ベンジャミンの念能力は、持ち主を強くするたびに自分の兵を削ります。忠誠を誓った私設兵が死ぬと、その念能力を引き継げる。使える能力が1つ増えるのは、いつも人が1人減ったときです。
しかも継承には資格があり、途中から人を足せない。本人の強さと陣営の厚みが、逆向きに動く。
14人の王子のうち、国の軍で役職を持っているのはベンジャミンだけ。その立場に、なぜ冨樫はこの能力を組み合わせたのか。
ネタバレ注意。連載最新話までの王位継承戦の展開に触れています。
ベンジャミンの念能力「星を継ぐもの」でできること
「星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)」は、死んだ部下の念能力を引き継ぐ力です。
条件は、その人物がベンジャミンに忠誠を誓った念能力者であること。死亡すると、生前に使っていた能力がそのままベンジャミンのものになる。
継承が起きると、手のひらの指の付け根にある★のマークにオーラが灯ります。灯った数を見れば、部下が死んだことも同時に分かる。
はっきり継承が描かれたのは2つ。ビンセントの虚空拳(エアブロウ)と、ムッセの裏窓の鳥(シークレットウィンドウ)です。手から衝撃を飛ばす技と、念獣を放って見張る技。
シカクの遊戯王(カルドセプト)も継承されたとされています。巨大なカードで攻撃を受け止める技で、細かい仕様はまだ出ていない。他人の能力を集める以上、用途も戦い方もばらばらになる。
複数の能力を同時に抱えられる時点で、単独の強さとしてはかなり有利な部類だ。能力を1つに絞るほど強いという念の常識から、はっきり外れている(→ 念のメモリ(容量)が強さを決める)。
星を継ぐものには資格がある|誰の能力でも継げない
継承できる能力の幅が広いぶん、その相手はかなり狭く絞られている。
継承の対象になるのは、カキン国王軍学校を卒業し、ベンジャミンの私設兵団に属している者だけ。忠誠を誓っただけでは足りません。経歴と所属の両方が要る。
ここが効いてくるのは、王位継承戦の舞台が船の上だからです。王子が船へ連れて行けるのは、私設兵か従者を合わせて15人まで。ベンジャミンは第1王妃ウンマの子で、監視役が付かない。そのぶん人数をすべて自分の兵で埋めている。
上位の王子の多くは、私設兵の一部をハンター協会の準協会員にして枠の外へ上乗せしています。ツェリードニヒやチョウライは、これで20人を船に乗せた。15の枠を丸ごと自分の私設兵で固めているのは、ベンジャミンだけ。
戦いが始まったあと、資格を持つ人間が新しく足された場面は描かれていません。欠けた部屋には別の私設兵が送られますが、起きているのは同じ15人の中の配置換え。継承できる相手は、乗船した時点でほぼ出そろっていると見ていい。
能力が増える条件と、能力を増やせる回数の上限。この2つが同じ15人に結びついています。
ベンジャミンが強くなるほど陣営は薄くなる
継承を「戦力が増えた」と数えると、状況の見え方を取り違えます。
ビンセントが死んだとき、ベンジャミンは虚空拳を手に入れた。同時に、ワブル王子を見張る役目は空いたままになりました。
ムッセのときも同じです。裏窓の鳥という諜報の手段は継承された。けれど、カミーラを見張っていた人間そのものはいなくなりました。
能力は移せても、その能力を持って別の場所に立つ人間までは移せない。移動しているのは技だけで、配置できる人は減り続けている。
陣営全体で見れば、差し引きはよくてゼロ。1人が2つの能力を持つ状態は、2人が1つずつ持つ状態より、置ける場所が1つ少ない。
ベンジャミン個人の強さと、ベンジャミン陣営の厚み。この2つは逆向きに伸びていきます。
冨樫はなぜ軍の実権を持つ王子にこの能力を与えたのか
14人の王子の中で、ベンジャミンの立場は特殊です。軍事最高副顧問という役職を持ち、戒厳令を出す権限まで握っている。私設兵は国王軍と同等の権限を与えられている。全員が軍学校の卒業生で、継承戦の前から念を使えます。
頭数で勝っているわけではありません。準協会員で上乗せしている王子と比べれば、船に乗せた人数はむしろ少ない。違うのは中身のほうだ。
組織で勝っている王子に、その組織を減らすことで強くなる能力を持たせた。この組み合わせは偶然ではないと俺は考えています。
もし「誰の能力でも継げる」という条件だったら、どうなっていたか。ベンジャミンは倒した相手の能力を吸い上げて、そのまま独走していたはずです。継承戦は序盤で終わっていたでしょう。
そうならないための線引きが、二重に置かれているように見える。忠誠という条件で敵からは奪えず、軍学校と私設兵団という条件で外部からの補充もできない。継承できるのは、自分の側の人間だけです。
有利な立場をそのまま伸ばす能力ではなく、有利な立場を消費して伸びる能力。そう置いたから、最初から一番強い王子を出しても物語が壊れない。俺はそう読んでいます。
星を継ぐものを他の王子の能力と比べる
同じ継承戦の中に、正反対の作りが並んでいます。
モレナの「恋のエチュード」は、感染させることで念能力者そのものを増やす能力。人を増やしながら勢力を広げていく方向です(→ モレナの念能力“恋のエチュード”が念使いを増やす仕組み)。ベンジャミンとは増減の向きが逆になっている。
ツェリードニヒは私設兵のテータに念を教わったあと、自分の修行だけで一気に伸びました(→ ツェリードニヒの念能力が“反則級”な理由)。他人の能力を取り込んではいないので、伸びしろが誰かの生死に縛られない。
クラピカも他人の能力を扱いますが、あちらは寿命を削る代わりに、鎖で一時的に奪うだけ(→ クラピカの念能力は“二段構え”)。差し出すのは自分の時間で、仲間の命ではありません。
3人と比べると、ベンジャミンだけが味方の死を条件にしていることが分かる。代償を払うのが本人ではなく周りだという点で、制約と誓約の型からも少し外れています(→ 制約と誓約は“念の交換レート”)。
そもそもカキンでは王族殺しが極刑で、継承戦の最中でも王子は逮捕される(→ 王位継承戦で王子は自分では戦えない)。人を使うしかない争いで、その人を使い切ることで強くなる。ベンジャミンに与えられたのは、そういう矛盾を抱えた力だと読めます。
星を継ぐものは継承戦が長引くほど不利になる
この作りが厳しいのは、継承戦が消耗戦だからです。
15人の兵は、戦うほど減っていく。減ったぶんはベンジャミンの手のひらの★に灯るだけで、見張りにも護衛にも回せない。最後に残るのは、たくさんの能力を持った1人と、空になった陣営です。
守護霊獣のほうも、ベンジャミンの死後に発動する力だとNo.413で語られました。肉体が死んでも、その魂をカキンの守護神へ押し上げるというものです。自分がいなくなった後まで戦力に数えている。部下の死を前提にした念能力と、方向がそろっています。
自分の周りが減り続けても勝つ道は残る。ベンジャミンという王子は、そういう前提で組まれているように見える。継承戦の勢力図そのものは 王位継承戦の14王子は母の序列で読む に整理しました。
まとめ|ベンジャミンの念能力
- 星を継ぐものは、忠誠を誓った私設兵が死ぬとその念能力を継承できる力
- 継承の資格はカキン国王軍学校の卒業者かつ私設兵団の所属者に限られる
- 王子が連れて行けるのは15人まで。船上で資格者が新しく足された場面は描かれていない
- 能力は移せても人は移せないため、継承のたびに動かせる人が減っていく
- 頭数ではなく質で勝っている王子に、その組織を減らす能力を与えた作りだと俺は読んでいる
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