格上を倒した戦いで効いたのは、力の上積みではありません。勝ち筋はどれも、戦いが始まる前から場にそろっていた。
分かれたのは、それがどこに置かれていたかです。自分の体の上か、戦う場所そのものか。
そうならなかった戦いも1つある。ハンター試験の最終試験、ゴンとハンゾーの試合だ。
※ハンター試験編・ヨークシン編・キメラアント編・グリードアイランド編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ハンゾーの試合だけ、勝った側が何も持ち込んでいない
最終試験のルールは「武器あり、反則なし、相手に『参った』と言わせる、相手を死なせたら即失格」。気絶させても終わりません。
ハンゾーはゴンの腕を折り、動けなくなるまで打ちのめした。それでもゴンは参ったと言わない。先に降りたのはハンゾーのほうだった(→ ハンゾーの念能力は本体を置いて出かける)。
ここでゴンが使ったのは、両者が最初から知っていたルールだけ。隠していた手も、持ち込んだ道具もない。
ハンゾー戦の決着は、相手に降りることを選ばせた勝ちです。このあと比べる3つは、相手を戦闘不能にして終わっている。決着のつき方が違うので、同じ表には乗りません。
なお、この試合に負けたハンゾーも287期の試験には合格しています。降りたのは1試合であって、資格ではない。
格上に勝った3つの戦いを同じ基準で比べる
格上に勝った戦いのうち、相手を戦闘不能にして決着したものを3つ取ります。見るのは、相手の立場、勝ち筋になったもの、そしてその置き場所です。
| 戦い | 相手の立場 | 勝ち筋になったもの | その置き場所 |
|---|---|---|---|
| クラピカ vs ウボォーギン | 幻影旅団の最強格 | 絶と隠で伏せておいた鎖 | クラピカ自身の体 |
| イカルゴ vs ブロヴーダ | キメラアントの師団長 | 催眠ガスと装甲車 | 王宮の建物 |
| ゴン vs ゲンスルー | 同盟を内側から壊滅させた爆弾使い | 落とし穴と横穴、カードに戻した大岩 | 戦場の地面 |
勝った側は3人とも、相手より弱いと作中で示されている。クラピカは旅団の一人に単身で当たった側。イカルゴは戦闘能力が高くないと書かれる側で、ゴンはゲンスルーに喉を潰された側です。
相手が勝ち筋を想定していなかった点も3つとも同じ。差が出たのは右端の列だけでした。
クラピカがウボォーギンに勝てた理由は、体に載せた鎖だった
クラピカの鎖は右手の5本の指から出る。ウボォーギンと向き合ったとき、見えていたのはそのうちの一部でした。
ウボォーギンは凝を怠り、見えている鎖以外に気づかないまま体を束縛される。凝をすればそのぶんのオーラが攻撃から減る——そう読む見方は資料の側にある。ただ、理由が作中で描かれたわけではありません。
クラピカがそう仕向けたのかどうかも、読みが分かれたままです。はっきりしているのは、ウボォーギンが自分から確かめなかったこと(→ ウボォーギンの念能力ビッグバンインパクト)。
この勝ち筋は、クラピカの体の上に載っていました。戦う前から相手の目の前にあって、ただ見えていなかっただけ。近づく必要も、探しに行く必要もない場所にある。
念の側から同じ戦いを見ると、能力の条件をどこに置いたかの話になります(→ 念能力の弱点は発動条件に集まる)。その外側にあるのが、相手が何を想定していなかったかだ。
イカルゴとゴンは、戦う場所そのものを勝ち筋にした
残る2つは、勝ち筋が自分の体の外にあります。
イカルゴはブロヴーダに正面から勝てない。実際にしたのは、王宮の脱出口を装甲車でふさぎ、侵入者を眠らせる催眠ガスを充満させることでした。使ったのは王宮にあったもので、イカルゴの念能力ではない。
ブロヴーダが追っていたのは、死体を操るイカルゴのほうです(→ イカルゴの念能力は死体を借りる)。相手の能力だけを見ている間に、建物の側から詰められている。
ゴンは地面を掘るところから始めています。大きな落とし穴と、その中に身を隠す横穴。準備はキルアと一緒に進め、戦いそのものは1対1で行われた。
ゲンスルーが前提にしていたのは、ゴンの喉が潰れていることでした。声が出なければ「ゲイン」と唱えられず、カードは実体に戻らない。ゴンが使ったのは、バインダーから出したカードが一定時間で勝手に実体へ戻るというルールです(→ ゲンスルーの念能力は手の内を全部明かす)。穴の大きさに合わせた大岩が落ち、逃げ場が消えた。
置き場所が割れた理由は、勝った側が何を持っていたかで説明が付きます。クラピカは自分で鎖を作れる。作れる側は、勝ち筋を自分の体に載せて持ち歩ける。
イカルゴとゴンにはそれがありません。イカルゴの能力は死体を借りるもので、借りた体で格上を正面から押し切った場面は描かれていない。ゴンの決め手は拳を叩き込むグー1発。そのうえ、カードを実体化させる「ゲイン」の一言までゲンスルーに塞がれている。
能力で押せない側は、場所を使うしかなかった。だから2人とも、戦いの前に地面や建物を作り変えている。
3つを比べて残るのは、格上との差が戦っている最中には埋まっていないという点です。冨樫は埋めるための用意を、全部戦いの外側に置いている。俺はそう受け取っています。
まとめ|ハンターハンターで格上に勝った戦いに共通するもの
- 格上を倒した3つの戦いは、勝ち筋が戦いの始まる前から場にあった点でそろう
- ウボォーギンが想定していなかったのは、絶と隠で伏せられていた鎖。凝を怠ったまま向き合っている
- イカルゴが使ったのは念能力ではなく、王宮にあった催眠ガスと装甲車だった
- ゴンは落とし穴と横穴を先に掘り、カードが自分で実体に戻るルールを使って大岩を落とした
- 置き場所が割れたのは、自分で勝ち筋を作れる側と、場所を使うしかない側に分かれていたから
ハンゾーに勝った試合だけは、持ち込みがゼロで決着している。ただしあれは相手に降りることを選ばせた勝ちで、倒した勝ちではない。倒して終わった3つに限れば、番狂わせは戦いが始まる前にほぼ形がついている。
関連記事:
- 念能力の弱点は発動条件に集まる — 同じ戦いを念の内側から見た記事
- ウボォーギンの念能力ビッグバンインパクト — 想定から漏らした側の地力
- イカルゴの念能力は死体を借りる — 設備を使った側の能力の中身
- ゲンスルーの念能力は手の内を全部明かす — 自分から条件を渡す能力の設計
- クラピカの念能力は“二段構え” — 5本の鎖がそれぞれ何をする鎖か

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