ゴンとキルアが別れたのは世界樹の麓で、ゴンがジンに会いにいく直前でした。頂上へ登るのはゴンだけ。旅を始めた理由そのものを果たす場面に、相棒は連れていっていません。
そして別れ際、ゴンは土下座して謝っています。キルアはそれを受けて、旅の礼を返した。
険悪な空気はどこにもない。それでも2人はここで離れる。この配置に、冨樫の狙いが出ていると読んでいます。
※キメラアント編・会長選挙編(32巻まで)と、連載最新話(No.414)の内容に触れます。
ゴンとキルアが別れた場面で交わされたもの
世界樹の麓に着いたのは、ゴンとキルア、そしてアルカの3人。写真を撮ったあと、ゴンが1人で登ることになった。
やりとりは4つありました。
| 誰が | 何を |
|---|---|
| ゴン | ピトー戦のときに突き放したことを謝る |
| キルア | もう謝ってもらったと受け、旅の礼を返す |
| キルア | ゴンを治したのがアルカだと明かす |
| ゴン | どこにいても仲間だと言い、「また」と言って別れる |
ゴンが謝ったのは、相手を1人で倒すと言い張った場面。お前は関係ない、と突き放したときのことです(→ ゴンの念能力は本当に消えた?)。
キルアの返しは、恨みごとではありませんでした。お前と旅したおかげで、いまアルカといられる。そういう趣旨のことを言っています。
最後にキルアは、ゴンが助かったのはアルカの力だと明かした。ゴンは礼を言い、キルアは気をつけてと送り出す。別れ際の言葉も「また」で終わっています。
2人が持っていた旅の目的は、最初から別だった
これだけ穏やかなら、離れる必要はどこにあったのか。ここで効いてくるのが目的の中身だ。
ゴンの目的は最初からはっきりしている。父親のジンに会う。ハンター試験を受けたのも、グリードアイランドへ行ったのも、たどれば全部そこにつながります。
キルアの目的は、そこまで固まっていなかった。家を出た理由は、決められた生き方から離れること。試験も暇つぶしのつもりで受けている。何をやりたいかは、旅の途中で探すことになります(→ キルアはイルミの針が抜けても逃げる)。
片方は目的地が決まっていて、もう片方は決まっていない。同じ道を歩いていても、2人が向かっていた先は最初から別でした。
そのキルアがアルカを連れ出したのは、ゴンを治すためです。ただ、治し終えたあとも旅は続いている。目的だったはずのことが片づいたのに、キルアは帰らなかった。
世界樹の麓は、旅を終える側と始める側が並ぶ場所だった
ゴンにとって世界樹の麓は、旅の終点に一番近い地点です。ここから登れば、探していた相手に会える。
一方のキルアは、この時点ですでに次の旅に入っていた。アルカを守って生きるという行き先が、もう決まっている。
同じ場所に、旅を終える側と旅を始める側が立っている。別れをここに置くと、その差が1つの場面で分かる。冨樫が狙ったのはこれではないか、というのが俺の読みです。
一緒に登っていたら、この差は見えません。ジンとの再会が2人そろっての到達点になり、キルアの旅は付け足しに見えてしまう。
世界樹の頂上に、キルアの席はなかった
ゴンが世界樹を登り切り、頂上でジンと向き合う。ここにキルアはいません。ゴンが投げかけたのは、ジンがほしいものは何かという問いだった。
答えは、いま目の前にないもの。そこから話は暗黒大陸へ広がっていきます。
この会話は父と子のあいだで完結しています。キルアがいても担う役目はない場面になっている。物語で一番大きな目的を果たす場所に、相棒を立ち会わせない。配置の判断だと読めます。
キルアが旅から持ち帰ったのは、アルカだった
もう1つの根拠は、別れよりも前の動き方にある。
キルアはゴンを治すためにゾルディック家へ戻り、アルカを家から連れ出しました。ここまでは、ゴンのための行動だ。
ところが治療が済んだあと、キルアはアルカを家へ返していません。連れたまま旅に出ている。手段だったはずのアルカが、旅を続ける理由そのものに変わったと読めます(→ ナニカ(アルカ)のおねだりのルール)。
その後の描かれ方も同じです。キルアが本編に姿を見せたのは、クラピカの護衛集めにビスケをつないだ1コマだけ。自分は継承戦に加わらず、アルカとの旅に戻っている。
ゴンの側も裏返しの形になりました。念を失い、ジンに会い、探していたものが手元に来た。残ったのは、くじら島に帰るという選択です。
片方は目的を使い切り、片方は目的を手に入れた。同じ別れの場面で、2人の状態は正反対になっています。
連載で14年、それでも合流は描かれていない
ここに1つ、読みに合わない材料があります。2人はまた会う前提で別れているからです。それなら一時的な別行動と取るほうが素直だ。
ところが再登場の場面でも、2人は離れたままでした。ゴンはくじら島の海辺、キルアはアルカと歩く街角。同じ話の中に描かれながら、同じ場所にはいない(→ ゴンとキルアの再登場はNo.414)。
別れの回が載ったのは2012年で、再登場は2026年です。現実の時間で14年、合流は描かれていません。作中の経過はもっと短く、別れからまだ2年ほどの出来事にあたる(→ ハンターハンターは作中で何年経ったのか)。
つまりこの別れは、また会う前提を消したわけではない。ただ、合流を急がない置き方になっている。世界樹の下の別れは、2人の立ち位置を決め直す場面だったと読めます。
主人公の降板ではないと読める理由
この別れを、ゴンの降板として説明することもできる。念を失って戦えなくなったから物語から外した。そういう読み方です。
ただ、それだけなら場面はもっと短くていい。実際には謝罪と礼、そしてアルカの種明かしまで入っています。2人のあいだに残っていたものを、全部片づけてから離している。
俺はこれを、次に進むための整理だと見ています。借りも謝罪も残さず別れたから、2人はそれぞれの場所で普通に暮らせる。再登場が戦場ではなく日常だったのも、その延長にあるのではないか(→ ゴンとキルアの念能力はなぜ噛み合う?)。
この場面に湿っぽさがないのは、2人が笑って別れているからだ。うまくいかなかったから離れたのではなく、やることが済んだから離れています。
まとめ|ゴンとキルアの別れはどこに置かれたのか
- 別れの場所は世界樹の麓で、ゴンがジンに会いにいく直前。頂上へ登るのはゴン1人だった
- 場面で交わされたのは、ゴンの謝罪、キルアの礼、アルカの種明かし、そして「また」という言葉。仲違いの描写はない
- ゴンの目的は最初からジンに会うことで、キルアの目的は旅の途中で決まった。向かう先は元から別だった
- ジンとの対面にキルアはいない。物語で一番大きな目的を果たす場に、相棒を置かない配置になっている
- 連載では14年たっても2人は別の場所にいる。作中の経過は2年ほどで、合流はまだ描かれていない
ゴンは旅を使い切り、キルアは旅の途中で次の行き先を見つけた。終わりと始まりを1つの場面で見せるために、頂上の手前で別れさせたのではないか。そう思っています。
関連記事:
- ゴンとキルアの再登場はNo.414 — 別れたあとの2人がどこにいるか
- ゴンの念能力は本当に消えた? — ゴンが旅の終わりに失ったもの
- キルアはイルミの針が抜けても逃げる — 決める人が変わったキルア
- ナニカ(アルカ)のおねだりのルール — キルアが守ることにした力
- ハンターハンターは作中で何年経ったのか — 別れからどれだけ進んだか


コメント