ミザイストムが密室裁判(クロスゲーム)で止めたチンピラ3人は、殴られていない。長く押さえ込まれてもいない。拘束は数秒で解けています。
倒す能力として見ると、割に合わない作りだ。渡しているのは奇襲で、手に入るのは相手が警告を破ったという事実のほうです。
犯罪ハンターの能力として見たときにだけ、この釣り合いは通ります。順に追いかけていく。
※会長選挙編と、その後の暗黒大陸編(37巻まで)の展開に触れます。
ミザイストムは戦う側のハンターではない
ミザイストム=ナナは十二支んの一員で、割り当てられた干支は丑。肩書きは二ツ星の犯罪ハンターで、弁護士であり民間警備会社の経営者でもあります。
十二支んの中では常識的な判断をする人物として描かれる。会長選挙では、パリストンが会長になるのを阻む側で動いていました(→ 会長選挙が9回続いた理由)。
その後の暗黒大陸編では情報班に入っている。戦って倒す役ではなく、調べて捕まえる役に置かれ続けている人物です。
二ツ星という等級も、育てた後輩が星を取ったときに与えられる位置。自分の強さで完結しない(→ 三ツ星ハンターの条件に強さは入っていない)。何を差し出して何を得ているかを見るなら、この立場から入るのが早い。
密室裁判が渡しているのは、奇襲そのもの
能力の中身は、3色のカードを相手に示して行動を制限するというもの。青が入廷、黄が拘束、赤が退席にあたります。
このうち拘束の黄には決まった手順がある。まず相手にそれ以上近づくなと伝え、警告だと宣言する。そのうえで黄色いカードの表を見せる。
相手がその警告を破って近づいてきたら、ミザイストムがカードを裏返す。そこで拘束が発動するという順番です。
念の戦いで奇襲がどれだけ効くかは、作中でも繰り返し描かれてきました。密室裁判はそれを最初から手放している。作中で拘束が出たのも、警告を見せて破られたあとだけでした。
渡しているのは、威力でも射程でもない。取り逃がさない確実さのほうです。
密室裁判が使われたのは、クラピカを勧誘に来た場面だけ
実際の使い方が描かれるのは、ミザイストムがクラピカを十二支んに勧誘しに来た場面(33巻)。
向かってきたノストラード組のチンピラ3人に、ミザイストムは警告を出します。3人がそれを破ったところで拘束が発動した。
このときの拘束は、格子状の檻に閉じ込める形でした。手足や首は動かせない。ただし話すことも目を動かすこともできる。
しかも檻は本人たちには見えていない。居合わせた念能力者が凝を使って、初めて見えている。
そしてミザイストムはすぐ解けると言い、実際すぐ解けました。3人が傷つけられる描写はありません。
倒す能力なら、この場面は失敗に見えます。数秒止めて、そのあと解放しているだけ。それでも目的は果たしている。近づいてくる相手を、殴らずに止めたのだから。
手に入るのは、相手が警告を破ったという事実
渡したものの代わりに何が残るのか。ここがこの能力の要だと考えています。
警告を出したのに、相手が動いた。この順番が成立した時点で、相手は言われたうえで従わなかったことになる。拘束という結果だけでなく、そこへ至る手続きが残ります。
黄色いカードは、警告に違反した相手であれば複数を同時に拘束できるとされる。1人ずつ組み伏せる能力ではない。その場で警告を破った者だけを、まとめて押さえる形だ。
拘束がすぐ解けるのも、それで説明がつく。長く押さえ込む必要はない。破ったという事実さえ取れれば、そこから先は捕らえる側の手順に移るからです。
奇襲を渡して、代わりに手続きを取っている。並べるとこうなります。
| 何を | 中身 |
|---|---|
| 渡しているもの | 奇襲 |
| 渡しているもの | 警告を宣言してカードを見せる手間 |
| 渡しているもの | 押さえ込める時間の短さ |
| 手に入るもの | 相手が警告を破ったという事実 |
| 手に入るもの | 違反した者だけをまとめて押さえられること |
同じ「先に明かす」でも、受け取っているものは人によって違います。ゲンスルーは能力の中身も解除の手順も相手に伝え、そのぶん逃げ道のない即死条件を手に入れた(→ ゲンスルーの念能力は手の内を全部明かす)。明かす代償で威力を買った形だ。
ミザイストムは威力を買っていない。警告を出したぶん、相手には従うという選択肢が生まれる。逃がす余地をわざわざ残しています。
密室裁判はハンター協会が置かれた立場に合っている
この釣り合いは、ミザイストム個人の好みというより、協会の立場に合っていると読める。
ハンター協会は国家の上に立つ組織ではない。個人に付いた特権で動ける範囲があるだけで、力ずくで押し通せる立場ではありません(→ ハンター協会は国家の上にいない)。
その中で犯罪を扱うなら、押さえた相手を後から説明できないと困る。倒しただけでは、なぜその相手だったのかが残らない。密室裁判は、警告と違反という順番でそこを埋めています。
同じ協会の中で正反対の位置にいるのがパリストンです。あちらは一度も戦わずに勝ってきた人物で、勝負の場所を選挙や交渉のほうへ移していく(→ パリストンの念能力が描かれない設計)。手続きで押さえる側と、手続きの外へ出ていく側。選挙編でこの2人が噛み合わなかったのは、勝ちに行く場所が違ったからだと思う。
暗黒大陸編でミザイストムが情報班に回されたのも、同じ流れに見えます。船の中で起きたことを調べて説明する役だ(→ ブラックホエール号の殺人を捜査しているのはハンター協会)。
この能力で押さえられない相手もいる
弱点もはっきりしている。作中で拘束が出たのは、警告を破られたときだけ。押さえ込める時間も短い。
作中で描かれたのは、チンピラ3人を数秒止めた場面だけです。格上を制圧した場面は見当たらない。冨樫はこの能力を、戦って勝つための道具としては置いていないように見える。
だから強さの議論に持ち込むと、密室裁判は評価しにくい。倒せるかどうかで測る枠に、はじめから入っていないからだ。測るなら「逃がさず押さえて、あとで説明できるか」のほうになります。
念系統も原作では明かされていない。犯罪ハンターとしての使い方だけが描かれて、戦闘力の目安になる情報は出てこない。この伏せ方も、役割のほうを見せる作りに合っています(→ ハンターの種類は数えられない)。
まとめ|密室裁判が渡しているものと手に入れているもの
- 渡しているのは奇襲。警告を宣言してカードを見せてからでないと、作中で拘束は出ていない
- 押さえ込める時間も渡している。拘束はすぐ解け、3人が傷つけられる描写もない
- 手に入るのは、相手が警告を破ったという事実。押さえた理由が後から説明できる形で残る
- 違反した者であれば複数を同時に拘束できるので、その場を丸ごと止める使い方になる
- 力ずくで押し通せないハンター協会の立場と、この釣り合いは噛み合っている
密室裁判は、強い相手を倒すための能力ではありません。警告を破った事実ごと相手を押さえるための能力です。
戦って勝つ形には作られていない。そのぶん、ミザイストムがどんな仕事をする人物なのかが能力にそのまま出ている。倒せるかで測ると、この人物は見えなくなる。
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