キメラアントの念能力は2つに分けて奪われた|力は殴って、知識は脳から

人間が念を覚えるときは、たいてい力と知識が同じ師匠から一度に渡ります。オーラの出し方を教わり、そのまま系統や技の名前も教わる。

キメラアントは、そうなっていません。オーラを出す力は殴られて手に入れ、念という体系の知識は人間の脳から抜き取った。入り口が2つに割れています。

入り口が2つとも人間側にしかないのは、書き落としではなく設計だと俺は見ています。

※キメラアント編の展開に触れます。

キメラアントに念が入った場面は5つ

蟻の側に念が渡った場面を、起きた順に見ていきます。

順番 出来事 入ったもの
1 ラモットがゴンとキルアの攻撃を受けて覚醒した オーラを出す力
2 コルトがラモットに自分を殴らせた オーラを出す力
3 ネフェルピトーがポックルの脳から聞き出した 念の体系の知識
4 ヂートゥがシャウアプフから能力を授かった 能力(発)そのもの
5 東ゴルトーの選別で国民を殴った オーラを出す力

1・2・5で入ったのは力、3で入ったのは知識です。4だけが蟻の中で完結している。力と知識が同じ場面で一緒に渡ったことは、一度もありません。

ラモットは力だけを先に手に入れた

最初に念に目覚めた蟻は、コルト隊の兵隊長ラモットだ。NGLでゴンとキルアの念の攻撃を受けて瀕死になった。それが洗礼になって精孔(しょうこう)が開いたとされています。

念を教わったわけではありません。殴られただけで、オーラを出せる体になった。

人間の側では、これは避けたい方法として扱われています。ウイングが取ったのは、本来なら数か月かけて自然に開かせる道だ。強引な方法を使ったのは、期限に追われたときだけでした(→ ウイングが最初に教えたのは纏)。危ないやり方だという前置きが必ず付く。

そのやり方を、蟻は最初の一歩として使った。しかも次はラモット自身が使う側に回ります。師団長のコルトは、同じ力を得るために自分を殴れとラモットに命じた。そこから「覚醒した蟻が別の蟻を殴る」という連鎖で、念は群れの中へ広がっていく。

ただし、この段階の蟻が持っているのは出力だけだ。オーラは出せても、それが何なのかを説明できる者がいない。

ポックルから抜き取られたのは知識のほうだった

蟻に足りなかった半分を埋めたのが、捕らえられたポックルです。ネフェルピトーは頭蓋を開いて脳を刺激し、念について答えさせた(→ ポックルは“蟻編の戦犯”なのか?)。

ここで渡ったのは、オーラを出す力ではありません。系統という分け方があること、自分の系統を調べるには水見式を使うこと。つまり念を体系として扱うための知識です(→ 念能力の六系統とは)。

力のほうは、蟻はもう持っていた。だから抜き取ったのは、その力を整理して伸ばす方法だ。

この一点で、蟻は「オーラが出る生き物」から「念を組み立てられる生き物」に変わりました。ネフェルピトー自身も水見式で系統を調べている。人間が使っていた調べ方を、そのまま蟻が使い始めた形です。

王と護衛軍だけが、最初から両方を持っていた

ここで例外が一つ出てきます。メルエムと護衛軍3体は、生まれた時点で念を使えた。

ネフェルピトーは誕生の直後から、プロハンターがたじろぐほどのオーラを放っていた。巣の手前で気配を察したカイトは、ゴンとキルアに逃げろと叫んでいます。殴られてもいないし、教わってもいない。

しかも順番が重要です。ネフェルピトーが生まれたのは、ポックルから知識を抜き取るより前だ。つまり護衛軍は、蟻がまだ知識を持っていない時期に、力を持って生まれている。

とはいえ、この例外も体系の知識までは持っていなかったと読めます。生まれつき使えたのはオーラのほうで、系統や水見式はポックルから聞き出している。もし護衛軍が最初から全部知っていたなら、脳を開く必要はありません。

女王が何を食べるとどんな子が生まれるか。その仕組みは作中で描かれている(→ キメラアントの女王は餌を5倍にして王を作った)。ただし、念そのものが摂食交配で子へ渡ると明言された場面はありません。生まれつきの念がどこから来たのかは、作中で説明されないまま置かれています。

東ゴルトーで、奪う相手が要らなくなった

蟻の念が最後にどうなったかを見ると、この2つの経路の意味がはっきりする。

東ゴルトーで行われた選別は、国民を集めて念を込めた拳で殴るものだった。ラモットに起きたことを、国ぐるみで再現している。大半は死に、生き残った者が念に目覚める。そして王が求めていたのは、念に目覚めた側のほうでした(→ 東ゴルトーで蟻が新しく作ったものは2つだけ)。

生き残りはシャウアプフの繭に包まれ、念を持つキメラアントとして作り変えられた。王の食事にもなり、兵にもなる立場です。実際に繭になっていたのは5000体ほどで、計画ではその10倍が見込まれていた。

ここで人間が果たす役目が変わる。知識を出す相手としては、もう必要とされていない。系統も水見式も、蟻の側がすでに持っている。人間に求められているのは、殴られて生き残る材料としての体だけになりました。

力は人間から取り続け、知識は蟻の内側で回る。東ゴルトーは、その形が完成しかけた場所でした。

キメラアントの念に、人間以外の入り口はない

入り口が2つに分かれていることには、狙いがあると俺は見ている。蟻が強くなる手順が、そのまま人間の被害と同じものになる。

もし蟻の中に、人間と無関係に念を配れる存在が最初からいたなら、話は変わっていた。教わって強くなる過程は、人間を襲わなくても成立します。放っておけば強くなるだけの相手なら、協会が総力で潰しに行く理由は弱くなる。

蟻には、その道が渡されていません。初めのうちは、力を得るには誰かを殴るしかなく、知識を得るには誰かの頭を開くしかなかった。強くなる動作が、そのまま人を害する動作でもある。

のちにシャウアプフは、仲間へ能力を配れるようになります。ヂートゥはそこから能力を授かり、失ったあとにもう一度もらいに行った。ただし、その体系もポックルから抜いたものの上に乗っています。蟻の側に師匠役が生まれても、出どころは動いていない。

発――一人ひとりの能力のほうは、蟻も自分で作っている。ザザンは配下を蟻に変える能力を持っていた(→ ザザンの念能力はなぜ自分に向いたのか)。ただし、それは人間から受け取った枠の中での話だ。枠そのものを作った蟻はいません。

討伐が急がれた理由も、ここに重なります。知識が蟻の内側で回り始めた時点で、人間側の技術は流出し終えた。あとは数を増やすだけで軍隊が作れる(→ キメラアント討伐隊が6人だったのは出し惜しみではない)。間に合うかどうかは、蟻が自給できるようになる前に叩けるかで決まっていたことになります。

パーム=シベリアの例は、その怖さを逆から見せます。人間の念能力者がそのまま蟻に作り変えられ、元の能力を持ったまま新しい能力を得た。人間の側で育った力が、そっくり蟻の戦力になっている。

まとめ|キメラアントの念はどこから来たのか

  • 蟻の念は、オーラを出す力と念の体系の知識で入り口が分かれている。渡した相手も時期も別
  • 力はラモットがゴンとキルアの攻撃で手に入れ、そこから蟻が蟻を殴る形で群れへ広がった
  • 知識はネフェルピトーがポックルの脳から聞き出したもの。系統と水見式が中心だった
  • 王と護衛軍は生まれつきオーラを使えた例外。ただし体系の知識までは持っていなかったと読める
  • 東ゴルトーの選別で、知識は蟻の内側で回るようになった。人間に残された役目は素材だけ
  • シャウアプフは仲間へ能力を配れるようになるが、その体系もポックルから抜いたものの上にある

蟻の入り口が人間側にしかないのは、手抜きではありません。入り口を人間に固定したから、この種は強くなるほど討伐の対象になっていくと俺は考えています。

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