ハンターハンターの自己犠牲|誰かに渡した体や記憶は、本人に返らない

体や記憶を誰かに渡した4人は、全員がその場面のあとに死んでいる。カイト、プフとユピー、パクノダです。

相手を倒すために自分を差し出したのは、ゴンとネテロ。ゴンは2回とも生きて戻り、死んだのはネテロだけでした。分かれ目は、差し出したものの行き先にある。他人の体や頭へ渡ったか、自分の一撃に使ったかです。

※ヨークシン編のパクノダ、グリードアイランド編のゲンスルー戦、キメラアント編の結末に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

ハンターハンターの自己犠牲で、差し出したものはどこへ行ったか

カイトはネフェルピトーの前に残って時間を稼ぎ、ゴンとキルアを逃がした。2人の身代わりのような形で、その場で敗れています。

プフは体の6/7を、ユピーは液体に変えた体を、瀕死のメルエムに差し出した。王はその細胞で命をつなぎ、2体はのちに同じ毒で死んでいます。

パクノダは、団長の置かれた状況とクラピカの情報を、記憶弾で団員に撃ち込んだ。情報を漏らさないというクラピカの掟を破り、心臓を握り潰されて死にました。

ゴンの1回目はゲンスルー戦です。両腕を爆破される覚悟で片腕だけを守り、残りのオーラを足に回してアゴを蹴り上げた。とどめは、そのあとのグー。2回目はピトー戦で、制約と誓約で将来の力を前借りし、ゴンさんの姿でピトーを倒しています。

ネテロはメルエムとの戦いの最後に自分の心臓を突いた。心臓が止まると、体内に仕込んだ貧者の薔薇が爆発する仕掛けです。

渡した4人と倒しにいった2人を、4つの基準で比べる

基準 渡す側(カイト/プフとユピー/パクノダ) 倒す側(ゴン2回/ネテロ)
差し出したもの 体・命・記憶 両腕(爆破を覚悟)・将来の力・命
受け取った相手 ゴンとキルア/王/旅団の団員 ゴンは誰もいない/ネテロは王(毒)
差し出したものの行き先 相手の体や頭の中で働く 自分の一撃に使う
差し出したあとの本人 4人とも死んでいる ゴンは生きて戻り、ネテロは死亡

差し出したものの重さには、両側で差がない。どちらも体か命を出しています。

差が出たのは、受け取った相手と行き先です。渡す側には、差し出したものを受け取った人物が必ずいる。逃げる時間はゴンとキルアへ、細胞は王へ、記憶は団員へ渡った。

倒す側のゴンには、受け取った人物がいません。両腕を捨てて作った隙も、前借りした力も、ゴン自身の一撃に使われた。差し出したぶんは、ゴンの手の中で使い切られています。

渡したものは、受け取った側の中で働き続ける

渡す側の4人は、差し出した時点で役目が済んでいる。カイトが残ったのは、ゴンとキルアが逃げ切るためでした。2人が逃げたあと、カイトがその場から帰る理由は残っていない。

プフとユピーの体は、王の体の一部になって働いている。返してもらうには、王から細胞を抜くしかない。パクノダの場合はもっとはっきりしていて、記憶を撃ち込むことがそのまま掟を破ることでした。渡すことと死ぬことが、1つの行動になっている。

俺がこの4人で気になったのは、渡したものが受け取った側で生き続けている点です。逃げ延びたゴンとキルア、命をつないだ王、記憶を持った団員。その先の物語は、受け取った側が持って進んでいく。

倒しにいったゴンは、一撃のあとも本人がそこにいた

ゴンは、差し出したあともその場に立っていた。一撃を打つのはゴン本人で、本人がいなければ差し出したぶんは働かないからです。

ただ、ゴンが自分の力で元に戻ったわけではない。ゲンスルー戦で爆破された腕は、「大天使の息吹」というカードで治っています。ピトー戦のあとは死にかけていて、キルアが妹のアルカ(ナニカ)に頼んで治した。腕を失った人物の戻り方はハンターハンターで腕を失った人物が詳しい。

体は戻っても、念はそのあと使えなくなり、今も戻っていません(→ ゴンの念能力は本当に消えた?)。それでも、治してもらえる体がその場に残っていた。渡す側の4人とは、そこが違います。

カイトとネテロは、2つの側にきれいに収まらない

渡す側のカイトは、形を変えて戻ってきた。女王が死んだあと、胎内に残っていた子にカイトの自我が宿っています。赤毛の少女として生まれ直した経緯は、カイトの転生とは何だったのかへ。

ただ、これはカイトが差し出した場面の外で起きたことです。体も性別も変わり、念能力のクレイジースロットも描かれていない。ピトーの前で時間を稼いだハンターのカイトは、そこで死んでいます。

倒す側のネテロは、ただ1人戻らなかった。王は薔薇の爆発では死なず、最後に王を死なせたのは体に入った毒でした。

ネテロの命は起爆の合図に使われています。そのうえで、自分の体に仕込んでいた毒を、相手の体へ送り込んでいる。倒す側にいながら、渡す側と同じく、差し出したものに受け取り手がいました。兵器としての薔薇の話は貧者の薔薇は安いから手放せないに。

コルトは、死にかけた女王を助けてほしいと人間に頼んだ。頼んだだけで、自分の体や命は差し出しておらず、生き残っています。

コムギは毒がうつると知って王のそばに残った。王を生かすためではなく、最後まで軍儀の相手をするためでした。

クラピカも旅団を捕らえる鎖に命を懸けている。その命は誓約を破ったときにだけ取られる担保で、まだ取られていない。

渡したものを取り返せないから、渡した本人も帰ってこない

渡す側の4人が戻らないのは、覚悟が重かったからではない。ゴンもネテロも、同じくらい重いものを出しています。

違うのは、渡したものが相手の中で使われ続けることです。プフとユピーの細胞は王の体になり、パクノダの記憶は団員の頭に移った。取り返すには、受け取った側から抜き取るしかない。渡した時点で、本人の手元には帰るための材料が残っていません。

自己犠牲の場面のあと、物語の続きを持っているのは受け取った側です。俺がこの6人を比べて行き着いたのは、そこでした。渡した本人が戻らないぶん、渡したものが受け取った側で物語を進めていく。

まとめ|ハンターハンターの自己犠牲で、差し出したものの行き先

  • 自分を差し出した場面は、他人へ渡した側と、自分の一撃に使った側に分かれる
  • 差し出したものの重さは両側で変わらない。差が出たのは、受け取った相手がいるかどうか
  • 渡したものは受け取った側の体や頭で働き続けるので、取り返せない
  • ゴンは生きて残ったが、体を治したのはカードとアルカ(ナニカ)で、念は戻っていない
  • カイトの転生は差し出した場面の外の出来事。ネテロは倒す側でも、毒を王の体へ送り込んでいた

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