カミーラの念能力|百万回生きた猫は本人が殺されるまで働かない

ベンジャミンの私設兵ムッセが、絶に入っていたカミーラを撃った。カミーラはあっさり死ぬ。次に消えたのは、撃ったムッセのほうでした。

これがカミーラの念能力「百万回生きた猫(ネコノナマエ)」。本人が殺されるまで、何も起きない能力です。

第1王子ベンジャミンの「星を継ぐもの」、第4王子ツェリードニヒの「刹那の10秒」。この2つと並べて、3つの基準で比べました。誰の犠牲で動くか。本人が何もしなくても働くか。使ったあとに何が残るか。差がはっきり出たのは1つ目です。

※王位継承戦編の展開に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

カミーラの念能力は守護霊獣とは別物

カミーラ=ホイコーロが持つ力は2つあります。壺中卵の儀で憑いた守護霊獣と、本人の念能力。

ややこしいのは、本人の能力のほうにも念獣が出てくることです。巨大な黒い猫。これが「百万回生きた猫(ネコノナマエ)」で、守護霊獣とは別物だ。

ベンジャミンもツェリードニヒも、守護霊獣とは別に自分の念能力を持っています。だから3人は、本人の念能力どうしで比べられる。

カミーラは第2王子。母が第2王妃ドゥアズルなので、付く監視兵は1人だけです。監視の少ない側にいる。

百万回生きた猫は、殺されて初めて動く

能力の中身はこうです。カミーラが殺されると発動する。黒い猫の念獣が現れ、殺した相手の命を奪う。その命でカミーラが生き返る。

冒頭のムッセの場面がそのまま実例だ。撃った側が死体も残さず消え、撃たれた側が戻ってきた。このとき手に入ったムッセの能力は、主のベンジャミンへ渡っています(→ ベンジャミンの念能力は補充が効かない)。

弱点もはっきりしています。発動の条件は完全な死。拘束や半殺しで止められているかぎり動かない。ファンの間でもここが弱点として挙げられている。

ベンジャミンとツェリードニヒは何を条件にしているか

ベンジャミンの「星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)」は、忠誠を誓った私設兵が死んだときに働きます。その部下の念能力をそのまま引き継げる。継承が起きると、手のひらの星のマークにオーラが灯る。

ツェリードニヒの「刹那の10秒」は特質系。絶の状態で10秒先の未来を見て、そのあと自分の行動を変えられます。未来のほうを書き換える形だ(→ ツェリードニヒの念能力が“反則級”な理由)。

方向はまるで違う。片方は後ろに積み上げ、もう片方は前を先に見る。それでも同じ基準に載せると重なる部分が出てきます。

犠牲・自動・残るものの3つで比較する

基準 カミーラ「百万回生きた猫」 ベンジャミン「星を継ぐもの」 ツェリードニヒ「刹那の10秒」
誰の犠牲で動くか 自分が殺されること 忠誠を誓った部下が死ぬこと 犠牲は要らない
本人の操作が要るか 要らない 要らない 絶に入る必要がある
使ったあとに何が残るか 自分の命が戻り、殺した相手が消える 能力が1つ増え、兵が1人減る 10秒先の情報だけ

2つ目と3つ目にも差はあります。ただ、そこは「自動か手動か」「増えるか減るか」の違いにとどまる。能力の種類が違えばこうなる、という範囲でしかない。

性質が大きく分かれたのは、1つ目でした。

犠牲を出しているのが、カミーラだけ自分

ベンジャミンとツェリードニヒは、自分の身に何が起きても条件に関わりません。ベンジャミンが強くなるのに要るのは部下の死。本人は生きたまま、能力だけが増えていく。ツェリードニヒにいたっては、誰も死ななくても働く。

カミーラだけが違う。発動の条件が、自分が殺されることに置かれている。

これは他の2人とは別の種類の作りだ。ベンジャミンは他人の死を条件にして伸びる。ツェリードニヒは死そのものが要らない。カミーラは自分の死を使う。

だから狙って使えません。相手が殺しにこなければ、いつまでも動かない。カミーラの側からできるのは、殺されるのを待つことだけ。

王子が座って待つ継承戦と、この発動条件

その待つしかない作りは、継承戦のルールとよく合っています。

継承戦は、王子が1人になるまで続く殺し合いです。しかも王族殺しには極刑という罰則があり、王子は表立って自分では殺しにくい(→ 王位継承戦で王子は自分では戦えない)。動くのは私設兵と念獣。王子本人は座って待つ形になる。

カミーラは、その待つ時間をそのまま能力にした。狙われる立場でいること自体が、発動条件を満たしにいく行動になります。

国王が認めたわけではありません。ただ、カミーラは脱落を生物学上の死だけに限るよう求めています(No.363)。その死の1点だけを、なかったことにできる能力を持っている。立場と発動条件がここまでそろった王子は、既刊の範囲で他に見当たりません。

序列でいえば、カミーラは真上のベンジャミンを狙える位置にいる。上位王妃の監視という仕組みは、下から上への攻撃を封じるために作られています。その仕組みを能力ひとつで越えにいく(→ 王位継承戦の14王子は母の序列で読む)。

冨樫が第2王子に渡したのは、動かずに済む力

3人を比べて残るのは、「なぜカミーラだけ自分の死を条件にしたのか」です。

俺は、王子という立場をそのまま能力にしたからだと考えています。王子は自分では動きにくい。護衛と念獣に守られて、船の中で待っている。その受け身の立場を強さに変えるなら、待っていること自体が条件になる形しかない。

ベンジャミンとツェリードニヒのほうが、継承戦では例外に見えてきます。ベンジャミンは国の軍で役職を持つ。ツェリードニヒは私設兵のテータに念を教わり、そこから常識外れの速さで伸びた。2人とも、与えられた立場の中だけで終わっていない側だ。

カミーラはそこから出ていません。与えられた立場のまま、ただいるだけで働く力を持っている。おとなしい王子なのではなく、待つことがそのまま攻撃になる。

まとめ|カミーラの念能力はどこが違ったのか

  • 「百万回生きた猫(ネコノナマエ)」は、カミーラが殺されると発動し、殺した相手の命を奪って本人を生き返らせる能力
  • 壺中卵の儀で憑いた守護霊獣とは別物で、こちらは本人が持つ力
  • 発動の条件は完全な死。拘束や半殺しで止められると動かない点が弱点として挙げられる
  • ベンジャミンは部下の死、ツェリードニヒは犠牲なしで働く。カミーラだけ条件が自分の側にある
  • 狙って使えないぶん、狙われる立場でいること自体が条件を満たす行動になる

3人を同じ基準で比べると、順位ではなく作りの違いが出てきます。ベンジャミンは他人の死で伸び、ツェリードニヒは誰の死も要らない。カミーラだけが、自分の死を使う。

継承戦で最後まで残るのは、いちばん強い王子とは限らない。カミーラの能力は、そこを最初から前提にして作られているように見えます。

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