが誰かと、引いたあとどこへ行くかの2つ
- 針が刺さっていた時期の撤退は戦いの外へ消えるもの。抜けたあとの撤退は戦線に残るための移動になった
- 針が握っていたのは勇気ではなく、引くか残るかを自分で決める権利だった
ゴンと離れたあとのキルアがどこにいるのかは ゴンとキルアの再登場はNo.414 で追いかけています。
キルアを育てた家がどう設計されているかは ゾルディック家の念能力まとめ にまとめました。

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