幻影旅団の掟は内向き、流星街は外向き|ゾルディック家は契約で動く

11巻、マフィアに雇われたハッカーが幻影旅団の身元を洗う。何十年ぶんもの記録を当たった末に出した結論は、彼らは存在しない、というものでした。

ハッカーはそこから流星街にたどり着き、街の言葉を紹介する。我々は何ものも拒まない。だから我々から何も奪うな。

この言葉は住人どうしの約束ではない。外の世界に向けて出されたものです。比べる基準をここに置くと、3つの集団の決まりが同じ種類ではないと分かります。

※ヨークシン編・キメラアント編の展開に触れます。

3つの掟は、言葉がどこに残っているかで分かれる

比べる基準は1つ。その決まりが誰に向けて言葉にされているかです。

集団 言葉が向いている先 どこで確認できるか
幻影旅団 団員 12巻のクロロの台詞
ゾルディック家 家族と依頼人の両方 31巻の家族内指令と、依頼のときの行動
流星街 外の世界 11巻でハッカーが紹介する街の言葉

3つとも「掟」の一語でまとめられがちです。ただ、中身はそろっていない。

内側に向いた決まりは2つある。決めている範囲が違う

内側を縛る言葉を持っているのは旅団だけ、とは言えません。ゾルディック家にもある。ただし、決めている範囲がまるで違う。

旅団の決まりは、行動そのものを縛る。クロロは12巻で、自分が頭で団員は手足だと語っています。生かすべきは個人ではなく団のほうだ、とも続けた。命令の系統と、誰を優先するかまで決めている(→ 十老頭と幻影旅団は替えがきく部分が逆)。

ゾルディック家の家族内指令は、そこまで踏み込みません。31巻で説明されるのは、方針が割れたときの手順だけだ。意見を無理に統合せず、各自が自分のやり方を最大限通す。条件は、家族は殺さないこと。

つまり片方は日々の行動を縛り、もう片方はもめたときの作法だけを決める。家の中の決まりが内輪もめの処理に限られている。これがゾルディック家の特徴です。

キルアが家を出たとき、母と兄を刺してはいるが殺してはいない(→ ゾルディック家の念能力まとめ)。条件は守られている。

なお、団員を倒せば入団できるという決まりを、正面から説明した場面は見当たりません。ヒソカが交代で入ったと語る場面から読み取るしかない(→ ヒソカが幻影旅団に入った理由)。

外へ出された言葉は、宣言と契約に分かれる

外に向けた言葉を持っているのは、流星街とゾルディック家。こちらも中身が違う。

流星街の言葉は宣言だ。何ものも拒まないから何も奪うな、という一文に、手口までが添えられます。握手をした瞬間に爆弾で吹き飛ぶ。

これを聞いたマフィアは旅団から手を引きました。効いたのは報復そのものより、報復があると知られている状態です。

34巻でクロロが使う番いの破壊者は、流星街の長老の能力とされています。仲間を爆弾に変えて、外へメッセージを届けるためのもの。11巻で語られた手口と、そのまま重なります。宣言が念能力として作り込まれていた、ということだ。

ゾルディック家が外へ出しているのは契約です。ヨークシン編では、依頼人が死んで打ち切りになる。キメラアント編では、頼まれた範囲を終えて撤収した。どちらも契約の話として説明がつきます。

一度受けた依頼は必ず遂行する、という決まりは原作にありません。掟に縛られた一家という見え方と、実際の動き方はずれています。

決まりが試された場面で、差がはっきりする

3つの決まりには、どれも試される場面がある。そこで起きたことは全部違う。

旅団の決まりは、実際に破られた。クロロが鎖で念を封じられて動けなくなったとき、団は割れます。掟どおり団を優先すべきだという側と、団長の命が先だという側に分かれた。ここで多数決や投票で決める場面は描かれません。

議論のすえ、パクノダが人質2人を連れて単身でクラピカのもとへ向かう。交換を終えてアジトへ戻り、鎖にかけられた制約を自分の意思で破って絶命します。団を優先する決まりに背いたのは、団員自身の選択でした(→ 誓約を破って罰が下ったのは2度だけ)。

ゾルディック家では、決まりが破られていません。ゼノが引き上げたのは、依頼人が死んだ時点で仕事の意味がなくなったからだ。家族を手にかけた者も出ていない。試されても、そのとおりに動いただけです。

流星街は、また違う動きを見せる。ザザンに姿を変えられた住人を、報復の対象に数えるかどうか。ここで街の側がもめた。

条文ならもめません。あてはめ方を、その都度決めているわけだ。

掟の形は、人がどう入ってくるかで決まる

決まりの向きと範囲の違いは、集団への入り方と重なっています。旅団は人を集めて作った集団だ。だから内側に向けた言葉が要る。クロロが優先順位まで言葉にしたのは、団長がいなくなっても団が続くようにするためだと読めます。

ゾルディック家は血のつながりで続く家で、人を集める必要がない。内側で決めるべきなのは、意見が割れたときの収め方だけだ。そのぶん、外との取り引きの条件が重くなります。試しの門も、家に入る側を選ぶ仕掛けでした(→ ゾルディック家の試しの門は何トンか)。

流星街は何ものも拒まない街で、住人には戸籍もない。入る資格も出る手続きも描かれません。誰でも受け入れる場所で内側を縛ろうとしても、対象を決められないからだ。残るのは、外へ向けて条件を出すことと、そのつど判断することです。

冨樫は3つの集団に、それぞれ違う決まりを持たせた。厳しさで差をつけたのではなく、続き方に合った形を選ばせている、と読むほうが筋が通ります。

まとめ|3つの掟は何を守っていたのか

  • 3つを「誰に向けた言葉か」で比べると、旅団は内側、流星街は外側、ゾルディック家は両方に向いている
  • 内側の決まりは旅団とゾルディック家の2つ。旅団は行動そのものを縛り、ゾルディック家はもめたときの手順だけを決めている
  • 流星街の「我々は何ものも拒まない。だから我々から何も奪うな」は外への宣言で、番いの破壊者としても作り込まれていた
  • ゾルディック家を外向きに縛っているのは掟ではなく契約。依頼人が死ねば打ち切り、範囲の外はやらない
  • 試された場面での動きは3つとも違う。旅団は破られ、ゾルディック家はそのとおりに動き、流星街は判断が割れた

掟という一語でまとめると同じ種類に見える。人を集める集団と、血で続く家と、出入りの手続きがない街。分けて見ると、必要になる決まりの形は違っていました。

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