10万人に1人の才能。ウイングがズシに向けたこの言葉は、けなす場面で出たものではない。落ち込んでいる弟子に、自信を持てと言うために出ています。
そのうえで、あの2人が1000万人に1人だっただけだ、と続けた。比べる相手のほうが、作中でも例のない状況だったわけです。
ズシ・ゴン・キルアを、師の評価・念を得た手順・試合で使えた念の3つで比べます。
※天空闘技場編の展開に触れます。
ズシ・ゴン・キルアは何で比べられるか
強さの順位は基準に入れない。試合の勝敗はもう出ているので、比べても新しいことが分からない。
代わりに使うのは次の3つ。
- 師のウイングが、才能をどう評価したか
- 念を使えるようになるまでに、どんな手順を踏んだか
- 50階クラスの試合で、念を使える状態だったか
3人とも同じ師に教わっているので、評価も手順も同じ人物の口から出ている。比べる土台としては、条件がかなりそろっています。
3つの基準で比べると、ズシだけが分かれる
| 基準 | ズシ | ゴン | キルア |
|---|---|---|---|
| 師の評価 | 10万人に1人 | 1000万人に1人 | 1000万人に1人 |
| 念を得た手順 | 時間をかけて自然に開かせた | 強引にこじ開けられた | 強引にこじ開けられた |
| 50階クラスでの状態 | 念を使えた | 念を知らなかった | 念を知らなかった |
3つとも、ズシと主人公2人ではっきり分かれている。ただ分かれ方は同じではない。才能は量の差で、あとの2つは種類の差です。
しかも勝敗とは逆を向いている。念を使える側が負けて、知らない側が勝った。
「10万人に1人」が指しているのは上達の早さ
まずは才能の評価から。
ウイングは、上達の早さが並ではない、10万人に1人の才能だと言っている。強さの序列を付けた発言ではありません。
10万人に1人という評価は、それ自体が相当な希少さを指す。しかも50階クラスで念を使えていたのはズシだけでした。実力の面でも上位に入る側と見ていい。
そこへ1000万人に1人が2人そろって隣に立った。この並びのほうが、作中でも珍しい。
念を得た手順は、期限に追われたかどうかで分かれた
2つ目の手順は、差がはっきりしている。
ズシは時間をかけて精孔(しょうこう)を開かせる方法で、ゴンとキルアは強引にこじ開けられた。理由は期限で、ヒソカと戦う日が迫っていたからです(→ ウイングが最初に教えたのは纏)。
開けた直後の2人に、ウイングは2か月は試合に出るなと言い渡した。はるかに強い念の使い手が相手なら、纏を軽々と突き破られる。それが理由でした。
ズシにはヒソカと戦う予定がないので、この足止めは出てこない。代わりに、試合で攻めの念を使うなという別の禁を守っています。
試合でズシが使えたのは、守りの念だけだった
3つ目が、いちばん誤解されやすいところだと思う。
キルアとの50階クラスの試合で、ズシは手刀を受けて悶絶しかけた。ところが立ち上がった。念で防いだからです。
この場面を見たゴンとキルアには、何が起きたのか分からなかった。2人はまだ念を知らず、ズシだけが使える側にいた。
ただ、ズシが使えたのは守りだけでした。攻めに回ろうとして構えを取ったところで、試合中のウイングから練はまだ使うなと止められています。前から言い渡されていた禁だった。
ズシはそこで構えを解き、体術に切り替えた。最後はキルアの本気の一撃を腹に受けて場外へ飛ばされ、ポイントで押し切られています。
攻め手を封じられたまま、守りの念だけで受け続けたうえでの負けです。
キルアの側も、途中から構えを変えたズシに嫌な感覚を覚えている。兄のイルミに近いものを感じた、という反応でした(→ キルアはイルミの針が抜けても逃げる)。
差が生まれたのは、ズシが積み上げの途中だったから
3つを合わせて見ると、ズシと2人の違いは順番の問題だと分かる。
ズシは正規の手順を踏んで念を身につけている最中だった。完成していない状態で、しかも攻め手を禁じられて試合に出ている。
ゴンとキルアは逆です。念を知らないまま50階クラスまで上がってきて、そこで初めて念に触れた。そして触れた瞬間から、追い抜く速さで伸びていった(→ 念能力は何歳から使えるのか)。
冨樫がズシを置いた位置は、ここだと俺は思っています。ズシがいなければ、ゴンとキルアの伸び方が異常だと読者に分からない。同じ師に教わっていて、それでも差が開く。その形が必要になる。
冨樫は、まっとうな才能を隣に立てた。そのおかげで、主人公2人の伸び方の差が見えるようになっています。
まとめ|ズシが弱く見えた理由
- 50階クラスの試合で念を使えたのは、ズシ・ゴン・キルアのうちズシだけだった
- ウイングの評価は10万人に1人。落ち込んだ弟子に自信を持てと言うために出た言葉。上達の早さへの評価にあたる
- ズシは時間をかけて精孔を開かせる正規の手順。ゴンとキルアは期限に追われて強引にこじ開けられている
- キルア戦でズシが使えたのは守りの念だけ。攻めの練は師に止められ、体術に切り替えて受け続けた
- 差が生まれたのは順番の問題で、ズシは積み上げの途中だった
ズシは弱くありません。主人公2人の伸び方が異常だと示すために、まっとうに強い弟子が隣に必要だった。そう読むほうが、原作の描き方に合っています。
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