念能力を奪う・借りる・与える|移したあと持ち主に何が残るか

ネオン=ノストラードは占いができなくなりました。クロロに天使の自動筆記を盗まれた、その一度きりで。

念能力が他人の手へ移る例は、作中に3通りあります。奪う・借りる・与える。この3つを同じ基準で比べると、失うものの大きさはまるで違うのに、能力が元の側から切り離された例が1つもない。

※ヨークシン編・キメラアント編・王位継承戦の展開に触れます。

念能力を奪う・借りる・与える3人の仕組み

比較するのは次の3人です。

  • クロロ|盗賊の極意(スキルハンター)。相手の発を実際に目で見る、念について質問して答えさせる、本の表紙の手形と相手の手のひらを合わせる。この3つを1時間以内に済ませて盗む
  • レオル|謝債発行機(レンタルポッド)。恩を売り、相手が同意すると能力を借りられる。具現化した発行機がレンタル券を出し、それを破ると使える。1回1時間の期限つき
  • モレナ|恋のエチュード(サイキンオセン)。特質系。自分の唾液が移った相手を、その場で念能力者に変える。奪う手順も借りる手続きもない

すでにかかっている念を第三者が外す除念は、ここでは扱いません。あれは移すのではなく外す話です(→ かかった念を解除する3つの方法)。

5つの基準で比較すると、一致した項目が1つだけある

見たいのは、能力が移ったあと、元の持ち主のところに何が残っているか。この観点で基準を5つ立てる。

基準 クロロ レオル モレナ
相手の協力 要る 要る 要らない
元の持ち主は使えなくなるか なくなる 発だけ止まる 使えたまま
元の持ち主へ返るか 返らない 1時間で返る 減っていない
念能力者の数 変わらない 変わらない 増える
元の持ち主とのつながり 切れない 切れない 切れない

上の4つは全員バラバラ。ところが最後の1つだけ、3人ともそろいました。

協力の求め方にも質の差がある。レオルは「これは貸しだ」と相手が同意することが条件そのもの。クロロのほうは同意までは要らず、質問に答え、手のひらを差し出すという行為が要る。

深く見たいのは、2つ目の「使えなくなるか」と、最後の「つながり」です。

念能力を奪われた側と、貸した側に残るもの

ネオンの場合、残ったものはありません。天使の自動筆記は彼女の生活そのもの。ノストラード組は、その占いで一代でのし上がった組織でした。

占い師としての立場も一緒に失っている。その後の彼女がどうなったかは原作に描かれていません。

レオルに貸した側はまるで違う。止まるのは発の1つだけ。纏も練も凝も、そのまま使えます。しかも1時間で返ってくる。

奪われた側が失うのは能力そのもの。貸した側が失うのは1時間ぶんの手札。同じ「使えなくなる」でも、失うものの大きさが違いすぎる。

面白いのは、この重さが発動条件の重さとおおむね対応していること。いちばん深く奪うクロロが、いちばん厳しい発動条件を課されている。3つの条件を1時間以内、しかも相手が質問に答えてくれなければ成立しない。

レオルはその中間。恩を売り、同意まで取りつける手間が要る。一方のモレナは唾液が移るだけで、手順らしい手順がない。ただし彼女は誰からも取り上げていません。

相手から減らす量が大きいほど、発動条件が重くなる。そう読めます。念能力の弱点が発動条件に集まる話とも重なる部分です(→ 念能力の弱点は発動条件に集まる)。

盗んでも借りても、持ち主の生死にぶら下がっている

ここからが最後の基準です。クロロとレオルには共通点がある。どちらも、元の持ち主が死ねば使えなくなります。

レオルの側ははっきりしている。借りた相手が死ぬとデータが消え、その能力はもう借りられない。

クロロの側も、持ち主が死ねば本からその能力が消えるとされています。暗黒大陸編で、シズクが天使の自動筆記での占いを提案した。クロロの答えは、本からその能力が消えていた、というものでした。

ネオンが死んだとまでは作中で言われていない。それでも、持ち主が死ねば本から能力が消える、という形で描かれています。

例外もある。死後に強まる念だった場合は、持ち主が死んでも本に残る。流星街の長老の番いの破壊者(サンアンドムーン)がそれです。

例外はあっても、大枠は動きません。盗んだ能力も借りた能力も、手元にあるのに他人の生死にぶら下がっている。

モレナが渡した先は、彼女の管理下に残る

では、誰からも奪わないモレナはどうなのか。

感染した相手は、その人自身の念能力者になります。モレナから借りているわけでもない。ここだけ切り離されているように見えます。

ところが、モレナ自身の説明は逆でした。彼女はこの仕組みをスマホのゲームアプリに例えていて、自分は「運営」の側だと語っている。発症者のレベルもポイントも居場所も把握し続け、アプリは消せません。

終わるのはゲームをクリアしたときか、運営が消えたときか、スマホが壊れたときだけ。どれも発症者の側から起こせるものではない。感染できる人数も、自分を含めて23人と決まっている。

与えた相手は独立した念能力者になったのではなく、運営に握られたプレイヤーになった。増やし方そのものの狙いはモレナの念能力“恋のエチュード”が念使いを増やす仕組みで掘り下げています。

念能力は完全には移らない

この3つの移し方に限れば、能力が本当にその人だけのものになる形はありません。

奪う形も借りる形も、能力の元をたどれば別の誰かの生死につながっている。クロロは強力な能力をいくつも抱えながら、そのうちのどれが明日消えるかを自分では決められない。持ち主が死ねば、気づかないうちに本から消えるだけです。

与える形も同じでした。誰からも減らしていないぶん軽く見えるのに、渡した先はまるごとモレナの手元に残っている。切れ方が違うだけで、切れてはいない。

これは冨樫が、念能力を持ち物ではなく人の一部として描いているからだと俺は考えています。物なら渡せば終わる。人の一部なら、切り離して持ち去っても根が残る。集めた数が多いほど、他人の生死に左右される範囲も広がっていきます。

まとめ|移し方の違いは、どうつながったままかの違い

  • 念能力が他人へ移る例は、奪う・借りる・与えるの3つに分かれる
  • 奪われた側は能力ごと失い、貸した側は発1つを1時間だけ手放す
  • 相手から減らす量が大きいほど、移すための発動条件が重くなる
  • 盗んだ能力も借りた能力も、元の持ち主が死ねば使えなくなる
  • 誰からも奪わないモレナの形も、発症者は「運営」の管理下に残ったまま

発をいくつ持てるのかは、集めた数よりも増やし方から見たほうが分かりやすい。

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