ビヨンドとネテロが暗黒大陸に求めたもの|父は禁じ、子は取りに行った

同じ大陸を前にして、父と子が求めたものは正反対でした。ネテロは自分がどこまで通用するかを知りたがり、ビヨンドは大陸の中身を運び出したがっている。

二人とも暗黒大陸までは行っています。ただし父は入口で引き返し、子は目的の品まで手にした。

分かれ目は、人間の世界へ何を運び込んだか、渡航に対してどんな立場を取ったか、力を何に向けたか。この3点だ。

※暗黒大陸編・王位継承戦編の展開に触れます(単行本既刊分)。

ネテロとビヨンドが向き合った暗黒大陸は人類最大の禁忌

暗黒大陸は、人類が住む世界の外側に広がる領域。人が進出しようとするたび大きな災いが起きた、と古文書や遺跡に残っている。それを受けて200年以上前、V5(近代5大陸)が不可侵条約を結びました。

以来、渡航は人類最大の禁忌として扱われている。五大厄災のように、人間の世界へ入り込めば滅亡級の被害を出す生物や現象が知られているためです。

ビヨンドは、ネテロの息子を名乗って現れた男。ネテロの遺言映像でも息子と呼ばれています。ただ、血縁を裏づける決定的な描写はまだ出ていない。現在はカキン国王から暗黒大陸探検隊の総責任者に任命された立場にある。

ネテロとビヨンドは、どこまで行き何を持ち帰ったか

基準 アイザック=ネテロ ビヨンド
大陸のどこまで行ったか 入口で引き返した 目的の品まで手にした
人間の世界へ運び込んだもの 土産話 枯らしたメタリオンとゾバエ病
渡航への立場 帰ってから協会の禁忌に定めた 条約が届かない国を使って出た
力を向けた先 自分の鍛錬 人と組織と国

どこまで行ったかは、距離の話にとどまる。二人の行動を分けたのは残る3つだ。運び込んだもの、渡航への立場、力を向けた先。ここを順に見ていきます。

ネテロとビヨンドが人間の世界へ運び込んだもの

若いころのネテロは、お忍びで暗黒大陸へ向かっています。同行したのは、仲間のジグ=ゾルディックとリンネ=オードブル。国を代表した調査ではない。記録にも残らない個人の遠出でした。

そこで見たのは、常識では説明のつかない巨大な生物たち。ネテロはそれ以上進まず、引き返しています。本人はのちに、あの場所をこう表現しました。「ワシ等でさえ扉を開けただけで敷居もまたがずに踵を返したお化け屋敷」。

品として何かを持ち帰った描写はありません。ただし手ぶらだったわけでもない。ネテロは警告のつもりで土産話を持ち帰りました。ところがその話がかえってハンターたちを大陸へ向かわせ、犠牲を増やしたとされています。

ビヨンドの側は、実物を運び込んでいる。

約50年前、ビヨンドはV5の一国クカンユ王国の探検隊に専門家として同行し、暗黒大陸へ渡りました。目当てはメタリオンという品。実際に手に入れたものの、枯らしてしまいます。

さらに悪いのはそのあとだ。ビヨンドは父ネテロの忠告を無視して、誰も通っていないルートへ進んだ。そこで人間の世界へ持ち込んでしまったのが、ゾバエ病でした。

過去の遠征はどれも同じ形をしている。ベゲロセは無尽石、サヘルタは万病に効く香草、オチマはニトロ米、ミンボは三原水を狙って人を出した。品を取りに行き、代わりに厄災を連れて帰る。五大厄災が人間側に知られているのは、この失敗が積み上がった結果です。

父が運び込んだのは話だけ。子は品と病を運び込んだ。同じ大陸から戻った二人なのに、世界に置いていったものの重さはまるで違います。

ネテロは渡航を禁じ、ビヨンドは禁の外へ出た

自分の土産話が人を呼んでしまったあと、ネテロは制度で手を打ちます。

V5と協議して、暗黒大陸への渡航をハンター協会の禁忌に定めた。息子を名乗るビヨンドには、自分が死ぬまで再挑戦を許可しないという枷をかけています。自分が開けた扉に、自分で鍵をかけた形です。

ビヨンドのやり方は逆でした。ネテロの死で枷が外れた瞬間、国家ごと動かした。

専門家を集めた暗黒大陸探検隊を組み、カキン帝国を後ろ盾に付ける。カキンは約30年前の革命で国名も体制も変えた。不可侵条約の更新は、うやむやになっていました。条約が届かない国から出れば、禁を破らずに渡航できる。

V5はこの動きを止めきれなかった。カキンを迎えてV6とし、持ち帰るリターンの6等分を条件に公認します。ハンター協会の監視を付けて送り出す形だ。

禁が効かない場所まで、枠組みごと動かしたわけです。父がこっそり行って黙って帰り、あとから禁じたのとは、まるで違うやり方だ。王位継承戦が船の中で進んでいるのも、この渡航に乗るための席取りだからです。

力を自分に向けたネテロ、人と国に向けたビヨンド

3つめの差が、二人の求めたものをそのまま表していると俺は見ています。

ネテロが力を向けた先は自分でした。感謝の正拳突きを1日1万回。自分の体ひとつを削り続ける修行をやり抜いた人です(→ 感謝の正拳突きの検証)。

渡航と山ごもりのどちらが先だったかは作中で明示されていません。それでも、大陸で届かないと分かった男が最後に鍛えたのは自分の拳だった。

ネテロにとって、暗黒大陸は自分の限界を測る相手だった。測り終えれば用が済む。持ち帰る発想が出てこないのは、欲しかったものが自分の中にあったからだ。

ビヨンドにとって、暗黒大陸は取りに行く先です。約50年前も、いまブラックホエール号で進んでいる遠征も、目的は運び出すことにある。そのために動かしてきたのは自分の肉体ではなく、人と組織と国でした。

同じ血筋とされる二人が、正反対の力の使い方をしている。ここに冨樫の書き分けを感じる。父は自分を強くする方向へ、子は世界を動かす方向へ向かった。どちらも「越える」ための手段だけれど、越える対象が違う。

ビヨンドという名は、英語で「〜を越えて」を指す言葉です。父を越えるという意味にも読めるし、父が敷居をまたがずに引き返した線を越える側だ、とも読める。

ジンが暗黒大陸に向かう理由は、この2つとまた違う。求めているのは目的地ではなく道中そのものでした(→ ジンの目的)。同じ大陸に、3通りの向き合い方がある。

回収されていない謎はまだ多い。ビヨンドの本当の狙いも確定していません(→ 未回収の伏線)。それでも現時点の描写は、父と子を正反対の向きに置いています。

まとめ|ビヨンドとネテロが暗黒大陸に求めたもの

  • ネテロは入口で引き返し、帰ってから渡航をハンター協会の禁忌に定めた。ビヨンドには自分が死ぬまで再挑戦を許可しないと枷をかけている
  • ネテロが持ち帰ったのは品ではなく土産話。その話がかえってハンターを大陸へ向かわせ、犠牲を増やしたとされる
  • ビヨンドは約50年前にクカンユ王国の探検隊へ同行し、メタリオンを枯らしたうえでゾバエ病を持ち帰った
  • ネテロの死後、ビヨンドは条約の更新がうやむやなカキン帝国を使い、禁を破らずに渡航を成立させた。V5は止めきれずV6として公認した
  • 運び込んだものの差が、そのまま求めたものの差になっている。父は自分の到達点を、子は大陸の中身を欲しがった

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