第5王子ツベッパが継承戦で出し続けているのは、勝つ手ではなく条件です。35巻ではツェリードニヒに上位3人の粛清を勧めた。39巻では、3陣営に絞られたら降りると提案している。
粛清と離脱。逆向きに見える2つを、同じ人物が時期を変えて出しています。この王子が何を決める役を負っているのか、場面ごとに見ていく。
※王位継承戦編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ツベッパが35巻でツェリードニヒに勧めた粛清
35巻 No.362 の場面だ。ツベッパはツェリードニヒに共闘を持ちかけます。
ツベッパが示した予測は、実質は上位5人のサバイバルになるというもの。そのうえで第1王子ベンジャミン・第2王子カミーラ・第3王子チョウライを粛清すべきだと述べました。
挙げた理由は強さではない。ベンジャミンは驕りが過ぎ、カミーラは貪りが過ぎ、チョウライは奢侈を尽くす。
3人とも、人としての振る舞いが選定の基準になっている。誰が強いかではなく、誰を残すかを決める話として持ちかけたことになります。
ツェリードニヒは頗る同感だと返し、2人はグラスを打ち合わせます。ただしその独白は「お前が生きてればな」だった。共闘そのものは成立していません。
継承戦の陣営がどう分かれているかは 王位継承戦の14王子は母の序列で読む にまとめました。
39巻のツベッパは、和平と離脱の側から条件を出している
船内での動きは、この持ちかけと向きが違って見える。
39巻 No.401 で動いたのは、ツベッパ陣営の私設兵ロンギ。ワブル陣営のクラピカに和平協定を持ちかけました。
条件は、妨害しない・攻撃しない・不利益になる行為をしない。破れば1週間の強制絶が科されます。
No.402 では、そのワブル陣営と組んでチョウライへ提案を出しています。最終的にチョウライ・ツベッパ・ワブルの3陣営まで絞られた場合、継承戦から離脱するという内容だ。No.403 ではクラピカを介して、チョウライ陣営との契約にも入っている。
35巻で粛清すべきだと名指しした相手に、この提案では王位を譲ることになります。チョウライ側がツベッパの同意に驚いたと描かれるのも、この落差が理由だ。
一貫していないように見える。ただ、どちらの場面でもツベッパがしているのは条件を出すことだった。誰を外し、誰を残し、どうなったら降りるか。決めているのはその線引きだけです。
私設兵の数だけを見ると、上位の王子と変わらない
ファンの解説では、ツベッパは武力をあまり持たない王子として説明されることがあります。ただ、数の上ではそう読めない。
ツベッパが船に乗せた私設兵は14人。ベンジャミン・チョウライ・ツェリードニヒが15人、カミーラが12人なので、ほぼ同じ規模です。
念能力者もいる。この和平協定を成り立たせているのは、ロンギの能力だ。破った側に強制絶を課す仕組みも、この能力が支えています。
ただし、数がそろっていれば互角というわけでもない。上位の王子は準協会員を枠外に上乗せでき、ベンジャミンの兵は練度で勝ります。
そのうえで、ツベッパ陣営について確認できるのはどれも交渉と分析の場面だ。自分から攻める動きは見当たりません。
王子本人が勝ちに動けないのは、継承戦の規定そのものによるものだ(→ 王位継承戦で王子は自分では戦えない)。
守護霊獣も、組む相手を決めないと発動しない
同じ形は守護霊獣にも見られる。
ツベッパの守護霊獣は変化系とされ、体内でさまざまな薬品を作り出せる。ただし発動には共同研究者が必要な共存型で、相手を決めないと能力そのものが動きません。
38巻では、クラピカがその相手になると決めています。
継承戦の守護霊獣は、はたらき方がばらばらだ。カミーラの守護霊獣は持ち主を一方的に守り、ハルケンブルグのものは周囲を巻き込む。ツェリードニヒのものは本人が制御できていません(→ ツェリードニヒの念能力が“反則級”な理由)。
そのなかでツベッパの守護霊獣は、組む相手を決めるまで発動しない側に置かれている。本人の動き方と、与えられた能力の条件がそろっているように見えます。
継承戦に、条件を出し直す王子が1人いる意味
3つの場面には共通点がある。ツベッパは継承戦の仕組みそのものを動かそうとしていない、と俺は見ています。
制度を壊そうともしない。かといって最初から降りているわけでもない。今の状況で誰と組み、どうなったら降りるか。そのつど決め直しているだけだ。
だから粛清の勧めと離脱の提案が並んでも、人物としては矛盾しない。前提が変われば、出す条件も変わると考えると筋が通ります。
同じ継承戦でも、オイトは最初から持たない側にいて、降りる道だけを探しています(→ オイト王妃は借り物だけで戦っている)。降り方しか選べない側と、降りる条件を自分で出せる側。この差が2人を分けている。
継承戦は最後の1人が残るまで続く制度だ。そこに条件を出し直す王子が1人いることで、勝ち残る以外の終わり方が選択肢として残り続けます。
チョウライへの提案が通れば、3人のうち2人は戦わずに降りることになる。冨樫がこの王子に用意したのは、その可能性を消さないための役割だったと考えると分かりやすい。
まとめ|35巻の粛清と39巻の離脱案は同じ構えから出ている
- 35巻 No.362 で、ツベッパはツェリードニヒに共闘を持ちかけた。粛清の対象はベンジャミン・カミーラ・チョウライ。理由は強さの順位ではない。人としての振る舞いだった
- その共闘は成立していない。ツェリードニヒは頗る同感と返しながら、独白では相手にしていなかった
- 39巻では和平協定を結び、3陣営まで絞られたら継承戦から離脱するという案をチョウライへ出している。粛清を説いた相手に王位を譲る側へ回った形だ
- 私設兵は14人で、上位の王子と数はほぼ変わらない。ただし準協会員の上乗せや練度の差は残る
- 守護霊獣も共同研究者を決めないと発動しない。本人の動き方と能力の条件がそろっている
ツベッパが継承戦で決め続けているのは、誰に勝つかではなく、どうなったら降りるかの線だ。
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