王位継承戦の14王子は母の序列で読む|狙える相手は開始前に決まっている

第14王子ワブルの部屋には、開始の時点で他人の兵が7人入っています。第1王子ベンジャミンと第4王子ツェリードニヒの部屋は0人。

この差を作っているのは本人の強さではなく、母親が何番目の王妃かという1点です。誰を狙えるかは、継承戦が始まる前にほぼ決まっている。

まず8人の王妃と14王子の対応を整理して、そのうえで配られ方から外れた王子を掘っていきます。

※この記事はブラックホエール号で進む王位継承戦の展開に触れます(単行本既刊分)。

王位継承戦で動かせる兵は母の序列で決まる

継承戦が始まる前に、王子はそれぞれ人手を用意する。この人手は3種類に分かれる。

  • 私設兵: 王子が自力で集めた兵。忠誠は王子本人に向く。抱えられるのは第1王子から第9王子まで
  • 王妃所属兵: 国王軍から王妃に割り当てられた兵。忠誠は王子ではなく母である王妃に向く
  • 雇われた護衛: 私設兵を用意できない王子が、ハンター協会を通して雇った外部のハンター

私設兵を厚く抱えられるのは、財力と権力を持つ、番号の早い王子だけ。番号の遅い王子は自前の軍を持てないので、外から人を雇うしかない。第14王子ワブルにクラピカが付き、第13王子マラヤームにビスケが付いているのも、この事情からです。

そして王子1人が居住区に置けるのは15人まで。私設兵も従者も雇った護衛も、この枠に含まれる。

ここで王妃所属兵にもう一つの働きが出てくる。上位の王妃は、自分より下の王妃が産んだ王子に、警護という名目で兵を送り込める。逆はできない。下位の王妃が上位王子の部屋に人を入れる仕組みはありません。

送り込める人数は、その王子の母より上位にいる王妃の数と一致する。名目は王室の警護で、実態は監視。状況によっては刺客になります。

しかも送り込まれた監視兵も、この15人枠に入る。母の序列が下の王子ほど、他人の兵に枠を取られた状態で開始することになります。

つまり誰が誰を狙えるかは、王子同士の思惑より先に決まっている。決めているのは、上から下へ一方向にだけ働く王妃の序列です。

カキン14王子と8人の王妃の対応

8人の王妃と、その子である14王子の対応です。右端は、その王子の部屋に入ってくる監視兵の数。

母(王妃) その子 部屋に入る監視兵
第1王妃ウンマ 第1王子ベンジャミン/第4王子ツェリードニヒ 0人
第2王妃ドゥアズル 第2王子カミーラ/第5王子ツベッパ/第7王子ルズールス/第9王子ハルケンブルグ 1人
第3王妃トウチョウレイ 第3王子チョウライ 2人
第4王妃カットローノ 第6王子タイソン 3人
第5王妃スィンコスィンコ 第8王子サレサレ 4人
第6王妃セイコ 第10王子カチョウ/第11王子フウゲツ 5人
第7王妃セヴァンチ 第12王子モモゼ/第13王子マラヤーム 6人
第8王妃オイト 第14王子ワブル 7人

王子の番号は生まれ順なので、番号と母の序列はずれる。第4王子ツェリードニヒは第1王妃の子で、監視兵が1人もいない。一方の第8王子サレサレは第5王妃の子なので、部屋に4人を抱えることになる。

この配られ方を、狙える相手という基準で仕分けると3つになる。これは当サイトの整理で、原作にこういう分類が出てくるわけではありません。

  • 攻める側: 監視兵ゼロで、送り込む側に回れる。ベンジャミンとツェリードニヒ
  • 手を組む側: 単独では上に届かないので、他の王子と結んで数を作る。ツベッパやチョウライ
  • 守る側: 部屋の中にすでに他人の目が入っていて、守りに人手を割くしかない。カチョウ、フウゲツ、モモゼ、マラヤーム、ワブル

第1王妃の子は最初から誰にも見張られていない。第8王妃の子は7人に見張られている。同じ「王子」でも、開始時点の条件がここまで違う。

実際に王子が落とされるときも、この順番のまま進みました。ベンジャミンの私設兵が第8王子サレサレの守護霊獣を捕食し、そのあと別の兵が本人の命を奪っている。上位の王子が下位の王子を消す、想定どおりの動きです。

ただ、14人全員がこの3つに収まるわけではない。当てはまらない王子が何人かいます。

狙える側にいながら誰も攻撃しなかったサレサレ

第8王子サレサレは、第5王妃スィンコスィンコの一人息子。監視兵を4人抱える立場ですが、私設兵を持てる側でもありました。

にもかかわらず、サレサレは誰も攻撃していません。継承戦を勝ち抜くべき争いとして扱わないまま、船内で女性を侍らせて過ごしていた。この危機感のなさが、そのまま守りの薄さになっていたと俺は見ています。

結果は早々の脱落。守護霊獣を消され、暗殺された。継承戦で最初に落ちたのは第12王子モモゼ、その次がサレサレです。

最下位のワブルではなく中位のサレサレが早い段階で落ちた。ここに意味があります。

3つの分け方は「持っている力の量」で王子を並べたもの。でもサレサレの例は、それだけでは説明がつかない。使う意思があるかどうかという基準が別に要ります。人手を持っていても、向ける気がなければ守りにすら回らない。

継承戦のルールには、何もしない王子を守る仕組みがありません。降りることは許さないのに、参加しない王子は放置される。動かない王子ほど、少ない労力で落とせる相手になります。

序列を上に向かって狙ったカミーラ

第2王子カミーラは、第2王妃ドゥアズルの子。監視兵は1人だけで、条件としては上から2番目に恵まれています。

そのカミーラが、はっきり上位を狙っている。標的は第1王子ベンジャミン。母の序列でいえば真上にあたる相手です。

これができる理由は、カミーラ自身の念能力にあります。守護霊獣とは別に本人が持つ「百万回生きた猫(ネコノナマエ)」。自分が殺されたときに発動し、殺した相手の命を奪って蘇るという性質のもの。

狙われることが発動条件になっている。だから守りを固める必要がない。上へ向かって突っ込んでも、返り討ちに遭った瞬間が反撃になります。

上位王妃の監視という仕組みは、下から上への攻撃を封じるために作られています。カミーラが持っているのは、その仕組みを兵の数ではなく能力ひとつで無効にしうる力。序列で決まったはずの力関係は、念能力が入ってくると崩れうる。

念能力が前提を壊す例は、ツェリードニヒの能力にもあります。兵の数だけで勝敗が決まらないことが、ここでもはっきりする。

クラピカが持ち込んだ継承戦の外側の目的

第14王子ワブルは最下位の第8王妃オイトの子で、部屋には7人の監視兵。しかも本人は乳児です。狙う意思を持ちようがない。

分け方でいえば、守る側のいちばん端。ところがワブル陣営だけは、同じく人手のない他の王子と動きが違います。

理由は護衛のクラピカにあります。クラピカが継承戦に入った目的は王位ではない。第4王子ツェリードニヒが持つ緋の眼を取り戻すことです。

つまりワブル陣営には、継承戦の外側から持ち込まれた目的がある。しかも狙う相手は、監視兵ゼロの第4王子。序列でいえば、いちばん下からいちばん上へ届く狙いです。

クラピカはこの狙いを兵の数で通そうとはしていません。念の講習会を開いて、船内の念能力者を増やしている。あわせて第3王子チョウライ、第5王子ツベッパ、第9王子ハルケンブルグと停戦協定を結んだ。攻撃してこない相手を増やす動きです。

クラピカが集めたハンターの当初の配置も、この見方で読むと意味が変わってくる。

  • イズナビは第6王子タイソン、バショウは第7王子ルズールス
  • センリツは第10王子カチョウ、ハンゾーは第12王子モモゼ
  • ビスケは第13王子マラヤーム

全員が番号の遅い王子に散っていました。一人ひとりは1つの部屋の護衛でしかない。ただ、複数の王子の部屋に同じ雇い主の人間が同時に入っている。それ自体が、序列では作れないはずのつながりになります。

ワブル陣営は、母の序列という前提がはっきり揺らいでいる数少ない場所だと俺は考えています。人手を配られなかった側が、持つ側と対等に話せている。雇われた護衛が継承戦とは無関係の動機を持ち込んだからです。制度が想定していない参加の仕方が、ここで成立している。

王子でもないモレナが継承戦を崩している理由

もう一つ、王家の外から来た例がある。マフィアのモレナ=プルードです。

船内では三大マフィアがそれぞれ王子をケツモチ(後ろ盾)にして、表向きの秩序を保っていました。モレナが率いるエイ=イ一家のケツモチは第4王子。ところがモレナは、その第4王子とも敵対する道を選びます。

モレナの能力は、感染させた相手に念能力を芽生えさせるもの。これで組員を念能力者に変え、船内で無差別の殺害を始めた。第4王子の私設兵まで感染の対象にしています。

ここが継承戦の前提にとって厄介なところ。序列で配られる人手は、あくまで数の話です。何人の兵を持ち、何人の監視を抱えているか。

第4王子は監視兵ゼロで、私設兵も揃っている。数の上では最強の部類です。

ところがモレナの能力は、その数を敵側に付け替えてしまう。抱えている兵が多いほど、感染したときに失うものも増える。序列が保証していた優位が、そのまま弱点に変わります。

三大マフィアの均衡も同じです。マフィアが王子と結んで秩序を保っていたあいだ、王子は船内の争いを任せておけた。その均衡を内側から壊されると、序列で決まっていた力関係を測り直すしかなくなる。

継承戦の分け方は、王子と王妃と兵という前提で組み立てられています。モレナはそのどれでもない。王位を欲しがってもいない。それでも船の中で人が死に、王子の陣営が削られていきます。

王位継承戦の陣営は王妃の番号で読む

継承戦の陣営は、王子の名前で覚えても正確につかめません。

誰が誰を狙えるかは、母である王妃が何番目かで先に決まっている。監視兵の数も、私設兵を抱えられるかどうかも、この序列から出てくる。王子の野心や器量は、配られた条件の後ろに来る要素でしかない。

だから継承戦は、王子14人の戦いというより王妃8人の序列争いに近い。動いているのは王子ではなく母の側。継承戦のルールが王子本人を動けないように組まれているのも、この読み方なら納得できます。

そのうえで無視できないのが、序列の外から来た3つの例。カミーラの念能力、クラピカの目的、モレナの暴走。どれも兵の数では説明できない要素から生まれています。

冨樫はこの編で、序列どおりに配り終えた条件を、序列と関係ない要素で崩し続けている。一度整理しても、すぐ書き換えが必要になるのはそのためです。

まとめ|狙える相手は母の序列で決まっている

  • 王子が動かせるのは私設兵・王妃所属兵・雇われた護衛の3種類。量は母である王妃の序列で決まる
  • 上位の王妃は下位の王子へ監視兵を送り込める。人数は母より上位の王妃の数と一致し、第14王子ワブルには7人が入る
  • 狙える相手で仕分けると攻める側・手を組む側・守る側の3つ。早々に落ちた第8王子サレサレは想定どおり上から消された
  • カミーラは念能力で下から上へ、クラピカは継承戦の外の目的で最下位から最上位へ狙いを向けている
  • 陣営は王子の名前より王妃の番号で読むほうが正確。継承戦は王子の戦いというより王妃の序列争いに近い

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