キルアはゴンを治しに行き、ゴンはカイトを助けに行き、クラピカは捕らわれた2人を取り戻しに動いた。この3人は、向かう前に準備を重ねている点までよく似ています。
決定的に違うのが1つ。助ける相手が今どうなっているか、その見立てが合っていたかどうかです。
※ヨークシン編・キメラアント編・会長選挙編・王位継承戦編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
助けに行った3人は、向かう前の用意までよく似ている
3人とも、走り出す前に段取りを踏んでいる。
キルアはアルカを家から連れ出す前に、ナニカの力の条件を父シルバに説明できるところまで把握していた。ゴンはNGLをいったん離れ、カイトを助けるための特訓に入った。クラピカは幻影旅団を追う過程で、団長クロロの身柄を先に押さえている。
段取りの重さで言えば、いちばん重いのはゴンです。特訓のあとには、モラウから討伐隊への参加を認められている。王宮ではピトーから「コムギの治療が終わったらカイトを治す」という言葉まで引き出した。
手段、同行の許可、相手から引き出した言葉。そろえられるものは全部そろえています。
にもかかわらず、3人の中でゴンだけが間に合っていません。
ナニカがゴンを治すまでに、キルアが確かめたこと
ここで比べる基準は3つ。向かう前に用意したもの、助ける相手の状態をどう見ていたか、そして結果です。
| 助けに行った側 | 向かう前に用意したもの | 相手の状態の見立て | 結果 |
|---|---|---|---|
| キルア → ゴン | ナニカの交換のルールと、ツボネの爪での実演 | 合っていた | 間に合った |
| ゴン → カイト | 特訓と討伐隊への参加、ピトーから引き出した言葉 | 外れていた | 間に合っていない |
| クラピカ → ゴンとキルア | 先に押さえていたクロロの身柄 | 合っていた | 取り戻せた |
用意したものの重さで並べ直すと、結果の順番とそろいません。厚く支度をした側から順に届いた、という形になっていない。
そろうのは、見立てと結果のほう。読みが合っていた2人は間に合い、外れていた1人だけが間に合っていない。
キルアが確かめた中身を見ると、この基準の重さが分かります。31巻のNo.322で、キルアは父シルバにナニカの力を説明している。お願いを1つ聞けば体が白くなり、代わりにおねだりを3つ聞けば黒くなる。この交換の形を、本人が把握したうえで話しています(→ ナニカ(アルカ)のおねだりのルール)。
次にしたのが実演。ツボネの爪をナニカに治させ、その結果をイルミに見せている。代償なしでゴンを治せると判断したのはイルミのほうで、病院行きの許可はそこから出た(→ キルアはイルミの針が抜けても逃げる)。
つまりキルアは、ゴンがまだ治せる状態にあることを、他人の体で先に実証している。到着したあと、ゴンの体は完治しました。ただし戻ったのは肉体だけで、念は戻っていません(→ ゴンの念能力は本当に消えた?)。
見立てが合っていたのは、クラピカも同じだった
クラピカの場合、用意したものの出どころが他の2人と違います。
クロロの身柄は、ゴンとキルアを取り戻すために押さえたものではない。幻影旅団を追う過程で先に手に入れていたものが、あとから交換の材料として効いている。鎖のほうも同じで、旅団に届かせるために組まれた能力です(→ クラピカの念能力は“二段構え”)。
それでもクラピカの見立ては外れていません。2人が生きて旅団の手にあるという前提で交渉を組み立て、その前提は最後まで崩れなかった。だから交換が成立した。
払ったものは大きい。クロロを手放し、絶対時間の反動で寝込むほどの消耗を負っています。失ったのは自分の目的のほうで、助ける相手のほうではない。
用意の出どころは3人でばらばらです。自分で作った条件、鍛え直した体、別の目的のために積んだもの。
それでも間に合った2人は、どちらも相手の状態を読み違えていない。順序が逆のクラピカまで同じ側に並びます。効いているのが用意ではなく見立てだからだと俺は受け取っている。
ゴンだけが、確かめようのないものを確かめずに走っていた
ゴンの側にあったのは、確認ではなく確信でした。カイトは生きている、という前提のまま準備を積んでいる。
古城でピトーが明かしたのは、カイトは自分と闘ったあの時点ですでに死んでいる、という一言です。治せる相手でもなければ、戻せる相手でもなかった(→ カイトの転生は同じ人物なのか)。
ゴンが特訓を始めるより前に、助ける先そのものが無くなっていた。間に合わなかったというより、最初から間に合う余地がなかった。
だからゴンが払ったものも、他の2人とは性質が違う。右腕を失い、そこはのちにナニカの治療で戻った。戻らなかったのは念のほう。助ける側が、助ける相手の代わりに削られている。
見立てを確かめる手立ては、ゴンの側になかった。カイトの体を操っていたピトーのほかに、生死を答えられる相手はいません。そのピトーが本当のことを口にしたのは、治療の約束を果たす段になってからだった。確かめようのないものを確かめないまま走った結果が、あの右腕と念です。
用意が無くても間に合った場面がある
助けに向かった場面は、この3つに限りません。
王宮でキルアは、決めておいた役割分担を外れてイカルゴのほうへ動いた。段取りからははみ出した行動ですが、結果としては届いています。逆にイカルゴは、失血死寸前のキルアを闇医者のもとへ運んだ(→ イカルゴの念能力は死体を借りる)。どちらも用意はゼロで、相手の状態だけは目の前にあった。
反対の例が王位継承戦にあります。センリツとキーニは、カチョウとフウゲツを船から逃がす計画を組んでいた。センリツの演奏で場を作り、キーニが2人を救命艇まで送り届けている。それでもカチョウは、救命艇で船を離れようとした直後に落命する(→ 2人セゾンと秘密の扉)。
用意の有無と結果は、どちらの方向にも結びつかない。段取りの量は、間に合うかどうかを決めていません。
冨樫が書き分けているのは、走る速さでも準備の厚さでもない。向かう側が相手の何を見ていたか。ここまで挙げたどの場面でも、結果とそろうのはそこだけです。ゴンの特訓が無駄に見えないのも、外れていたのが努力の量ではなく見立てのほうだからだ。
まとめ|ハンターハンターの救出場面で間に合ったのは誰か
- 助けに向かった3つの場面で結果を分けていたのは、用意の量ではなく助ける相手の状態をどう見ていたかだった
- キルアはナニカの交換の条件を父に説明し、ツボネの爪で実演してから病院へ向かった。ゴンの体は完治し、念は戻っていない
- クラピカが持っていたクロロの身柄は、旅団を追う過程で先に押さえたもの。それでも2人が生きて握られているという前提は外れていなかった
- ゴンは特訓も討伐隊への参加もピトーの言葉も得たうえで、カイトが生きているという前提だけを外していた
- 王宮のキルアとイカルゴは用意ゼロで間に合い、救命艇まで用意したカチョウの脱出は間に合っていない
3人のうちゴンだけが、助ける相手をすでに失った状態で走っていました。支度の厚さが結果につながらない場面を、この作品は別々の編で何度も置いている。助けに行く側が何を見ていたか。そこを読むと、救出の場面は違って見えてくる。
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- ナニカ(アルカ)のおねだりのルール — キルアが向かう前に確かめた交換の条件
- カイトの転生は同じ人物なのか — 戻せなかった相手のその後
- ゴンの念能力は本当に消えた? — 治されたあとに戻らなかったもの
- キルアはイルミの針が抜けても逃げる — 病院行きの許可が出るまでの経緯
- クラピカの念能力は“二段構え” — 交換の材料になった鎖の中身

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