カイトはジンの弟子|ゴンへの渡し方が正反対になった理由

ゴンをハンターへ押し出した人物は2人います。父のジンと、くじら島に現れたカイトだ。

2人が向かわせた先は同じでした。それでも、ジンは何も持たせずに探させ、カイトは自分から島へ来て手渡した。この差から見えてくるのは、カイトがジンの代わりに最初の手順を担っていた、という筋道です。

足を運んだか、何を持たせたか、ジン探しへ向かわせたか、そばにいたか。この4つで比べる。

※くじら島の場面(第1話)・キメラアント編・会長選挙編の展開に触れます(単行本既刊分)。

ジンとカイトは師弟|押さえておく2点

カイトは幼いころスラム街でジンに出会い、ハンターとして生きる技術を教わったとされています。カイトはジンの弟子だ。

その先に置かれたのが課題でした。ジンはカイトに「自分を探し当てる」という最終試験を出している。カイトがくじら島に立ち寄ったのも、その旅の途中だった。

そこでキツネグマに襲われていた幼いゴンを助け、父が生きていることを伝えます。ゴンがハンターを目指した起点は、この場面だ。

ジンがカイトを育て、カイトがゴンを押し出した。渡す側と渡される側が順に移っている。

ジンとカイトを4つの基準で比較する

ゴンに対して2人が何をしたのか、同じ基準で見ていく。

基準 ジン カイト
ゴンのところへ足を運んだか 運んでいない 旅の途中に島へ来た
何を持たせたか 条件つきの箱だけ 父が生きているという事実
ジン探しへ向かわせたか 向かわせた 向かわせた
そばにいたか いない 調査隊で隣に立った

一致しているのは、ジン探しへ向かわせたことだけ。2人ともゴンを同じ方向へ押しています。

開きが大きいのは、足を運んだかと、そばにいたか。距離の取り方がまるで違う。

島まで来たカイトと、来なかったジン

ジンは赤ん坊のゴンを連れて島に帰り、そのまま姿を消した。ゴンの養育権は、ミトが裁判でジンから奪い取ったものです。それでも、ゴンが大きくなってからジンが島へ来ることはなかった。

ゴンが父の生存を知ったのも、ジン本人からではない。通りかかったカイトの口からだ。父からの言葉が届くのは、残されたものを開けるまで先送りになりました。

カイトのほうは逆だった。試験の途中に立ち寄った先で子どもが襲われていて、そこで助けた。会いに来たというより、通りかかって手を出した形です。

ただ、そのあとの行動は偶然では説明できない。カイトはゴンに父の話をし、ハンターという職業の中身まで伝えた。助けて立ち去るだけなら、この会話は要らなかった。

カイトが渡した事実と、ジンが残した箱

ジンがゴンに残したのは、条件つきで開く箱ひとつです。中身を取り出すには、念を覚えたうえでハンターライセンスを持っている必要がある。開ける鍵は、ゴンが自分で取ってくるものだった。

渡し方そのものが試験になっている。父がどこにいるかも、何をしているかも、最初の時点では入っていません。

カイトが渡したのは、もっと手前のものだ。ジンが生きていて、優秀なハンターとして働いている。このひとつの事実だけ。

技術ではないし、居場所でもない。それでもゴンにとっては出発点になりました。探す相手がいると分かって初めて、探すという行動が成立するからです。

ここが2人の分かれ目だと俺は見ています。ジンは課題だけを置き、カイトは課題に取りかかるための材料を渡した。

カイトがゴンのそばにいた時間

キメラアント編で、カイトはゴンとキルアを自分の調査に連れて行きます。危険な土地に、素人ではない扱いで同行させた。

ここでのカイトは、教える立場というより一緒に立つ立場だった。指示を出し、判断を見せ、危ないときは前に出る。

念そのものはウイングとビスケから教わっていて、カイトは念の師ではありません。それでも、ゴンはここで生物調査というハンター本来の仕事に加わった。チームの一員として動いたのは、これが初めてでした。

ジンにはこの時間がない。ゴンと本当に向き合ったのは、長い旅の果てにたどり着いたあとだ。それまでは、姿を見せないことを選び続けています。

距離の近さは、失ったときの重さと同じだけありました。カイトが倒れたあと、ゴンは自分を責めて止まらなくなる。少なくともカイトの場合は、近くにいたことがそのまま退場につながっている(→ カイトの念能力は弱い?)。

ジンの渡し方から見える、抜けていた手順

ここまでの差を「冷たい父と優しい師」で片づけると読み違えます。ジンはカイトには渡しているからだ。

カイトが受け取ったのは、ハンターとして生きる技術でした。そのうえで「自分を探せ」という課題が出されている。渡してから探させる、という順番です。

同じ順番をゴンに当てはめると、最初の手順がない。父が生きているという事実すら渡されないまま、探す課題だけが置かれていました。

そこを引き受けたのがカイトだ。父の生存を伝え、のちに調査の現場へ連れて行った。技術を教え直したわけではない。ジンが渡さなかった材料を、その息子に手渡している。

弟子としての恩返しとも読める。ジンが意図して空けた場所だった、とも読める。作中でジンが説明していない以上、どちらかに決められるものではありません。

はっきりしているのは、ゴンが2人から別々のものを受け取ったこと。カイトからは動き出す理由を、ジンからは走り続ける課題を受け取っています。片方だけでは、ゴンはたぶん島を出ていない(→ ジンの目的は”探すこと”そのもの)。

3つの差は、結局どれだけ手を出したかの違いに集まります。カイトは手を出し、ジンは出さなかった。どちらが正しいのかは作中で明かされていない。

冨樫が書いているのは、渡し方の違いのほうだと感じます。その違いがそのまま、受け取る側の動き方を変える。

まとめ|ジンとカイトの渡し方の違い

  • カイトはジンの弟子で、「自分を探せ」という課題を受けていた。くじら島に立ち寄ったのはその旅の途中
  • ゴンに対して2人が一致しているのは「ジン探しへ向かわせた」ことだけ。足を運んだか・何を持たせたか・そばにいたかはすべて違う
  • ジンが残したのは条件つきの箱だけ。開ける鍵はゴン自身の念とハンターライセンスで、渡し方そのものが試験になっている
  • カイトが渡したのは技術でも居場所でもなく、父が生きているという事実。探す相手がいると分かって初めて、探す行動が成立した
  • カイトには技術を渡してから探させ、ゴンには事実すら渡していない。この差を見ると、カイトが最初の手順を父の代わりに担った形に読める。埋めたのは父の生存という事実と調査の現場で、念や技術を教えたわけではない

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