強化系は難しいことを考えなくていい。基礎さえ積めば強くなれる。よく見かける受け取りです。
原作に当てると、単純なのは完成した能力の形のほうだった。強化系の単純さは、入口ではなく出口にある。そして重いのは、そのあとに出てくる2つ目の受け取りです。
※天空闘技場編・ヨークシン編・グリードアイランド編に触れます。
強化系は基礎を極めれば強くなれる、という受け取りの出どころ
この読みには、原作にちゃんと出どころがあります。事典系のまとめや質問サイトでも、強化系の説明としてほぼ定型で出てくる言い方。
もとになっているのはウイングの言葉。強化系は纏と練を極めていけば、それだけで必殺技と呼べる威力になる。ゴンにそう教えていました。制約や誓約を積み上げなくても威力が出る、という趣旨です(→ 制約と誓約は”念の交換レート”)。
実際、強化系の使い手は仕掛け抜きで勝負する。ウボォーギンには超破壊拳(ビッグバンインパクト)という技名がある。ただし中身はオーラ量と体をぶつけるだけです。
具現化系のように、出す前に何を作るか決めきる必要もない(→ 具現化系の念能力は使う前に決まる)。ここまでは受け取りのとおり。
強化系の「極める」は、いちばん長い区間
食い違いが出るのは、「基礎を積めば」という部分です。
ウイングが言っているのは、纏と練を極めればという条件つきの話。極めるまでにどれだけかかるかには触れていない。そして作中の描写を見ると、そこがいちばん長い。
ビスケがゴンとキルアに課した修行は段階に分かれていた。最初はビノールトを相手にした実戦。次に岩石地帯からマサドラへまっすぐ掘り進ませて、周を自分で見つけさせる。
そこから硬と堅を積ませ、寸止めの組手を許す条件は堅を30分保つこと。系統別に発を作らせるのは、いちばん後でした。必殺技は最後に置かれている。応用技のほうも、地味な凝の精度が効いてきます(→ 念の応用技「凝・円・硬・流・隠」を整理)。
強化系には、地力以外に頼れる手段が少ない。具現化した物で戦況を作るのも、操作で相手を動かすのも、精度が落ちるぶん割に合わない。出せるのは、自分のオーラ量と体の質そのものです。
手数が少ないぶん、1つ1つの質で勝負することになる。簡単だから省けるのではなく、省けるものが無いから基礎だけが残る。「単純」は当たっていて、「だから楽」のほうは外れています。
強化系は習得できる幅が広いから、何を作っても形になる
もう一つの受け取りは、六性図の位置を根拠にしている。こちらのほうが厄介です。
六性図で示される習得率は、自分の系統が100%、隣が80%、その隣が60%、対極が40%とされます(→ 念能力の六系統とは?)。強化系の対極は特質系。表の上では40%ですが、特質系だけは修行で身につく系統から外れる。発の選択肢としては初めから消えます。
言い換えると、強化系が実際に選べる系統はどれも60%以上。特質系の使い手を別にすれば、この条件を満たすのは強化系だけです。だから、どんな発でも形になるという読みが出てくる。
数字そのものは合っています。崩れるのは、そこから先。
選べる幅が広いぶん、外せる幅も広い
原作の実例は天空闘技場のカストロ。
カストロが使ったのは、自分そっくりの分身を作り、思いどおりに動かす能力。具現化と操作の組み合わせです。ウイングの見立てではカストロは強化系で、本来なら体そのものを鍛えて押す型だった。
つまりカストロは、広い習得率をそのまま使っている。強化系でも具現化と操作が60%で届くから、あの分身は実際に作れてしまった。作れることと、割に合うことは別です。
ヒソカの言葉は「キミの敗因は容量(メモリ)のムダ使い」。分身に割いた容量のぶん、強化系として伸ばせたはずの部分が消えていました。
容量には限りがあります(→ 念の「メモリ(容量)」が強さを決める)。ほかの系統は、対極も実際に選べる系統。放出系の対極は具現化系、操作系の対極は変化系。そこが40%まで落ちるぶん、選択肢が自然に絞られる。
強化系だけ、その絞り込みから外れています。選べる幅が広いということは、外せる幅も広いということでした。
カストロは才能が足りなかったのではありません。届いてしまう範囲が広すぎた。
強化系に才能が要らないのではなく、隠す場所が無い
強化系が六性図で不利な位置にいるわけではありません。対極にあるのは特質系だけ。隣の変化系・放出系はよく伸びます。習得率で損をしている系統ではない。
差が出るのは、才能の出方のほうです。ウボォーギンを止めたのは、クラピカが具現化した鎖。緋の眼で特質系に変わる体質が、その鎖を底上げしている。
能力の設計しだいで、地力の差はある程度ひっくり返せる。俺はそう読んでいます。
強化系にはその余地が少ない。オーラ量と体の質が、そのまま結果になります。だから「才能が要らない」は違う。要らないのではなく、隠す場所が無い。
同じ強化系でも、ウボォーギン・ゴン・カストロで結果はまるで違いました。押し出せる量が違い、容量の使い方も違う。系統が同じでも、そろうものは何もない。
ゴンのジャジャン拳がグー・チー・パーの3つで収まっているのも、最初からの設計ではない。グーは強化系、チーは変化系、パーは放出系で、隣の系統まで使って組み立てたものです(→ ゴンの念能力ジャジャン拳が単純すぎる理由)。
まとめ|強化系の単純さは、たどり着いた先の形
- 「基礎を極めれば強くなれる」という受け取りには原作の出どころがある。ウイングがゴンに、纏と練を極めれば必殺技と呼べる威力になると教えている
- ただし極めるまでは長い。ビスケの修行では周・硬・堅を順に積ませ、組手の解禁条件は堅を30分維持できること。発づくりはいちばん後に置かれていた
- 「習得できる幅が広いから何を作っても形になる」は、そのまま得だという話にはならない。強化系が実際に選べる系統はどれも60%以上に届く
- カストロは具現化と操作を組み合わせた分身を実際に作れてしまい、容量のムダ使いと言われて敗れている。選べる幅が広いぶん、外せる幅も広い
- 強化系が六性図で不利なわけではない。違うのは才能の出方で、オーラ量と体の質がそのまま結果になる
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