ヨークシン編でゴンたちの資金を作ったのは、念能力ではありません。ゼパイルの骨董の目利きだ。
職業が物語に効くとき、効いているのは職業名ではありません。その仕事でしか身につかない技能のほうです。念とは関係のないところで積み上げたものが、場面を動かしている。
いっぽうで、職業名だけが先に立ち、その仕事をしている場面が出てこない人物もいる。置かれ方の違いを4人で確かめます。
※ヨークシン編・キメラアント編・会長選挙編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
職業がはっきり描かれた4人を比べる
見るのは、職業名と、その職業での場面が両方出てくる人物です。ハンターの肩書きはここでは扱わない(→ ハンターの種類は数えられない)。センリツのように、音楽が仕事でもライセンスを持つ人は外した。プロハンターだからです。
| 人物 | 職業 | その仕事の場面 |
|---|---|---|
| ゼパイル | 骨董の目利き | 骨董の値打ちを見抜く |
| コムギ | 軍儀のプロ棋士 | 王と軍儀を指し続ける |
| レオリオ | 医大生 | 治療の場面は描かれない |
| ライト=ノストラード | マフィアの組長 | 組を動かす場面は描かれない |
技能が場面に出てくる側と、出てこない側できれいに分かれる。
ゼパイル|目利きがヨークシンの資金を作った
ヨークシン編のゼパイルは、資料では元贋作作家の自称鑑定士とされます。正式な資格を持つ鑑定士ではない。288期のハンター試験に落ちているので、ハンターでもありません。
それでも、この人物が持ち込んだのは目利きの技能そのものだ。骨董の値打ちを見抜き、ゴンたちの資金作りを担当した(→ ゼパイルの鑑定が見抜いたのは本物)。さらに偽物の手口に通じていたことが、後の脱出の糸口になったとされます。
この場面を動かしているのは念ではない。ただ、彼が作った贋作にオーラがこもっていたことは示唆されています。本人が念を知らないまま、骨董を作り続けるうちに身についたものらしい。職業の技能と念が、ここでは同じ方向を向いている。
コムギ|軍儀の腕だけで王の前に立った
コムギが念を使っていると分かる場面はありません。本編で念能力者だと明言されてもいない。持っているのは軍儀の腕だけです。
24巻 No.249 で、本人がこう言います。「ワダすはプロの棋士を目指した日から 軍儀で負けたらば自ら死ぬと決めております」。プロとして指してきた年月が、この一言に入っている。そしてメルエムは、この相手に一度も勝てなかった(→ コムギはメルエムと何が違ったか)。
生態系の頂点に立つ存在として設計された王が、盤の上では届かない。しかも王は、選別までの余興のつもりだった軍儀にのめり込んでいきます。盤の上の指し方が、王の行動を変えている。念能力でも武器でもない技能が、キメラアント編の終盤を動かした。
レオリオとライト|職業名が先に立つ側
残る2人は、職業が示されているのに、その仕事をしている場面が出てこない。レオリオはプロハンターでもありますが、もう1つの職業は医大生のまま。会長選挙の時点で免許は取っていません。人を治す場面も描かれていない(→ レオリオはまだ大金を手にしていない)。
ただ、医学で身につけたものが別の形で出てくる場面はあります。ジンはレオリオの念能力を、触診と打診を試行錯誤した結果ではないかと見ている(→ レオリオの念能力は”医者の念”)。仕事の技能が、能力の側へ回った形だ。
ライト=ノストラードのほうがもっとはっきりしている。マフィアの組長という職業を持ちながら、組を支えていたのは娘ネオンの念能力だった(→ 天使の自動筆記は的中率100%?)。
もともとは片田舎の一組長で、のし上がった理由は娘の占いが当たること。だから能力を奪われた時点で、組は半ば壊滅状態に陥ります。本人も精神のバランスを崩し、ノイローゼのような状態になったとされる(→ ノストラード組は念能力1つで回っていた)。
組長という職業名は最後まで残った。先になくなったのは中身のほうです。
冨樫は職業に何を担わせているのか
4人を見ると、職業は2通りの使われ方をしていると読めます。
1つは、念の外にいる人物を物語の中心へ運ぶ道。ゼパイルもコムギも、念を使う場面が描かれない側だ。それでも技能があるので、念能力者だらけの場面に立てる。2人がいなければ、ヨークシン編の資金もキメラアント編の終盤も別の形になっていたと思います。
もう1つは、その人物が何を持っていないかを示す道。レオリオの医大生という職業名が指すのは、まだ届いていない場所。ライトの組長のほうは、自分の力で得たものではないことを示す。
同じ「職業」でも、置かれた向きが正反対だ。技能の側に中身があると、その人物は前に出る。職業名の側にしか中身がないと、足りないもののほうが見えてきます。
念の系統は生まれつきで決まりますが、仕事の技能はそうではありません。後から積み上げられるものだけが、念の世界の場面に割り込んでいる。念を持たない人物の残り方は、他者との接点が決めていた(→ ハンターハンターの一般人)。職業の側から見ると、決めているのは自分で積んだ技能のほうになります。
まとめ|ハンターハンターで職業はどう使われているか
- 今回の4人で、仕事の場面が出てくるのはゼパイルとコムギ。出てこないのはレオリオとライトだった
- ゼパイルは骨董の目利きで資金作りを担当し、偽物の手口の知識が後の場面につながったとされる
- コムギは軍儀のプロ棋士として王と指し続け、盤の上の指し方が王の行動を変えた
- レオリオはプロハンターだが、もう1つの職業は医大生のまま。治療の場面は描かれていない
- ライト=ノストラードは組長でありながら、組を支えていたのは娘ネオンの念能力だった
職業が物語に効いているのは、職業名の側ではありません。その仕事でしか身につかない技能の側です。
念は生まれつきの系統に縛られるのに、技能のほうは後から積める。そこがこの作品の面白いところだと俺は思う。
関連記事:
- ゼパイルの鑑定が見抜いたのは本物 — 目利きが何を見抜いたか
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- ハンターハンターの一般人 — 念を持たない側の残り方
- ノストラード組は念能力1つで回っていた — 職業名だけが残った組織
- ハンターの種類は数えられない — ハンター側の肩書きの話

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