念での移動は何を動かしているのか|体・乗り物・距離と、外れる2人

ゼノは龍を作って空を飛び、キルアは電気で自分の体を速くする。フウゲツは扉で離れた場所へ移る。

どれも近づくための念です。動いているものが1つずつ違う。体・乗り物・距離の3つに分かれます。

そして、この3つに収まらない使い手が2人いる。ノヴとメレオロンだ。

※キメラアント編と王位継承戦編の展開に触れます。

何を動かして近づくかで、念の移動は3つに分かれる

作中にこの区分があるわけではない。移動に念が使われた場面を集めて整理すると、こうなります。

動かしているもの 代表的な使い手 起きること
自分の体 キルアの神速(カンムル) 反応と動きが上がる
乗り物や足場 ゼノの龍頭戯画(ドラゴンヘッド) 自分と他人を運べる
距離そのもの フウゲツの秘密の扉(マジカルワーム) 離れた2点がつながる

速い順ではない。速さで並べると、あとで出てくる2人がどちらも説明できなくなります。

自分の体を速くする|キルアの神速

キルアの「神速(カンムル)」は、オーラを電気に変えて自分の末梢神経へ流し込む能力。反射そのものが上がり、考えるより先に体が動く。

上げているのは自分の体の性能だけで、他人を乗せて運ぶ技ではない。距離を縮めるのではなく、同じ距離を短い時間で走る形だ。

だから上限は本人の体が決めます。暗殺者として鍛えた体があって、その上に能力が乗っている。速さの使い道は、同じ脚の速さを持つヂートゥと比べるとはっきりする(→ ヂートゥの念能力は速さを活かせていない)。

乗り物を作る|ゼノの龍頭戯画は空を飛ぶ

念で空を飛べるのか。作中でいちばんはっきりした例が、ゼノの技です。

「龍頭戯画(ドラゴンヘッド)」はオーラを龍の形に変える技。ゼノはこれに乗り、ネテロを伴って東ゴルトーの王宮の上空まで飛んでいます。

運んだ例はもう1つある。王宮から兵器実験場跡まで、王とネテロを届けた場面です。このときゼノ自身は乗っていません。決戦の場所を移すこと自体が、この技で成立している。

自分の体だけでなく、他人も運べる。ここが1つ目との差です。技そのものは暗殺の効率から作られていますが、移動の手段としても働いた(→ ゼノの念能力は”暗殺の効率”で読み解ける)。

距離そのものを消す|フウゲツの秘密の扉

3つ目になると、移動にかかる時間がほとんど問題にならない。

フウゲツの守護霊獣「秘密の扉(マジカルワーム)」は、離れた2点を扉でつなぐ力です。姉のカチョウが生きているあいだは、往路をフウゲツが、復路をカチョウが受け持つ形で働いていました。

救命艇で船を離れようとしたとき、カチョウはフウゲツをこの扉へ押し込みます。フウゲツは船内の自室へ戻った。カチョウ本人は戻ってきませんでした(→ 2人セゾンと秘密の扉)。

体も乗り物も動いていない。動いているのは、2点のあいだの距離のほうです。

ノヴの扉だけ、動かせる距離に上限がない

ノヴの「4次元マンション」も、距離を動かす側に入る。扉で自分の念空間へ人を出し入れし、空間の中を通れば壁の向こうへ出られる。

ただ、扱える距離の桁が違う。キメラアント討伐隊は、この扉で王宮の内側へ直接入り込みました。王宮の入口を通らずに、敵の本拠地の中へ人を送り込んでいる。

同じ枠の中で、ここだけ上限が見当たらない。それでも作戦は途中で止まりかけた。

王宮でシャウアプフの禍々しいオーラを間近で浴びたノヴが、心を折られたからです。ノヴは突入の戦力から外れ、以後は負傷者の回収など後方の支援に回っています。

止めたのは距離ではない。術者の状態のほうです。動かせる距離に上限がないのに、術者の側の上限が先に来た。

メレオロンは何も動かしていない

もう1人は、3つのどこにも入らない。体も乗り物も距離も動かさないからです。

メレオロンの「神の不在証明(パーフェクトプラン)」は、息を止めているあいだ感知をすり抜けて消える能力。音も気配も匂いも届かなくなる。速くならず、飛べず、距離も変わらない。

それでも近づける。見つからないので、そもそも止められない。しかも「神の不在証明」の発動中に触れている仲間へは、「神の共犯者」で同じ効果を渡せる。

近づく手段が、動かすことではなく見つからないことで用意されている。メレオロン自身、この能力で王へ一撃を届けるつもりでいました。実際の作戦ではナックルと組み、護衛軍を王から引き離す側に回っています(→ メレオロンの神の不在証明は”消えるだけ”)。

移動の能力を持たない人物が、敵の本拠地の中を止められずに動き回った。3つの分け方は、この動きを説明できません。

上限を決めているのは、動かすものではなく術者

ノヴは枠の内側で上限が消え、メレオロンは枠の外から近づいた。2人が示しているのは同じことです。どこまで届くかは、何を動かせるかでは決まっていない。

分類の3つに戻ると、同じ形が見えます。キルアの神速は本人の体が上限になる。ゼノの龍は本人がオーラを出しているあいだだけ形になり、目的地に着くと消えた。秘密の扉も、姉が生きているあいだは2人そろって往復になっていた。

どれも、上限を作っているのは能力の外側です。術者が何を抱えているかで、届く距離が変わる。この2人を見るかぎり、そう読めます。

念の応用技も同じ向きに作られている。凝や隠は、術者の側の状態を変える技で、能力の性能を上げる技ではありません(→ 念の応用技「凝・円・硬・流・隠」を整理)。上限が術者の側にあるのは、移動に限った話ではないのだろう。

まとめ|念での移動の3種類と、そこから外れる2人

  • 念での移動は「何を動かしているか」で3つに分かれる。自分の体(キルアの神速)/乗り物(ゼノの龍頭戯画)/距離そのもの(フウゲツの秘密の扉)
  • 念で空を飛ぶ例は2つ目にあたる。ゼノの龍は本人だけでなく、ネテロや王も運んでいる
  • ノヴの4次元マンションは動かせる距離に上限が見当たらない。それでも術者の心が折れた時点で、突入の戦力から外れた
  • メレオロンは体も乗り物も距離も動かさないまま、敵の本拠地の中を止められずに動いた
  • 届く範囲を決めているのは能力が何を動かせるかではなく、術者の側の条件だった

分類を作ってみると、その分類では説明できない2人のほうが目立ちます。上限が消えている側と、そもそも動いていない側。

念での移動は、動かすものの性能ではなく、術者に何が残っているかで止まる。そこを分けて描いているところが、念という設定のうまさだと思う。

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