ヒソカの初登場で、相手は反撃していません。すれ違いざまにぶつかった受験生の、両腕が肘から先だけ消える。
強いとされる人物の初登場を4人ぶん比べると、見せ方が2つに割れます。本人が力をふるう側と、指示を出すだけの側。分けているのは強さの差ではありません。
そしてどちらの型でも、対等な勝負は起きていない。実力が測られる場面は、そろって後に回されています。
※ハンター試験編・ヨークシン編・天空闘技場編・キメラアント編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
力で位置を取った2人|ヒソカとメルエムの初登場
1巻 No.005「第1次試験開始①」。ハンター試験の会場に、受験番号44番として立っているのがヒソカの初登場です。起きたのは、ぶつかってきた受験番号58番の両腕を肘から先だけ消すこと。相手は身構える間もない(→ ハンター試験の合格率は約58万分の1)。
同じ話には、トンパがゴンたちにヒソカの危険さを吹き込む会話も置かれている。周りの警告と、本人の実演。4人の中で、この2つが重なるのはヒソカだけ。
なお、カードで受験生を次々に殺すのは一次試験の湿原(No.009「霧の中の攻防」)。こちらは初登場より後になる。
メルエムの初登場は21巻。キメラアントの女王の腹を突き破って生まれる場面だ。
生まれた直後、女王に駆け寄った師団長ペギーを尻尾の一振りで殺す。続けて、尻尾を拭こうとしたもう1体も消し飛ばした。師団長はキメラアントの中では上位にあたるのに、反応する時間すらない(→ キメラアントの階級は何で決まったのか)。
2人に共通するのは、その場で誰にも指示を出していないこと。ヒソカは受験者の1人にすぎず、メルエムは生まれたばかり。立場ではなく、力のほうで位置を取っています。
ネテロとクロロの初登場は、力ではなく立場が先に出る
ネテロの初登場は、2巻 No.012「会長参上」。二次試験でメンチが出したスシの課題で、受験者が全員落ちた現場です。そこへ飛行船から降りてきて、試験のやり直しを指示する(→ ハンター試験の試験官に基準はない)。
このときネテロは誰とも戦っていません。示されているのは会長としての裁定で、力ではない。ゴンとキルアにボールを取ってみろと持ちかけるのは、この次の話です。しかも右手と左足しか使わないので、勝負として成立していない(→ ハンターハンターのインフレはキメラアント編で変わった)。
クロロがはじめて姿を見せるのは、ヨークシン編の8巻。幻影旅団の全員が集まり、その中心で地下競売のお宝を丸ごといただくと指令を下します(→ 幻影旅団の掟は内向き、流星街は外向き)。団長として全員を動かす関係が先に描かれ、本人が何をできるかは分からないまま。ここでも勝負はありません。
2人とも、初登場の場面で人を動かしている。そして動かせるから、力を見せなくて済んでいます。
4人の初登場を2つの基準で仕分ける
| 人物 | 初登場の巻 | 本人が力をふるうか | その場で指示を出すか |
|---|---|---|---|
| ヒソカ | 1巻 | ふるう | 出さない |
| メルエム | 21巻 | ふるう | 出さない |
| ネテロ | 2巻 | ふるわない | 出す |
| クロロ | 8巻 | ふるわない | 出す |
2つの列は、きれいに裏返しになっています。力をふるった2人は誰にも指示を出さず、指示を出した2人は力をふるわない。編も時期もばらばらの4人で、この対応が崩れていません。
見せ方を分けたのは、その場で人を動かせたかどうか
差が出た理由は、強さではなさそうです。メルエムはオーラの量では生まれた時点から桁違いで、一方のヒソカは初登場の時点ではまだ受験者の1人。それでも2人は同じ側に入っています。
分かれ目にあるのは、初登場の場面でその人物が人を動かす位置にいたかどうか。ネテロには試験の進行を決める権限があり、クロロには従う旅団員がいる。動かせる相手が目の前にいるので、強さを証明する必要がない。むしろ動かしてみせるほうが、その人物が何者かを速く伝える。
ヒソカとメルエムには、その関係がありません。ヒソカは肩書きのない受験者、メルエムは生まれたてで、まだ誰も従えていない。位置を取るために残っている手段は、力だけです。
冨樫は同じ「強い人物の初登場」を、立場のある側と無い側で書き分けているのではないか。俺にはそう見えます。
どちらの型でも、強さは測られていない
見せ方は割れているのに、共通している点が1つあります。4人とも対等な勝負をしていない。
力をふるった2人では、相手が反応できないまま終わる。指示を出した2人には、そもそも戦う相手がいない。どちらの型でも、その人物がどれくらい強いのかは分からないままです。
初登場で勝負をさせると、そこで強さに上限がつきます。勝った相手の強さが、そのまま本人の限界として読まれてしまうからだ。
実際、実力が測られる場面はずっと後に置かれています。ヒソカとクロロは天空闘技場での一戦(34巻)、ネテロとメルエムは互いの戦い(決着は28巻)。どれも初登場から何十巻も離れている。
読者が最初に受け取るのは、強さの量ではなく立場か格差のどちらか。強さの見当がつかないまま、その人物が次に出てくるのを待つことになります。
まとめ|ハンターハンターの初登場シーンはどう分かれるか
- ヒソカとメルエムは初登場で本人が力をふるう。ヒソカは受験生の両腕を消し、メルエムは師団長を一撃で殺す
- ネテロとクロロは力をふるわない。ネテロは試験のやり直しを指示し、クロロは旅団に指令を下す
- 力をふるった2人は指示を出さず、指示を出した2人は力をふるわない。2つの列は裏返しになっている
- 分けているのは強さではなく、その場で人を動かす位置にいたかどうか
- ネテロの初登場は2巻 No.012「会長参上」で、二次試験の混乱を収めに降りてくる場面。戦いは1つも起きていない
見せ方は2通りでも、4人とも対等な勝負はしていません。だから初登場の時点では、強さの上限が決まらない。
最初のコマで何も測らせなかったことが、4人を長く「強い人物」のままにしたのだと思う。
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