ハンゾーが分身を動かしている間、本体は寝たような状態で転がっている。危うさを引き受けたぶん、自分がいない場所に立てる。これが分身の術の交換条件です。
誰かが触れるか、声をかけるだけで解ける。忍者の技としては、ずいぶん壊れやすい作り。
強さで押す型ではありません。何を捨てるかを、そのつど計算する型。ハンゾーという人物は、能力の外でも同じ選び方をしています。
※ネタバレ注意。ハンター試験編と、王位継承戦での動きに触れます。
ハンゾーの念能力「分身の術」でできること
ハンゾーは第287期ハンター試験の受験者。雲隠流の上忍を名乗る忍者です。
忍びらしさは薄い。名刺を配り、自分から忍者だと明かして回る。陽気で、隠れる気がまるでない。
実力のほうは本物でした。念を習得する前の段階で、ゴンはまるで歯が立っていない。開始直後に捕まえられ、一方的に殴られ続けた。キルアも、試験の時点ではハンゾーを自分より上と見ていたとされる。
この頃のハンゾーは、まだ体ひとつで押していた。差し出すものを計算しはじめるのは、この先です。
再登場したハンゾーが見せたのが、分身の術(ハンゾースキル4)。もう1人の自分を作り、それを本体から離れた場所で動かす技です。
制約もはっきりしている。発動中の本体は眠ったような状態になり、触れられるか声をかけられると強制的に解除される。分身が何をしていようと、本体をつつかれた瞬間に終わる。
ハンゾースキル4の「4」が示しているもの
技のフリガナに付いた「4」は、それだけで意味を持ちます。
4番目と名乗る以上、その前に3つある。ただし、それが何なのかは作中に出てきません。ファンのあいだでは予想がいろいろ出ていますが、原作で確認できるのは番号だけ。
中身を伏せたまま、数だけが表に出ている。能力を隠しておく使い手として読める形です。
念能力は、知られた時点で対策される。名前も効果も伏せたままのほうが強い、というのは作中で繰り返し出てくる考え方です(→ 制約と誓約は“念の交換レート”)。
王位継承戦でハンゾーが受け持った役目
暗黒大陸編のハンゾーは、第12王子モモゼの護衛に就く。
この配置は、カキン側が実力を見て決めたものではない。クラピカが自分のツテで集めた顔ぶれです。ノストラード時代の同僚だったバショウとセンリツ、念の師匠のイズナビ、キルアの紹介で入ったビスケ。ハンゾーはこの中で唯一の試験同期でした。
結果だけ見れば、任務は果たせていない。モモゼは暗殺されてしまう。
分身の術の本領が出たのは、そのあとの動き。実行犯のタフディーに分身で近づき、そのまま討ち取っている。正面から戦って倒したのではなく、気づかれずに間合いへ入って終わらせた。
この場面には、技の不便さもはっきり出ています。分身を出すあいだ、ハンゾーはビスケに本体の見張りを頼んでいた。1人では完結しない技です。
継承戦は情報と暗殺で動く戦い。誰がどの部屋にいて、誰と組んでいるのかが勝敗を分けます(→ 王位継承戦の14王子は母の序列で読む)。本体を置いて中へ入れる技は、この舞台でようやく生きてくる。
分身の術が差し出すものと得るもの
モモゼ暗殺の一件で、この技が何と引き換えに動いているかが見えます。ハンゾーが本体に何をさせているかを、見返りと並べて書き出すとこうなる。
| 差し出しているもの | 代わりに得ているもの |
|---|---|
| 発動中の本体の自由 | 自分の体を運ばずに危険な場所へ入れること |
| 見張り役として人手を1人拘束すること | 本体を安全な場所へ置いたまま動けること |
| 本体を無防備にして待たせること | 相手の懐まで気づかれずに入れること |
3行とも向きは同じ。本体を戦場から外すために、本体を誰かに預ける。守っているのは体そのものではなく、生きて帰ること。
忍者の仕事が偵察や潜入なら、この配分は理にかなう。逆に、殴り合いの場では何ひとつ得をしません。
最終試験でハンゾーが差し出したのは、目の前の1勝だった
何を差し出すかを決めるやり方は、能力を使わない場面にも出ている。
287期の最終試験は、ネテロが用意した逆トーナメントでした。1回でも勝てば合格で、最後まで勝てずに残った1人だけが落ちる。相手に参ったと言わせれば勝ち、というルールです。
ハンゾーはゴンを3時間以上殴り続け、左腕まで折った。それでもゴンは参ったと言わない。
先に折れたのはハンゾーのほうです。自分から負けを認めて、その試合を捨てた。納得しないゴンを殴って気絶させてもいる。
ここで差し出したのは、目の前の1勝。得たのは、これ以上ゴンを壊さずに済むという結果でした。
そしてハンゾーはこの試験に合格しています。降りたのは1試合であって、資格ではない。1勝すれば通るルールである以上、この試合を落としても道は残る。そう踏んでいたと読めます。
試験そのものが何を測る場だったのかは ハンター試験は強さを測る試験? に整理しました。同期が何を持ち帰ったのかは ポックルは“蟻編の戦犯”なのか? でも扱っている。
ハンゾーの出番が少ないのは能力の性質による
強いのに登場が少ない。この食い違いも、何を差し出しているかで読むと説明がつく。
ハンゾーの技は、正面から殴り合う場面ではほとんど価値を出さない。本体が無防備になる技を、乱戦の真ん中で使う理由がありません。生きるのは、誰にも見られずに入り込む場面です。
つまり、活躍が描かれるほど能力の価値が下がる作りに見える。目立つ戦いに出るほど知られて、次から使えなくなる。
出力で押す技とは伸び方が逆。ジャジャン拳のように分かりやすい技は、見られても構いません(→ ゴンの念能力ジャジャン拳が単純すぎる理由)。ハンゾーの技は、見られた時点で価値が落ちる。
隠れることを役目にする以上、表に立つ回数は少なくなる。出番の少なさは扱いの軽さではなく、能力の性質そのものだと俺は読んでいます。
まとめ|ハンゾーの念能力と立ち回り
- 分身の術(ハンゾースキル4)は、本体から離れた場所で分身を動かす技。発動中の本体は寝たような状態になる
- 触れられるか声をかけられると強制解除されるため、本体を預ける場所と見張り役が要る。1人では完結しない
- 差し出しているのは本体の自由と安全。得ているのは、自分の体を運ばずに相手の懐まで入れること
- 最終試験ではゴン相手に自分から負けを認めた。ただし1勝すれば合格するルールで、捨てたのは1試合だけ。ハンゾー自身は合格している
- 乱戦では価値が出ず、見られるほど知られていく技。出番の少なさは扱いの軽さではなく、能力の性質によるものだと俺は考えている
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