ハンターハンターの絶は誰が決めるのか|入らされたら自力で解けない

ウボォーギンは力比べで負けたわけではありません。クラピカの鎖に捕まった瞬間、精孔を閉じられ、腕力だけの人間に戻された。このとき彼は絶だった。ただし自分で入ったものではない。

絶は「気配を消したいときに自分で使う技」として説明されがちです。ただ、勝敗を分けた場面をたどると、本人以外が絶を決めている例のほうが目につく。

※単行本既刊の内容に触れます。ヨークシン編とキメラアント編の展開を含みます。

絶はオーラの出口を閉じる技

絶は、体じゅうにある精孔(しょうこう)を閉じて、外へ漏れるオーラを止める技。気配が消え、疲労も回復しやすくなります。代わりに攻防力はゼロ。殴られれば生身で受けるしかない(→ 絶・纏・練・発はどう違う?)。

技そのものの中身はこれだけ。同じ攻防力ゼロでも、自分で選んだのか入らされたのかで、意味はまるで違います。

絶は入るときと出るときで、決める人が変わる

分かれ目は「誰が決めたか」。しかも決定権は、絶に入るときと出るときで別々にあります。作中の絶は、この2つで3つに分かれる。

区分 絶に入るのを決めるのは 絶から出るのを決めるのは 代表例
自分で入る絶 本人 本人 四大行の一つとして、纏の次に習う絶(ゴンとキルアがウイングに教わった念の基礎)
入らされる絶 相手 相手 束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)で拘束されたウボォーギン
落とされる絶 相手 決められた期限。作中では誰も途中で解いていない 天上不知唯我独損(ハコワレ)で破産させられたゴン

自分で入る絶は、攻めのための技です。見つからずに距離を詰める、消耗を抑えて次に備える。守りを捨てる損は、はっきりした見返りとセットで払われている。制約と誓約の考え方とよく似た形です(→ 制約と誓約は“念の交換レート”)。

入らされる絶には、その見返りがない。差し出すものだけがあって、得るものがゼロ。

クラピカの束縛する中指の鎖は、捕らえた相手を強制的に絶にする。ウボォーギンほどの腕力でも抜けられなかった。捕まった側に抜け出す手はなく、解くかどうかはクラピカの側にあります。

もう一つの押しつけ方は、さらに厳しい。ナックルの天上不知唯我独損は、殴った相手にオーラを貸し付ける。借金が膨らみきると、強制的に絶へ落とす。落ちたあとに解かれた場面は作中になく、ゴンはそのまま30日を過ごしています。

入らされた側は「オーラ量で押し負けた」のではない。構えを取ることそのものを許されていない。強さの比べ合いが始まる前に、勝負が終わっています。

この分け方に収まらない絶が2つある

この3つで、絶の場面はだいたい説明できます。ただし、基準がうまく効かない例が2つ残る。

ハコワレは、破産までの時間を食らった側が動かせる

ハコワレは相手が決める側に入る絶です。ただ、絶に落ちる前の段階はそれで片づきません。

貸し付けられたオーラには利息がつき、一定時間ごとに増えていく。この利息の仕組みはナックルの側にあります。

ところが利息が加算されるのは、ナックルから100m以内にいる間だけ。離れれば加算は止まり、近づけばまた動き出す。さらに念でナックルを殴り返せば、その分は返済として借金から引かれます。

逃げれば止まり、当てれば減る。破産までの時間を延ばす手は、食らった側に残されている。

つまりこの絶は、押しつけた側だけで完結していません。ナックルの一撃で「いずれ絶になる」ことは決まる。それでも、いつ絶になるかは二人がかりで決め直されている。決定権が1人に定まらない、この分け方の唯一の例です。

ゴンが受けたのがまさにこれ。ジャジャン拳は何度も当たっていて、返済そのものは起きている。それでも利息に追いつかず、オーラが尽きて破産しました。

離れて時間を稼ぐという手だけは、最後まで使っていません。ゴンらしい負け方だと俺は思う。

念が使えなくなったゴンは、決めた人が見当たらない

キメラアント編の後、ゴンは念が使えなくなりました。単行本34巻の人物紹介には「父・ジンを追いハンターになる。キメラ=アントとの戦いの後遺症でオーラが視えない。帰省中。」とあります。

外から見れば、念を使っていないという一点で絶と区別がつかない。

ただ、書かれているのは「オーラが視えない」ということだけ。精孔を閉じたとも、誰かに閉じられたとも描かれていません。絶なら、閉じている人がいて、開ければ戻る。ゴンについては、その閉じる・開くの話が出てこない。

切り替えられる状態として描かれていないので、解く・解かれるという話にもならない。入るのを決めた人も、出るのを決める人も見当たらない。分け方が扱えるのは「誰かが決めたもの」までで、ゴンの状態はその手前にあります。

絶は破れるのか

入らされた絶を、自力で破った者は作中にいません。

ウボォーギンは腕力だけで鎖をちぎろうとして失敗した。念を封じられている以上、鎖に勝つには生身の腕力しか使えない。ハコワレのほうも、作中では破産したら期限まで解けていない。

残るのは第三者の手です。念をかけられた側でなく、別の念能力者が外す除念というやり方はあります(→ かかった念を解除する3つの方法)。ただ、これも捕まった本人にできることではない。

自分でどうにかできるのは、絶にされる前の一点だけ。チェーンジェイルは捕らえなければ効かず、ハコワレは殴らなければ始まらない。どちらも、相手に触れる段階を自力で突破する必要があります。効果が極端なぶん、そこへ至る条件が重い(→ 念能力の弱点は発動条件に集まる)。

クラピカも同じ重さを払っています。旅団以外に使えば自分が死ぬ、という誓約で。絶を押しつける力は、そのまま手に入るものではありません。

まとめ|絶は誰が決めるかで別物になる

  • 絶は精孔を閉じてオーラを止める技で、攻防力はゼロになる
  • 入るとき・出るときを本人が握っていれば技だが、相手が握れば戻れない状態になる
  • ハコワレだけは、破産までの時間を食らった側が延ばせるので分け方からはみ出す
  • 念が使えなくなったゴンの状態は、決めた人が見当たらないため絶とは別物
  • 入らされた絶を自力で破った例はなく、触れられる前に止めるしかない

絶をどう使うかより、絶を誰が決めるか。そこを見ると、同じ技が攻めの手段にも、勝負を終わらせる決め手にも変わります。似た話は、キルアが自分で決められなかった場面にもありました(→ キルアはイルミの針が抜けても逃げる)。

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