第14王子ワブルの部屋で、誰が手を下したのか分かっている殺しは2件。ビンセントとサイールドのものです。
2人とも護衛としてこの部屋に入り、2人とも部屋の人間を殺し、2人とも拘束されて部屋から消えた。それでも終わり方は違います。サイールドは生きて引き渡され、ビンセントは何も話さないまま死んだ。
比べる基準は4つ。入った立場、殺した相手、自分の意図があったか、部屋からの出方です。
※王位継承戦編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ビンセントとサイールドが1014号室に入るまで
ワブルは第14王子。カキンで私設兵を持てるのは上位の王子まで。下位のワブル陣営に自前の兵はいない。そこへ外からハンターが入りました。
サイールドはその1人。協会が政府や企業からの依頼を専門に請け負う協専ハンターだ。パリストンを通じて船に乗り、クラピカ・ビル・カートンとともにワブルの護衛に付いています。ワブル側が雇った側です(→ クラピカの護衛5人は狙った陣営に入れなかった)。
ビンセントは違う。第1王子ベンジャミン=ホイコーロの私設兵です。ベンジャミンの兵は国王正規軍に属する。その兵を「護衛と監視」の名目で、下位の王子の部屋へ送れる。ビンセントはその枠で1014号室に来ました。
念能力は「虚空拳(エアブロウ)」。送り主はワブル側ではありません。
※この部屋では出航初日にも王妃所属兵5人が死んでいますが、手を下した人物は39巻の範囲では分かっていません。
ビンセントとサイールドを4つの基準で比べる
| 基準 | ビンセント | サイールド |
|---|---|---|
| 入った立場 | 第1王子ベンジャミンの私設兵 | ワブル側が雇った協専ハンター |
| 殺した相手 | オイトの付き人サンドラ | 王妃所属兵2人と同僚のカートン |
| 自分の意図 | あった | なかった(守護霊獣に操られていた) |
| 部屋からの出方 | 拘束され、服毒して自決 | 拘束され、カキンの兵に引き渡された |
前半2つは、送り主と被害の中身の違い。ここまでは「外から来た護衛が部屋で人を殺した」という点で並ぶ。
大きいのは後半2つ。
自分の意図があったかどうかで、終わり方が変わった
サイールドが3人を殺したのは、モモゼの守護霊獣に操られていたからです。出航初日のこと。殺された中には同僚のカートンもいた。そのあと拘束され、遺体を回収に来たカキンの兵に引き渡されています(→ モモゼの護衛は事件の前に弟へ移されていた)。
ビンセントの側は順番が逆でした。まずワブル暗殺計画があるという話を作り、それを口実にオイトの付き人サンドラを刺す。ビンセントが部屋に来た回、No.363「念獣」の出来事です。
続く No.364「思惑」では、部屋の人間を脅している。王子の暗殺に協力すれば命は助ける、という持ちかけです。話が通らないと見ると、ビルへ虚空拳を撃とうとする。だがクラピカの奪う人差し指の鎖(スチールチェーン)にオーラを奪われて不発。
拘束されたビンセントは、刺したことは防衛権の行使だと言い張ります。クラピカが自白を取る前に、奥歯の毒を飲んで自決した。
サイールドには自分の意図がなく、生きたまま引き渡された。ビンセントには意図があり、それを話す前に自分で死んだ。この差は能力の差ではありません。誰に送られたかの差です。
雇われた側は、操られてしまえば話せることが残る。送り込まれた側は、話せば送り主に届いてしまう。俺には、この違いが2人を分けたように思えます。
ビンセントが最後まで認めなかったもの
ビンセントが認めなかったのは、暗殺に来たことと、その指示を出した相手です。刺したこと自体は口にしている。防衛権の行使だと言い張った。
つまり、部屋の人間が取り損ねたのは「誰に言われて来たのか」の部分でした。クラピカが自白を取る能力を使う前に、ビンセントは毒を飲んでいる。
この部屋で起きたことを数えてみる。ビンセントがしたのは、暗殺計画の作り話・サンドラの刺殺・部屋の人間への脅し・ビルへの襲撃・自決。護衛や監視にあたるものは入っていません。
もっとも、ビンセント1人の動きから言えるのはここまでです。同じ枠で送られた兵が全員こう動いたとは限らない。ただ、ベンジャミンと私設兵長のバルサミルコは、ビンセントの死後すぐにバビマイナを送り込んでいます。人は1人減っても、部屋に人を入れる権利のほうは残りました。
まとめ|2人を分けたのは意図の有無だった
- 結末を分けたのは能力ではなく、自分の意図があったかどうか。意図のない側は生きて引き渡され、意図のある側は話す前に死んだ
- 入った立場が違う。サイールドはワブル側が雇った協専ハンター、ビンセントは第1王子ベンジャミンの私設兵
- サイールドはモモゼの守護霊獣に操られて3人を殺し、ビンセントは暗殺計画の話を作ってサンドラを刺した
- ビンセントが最後まで認めなかったのは、暗殺に来たことと指示を出した相手。自白を取られる前に服毒している
- 部屋でビンセントがしたのは、作り話・刺殺・脅し・襲撃・自決。護衛や監視にあたるものは入っていない
ビンセントは、自分の意図を持ち込んだぶんだけ、それを話せない立場になりました。送り込まれた側が黙るしかない構図が、そのまま部屋の外へ何も出さない仕組みになっている。
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