「友達になるのにだって資格なんていらない!!」を、ゴンはキルアに言っていない。言った相手は、キルアの兄のイルミです。
キルアの「友達だもん」も、ゴンのいない戦いの中の言葉。2人が「友達」と言い切る場面は6つ。5つはイルミやビスケのような第三者に、残る1つはキルアの胸の内に向いていました。この6場面に限れば、相手本人に向けた「友達」は出てきません。
ゴンがキルア本人に向けた言葉は「会えてよかった」や「仲間」。「友達」は、2人の関係を外の誰かに示す言葉として冨樫が置いたのではないか。場面ごとに確かめます。
※ハンター試験編の終わり(5巻)から会長選挙編までの内容に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ゴンの「友達になるのに資格なんていらない」はイルミへの言葉
ゴンの「友達になるのにだって資格なんていらない!!」は、5巻 No.37 の台詞。最終試験が終わり、キルアは失格になって会場を去っていた。
その前の No.36 で、イルミはキルアに「お前に友達をつくる資格はない 必要もない」と告げていた。このときゴンは気を失っていて、その場にいません。No.37 のゴンの言葉は、兄弟に資格がいるのかと返したイルミとのやり取りの中で出たもの。No.36 の兄の言葉と、同じ「資格」の語が重なります。
ゴンはキルアのいない場所で、イルミに詰め寄ってこの言葉を言い切った。そのあと、キルアを連れ戻しにククルーマウンテンへ向かいます(→ ハンター試験の合格者7人が向かった先)。
ゾルディック家の前で、ゴンは「友達に会いに来ただけ」と言う
ククルーマウンテンでも、ゴンが「友達」と口にする相手はキルアではない。ゾルディック家の側の人たちです。
門の守衛として出てくるゼブロには、「友達に会いに来ただけなのに」試されるのはまっぴらだと言う。屋敷へ向かう道で止めに来た執事見習いのカナリアにも、同じ言葉を向けている(→ ゼブロ・シークアント・ミケ|試しの門の番人は門を開けた者とは戦わない)。
執事長のゴトーは、ゴンたちがキルアの友達としてふさわしいかを試した。使ったのは、コインがどちらの手にあるかを当てるゲームです(→ ゴトーの念能力はヒソカに避けさせている)。
キルアの「友達だもん」はゴンのいない戦いの中の言葉
キルアの「友達だもん、オレの大事な友達だもん」は、21巻 No.219 のラモット戦で出る。ゴンはこのときパームと出かけていて、戦いの場にはいません。
ラモットに追い込まれた中で、ゴンを守ると決める場面。声に出して誰かに伝える言葉というより、胸の内の言葉として読める。キルアがイルミの針を自分で抜くのも、この戦いでした(→ キルアはイルミの針が抜けても逃げる)。
キルアが「友達」を声に出す相手は、父のシルバです。会長選挙編で、キルアはシルバに「救える友達を放っておくのは裏切りじゃないの?」と返している。
ここでの友達はゴンのこと。形は問いかけでも、ゴンが友達であることは疑いのない前提として言い切られている。言葉を向けた先は、ゴン本人ではなく父親だった。
ハンターハンターでゴンとキルアが「友達」と言った相手は誰か
ここまでの場面に、ゴンがキルア本人に向けた言葉を足すと次のようになる。
| 場面 | 言った人 | 言葉を向けた相手 | 使った言葉 |
|---|---|---|---|
| 最終試験のあと(5巻) | ゴン | イルミ | 友達 |
| 試しの門の前(5巻) | ゴン | ゼブロ | 友達 |
| 屋敷へ向かう道(5巻) | ゴン | カナリア | 友達 |
| グリードアイランド編の終わり(18巻) | ゴン | ビスケ | 友達 |
| ラモット戦(21巻) | キルア | 胸の内(と読める) | 友達 |
| 会長選挙編 | キルア | シルバ | 友達 |
| グリードアイランドの最初の街(14巻) | ゴン | キルア | 会えてよかった |
| 世界樹の下の別れ(32巻) | ゴン | キルア | 仲間 |
14巻 No.131、グリードアイランドで最初に訪れた街。ゴンは「キルアと会えてオレ本当によかったよ!」と言う。キルアは口では「やめろよバカ、恥ずいだろ」とかわし、お前に会えて本当によかったと胸の内で返しています。
世界樹の下の別れでは、ゴンが「オレ達どこにいても仲間だから!!」とキルアに告げる(→ ゴンとキルアの別れは世界樹の下だった)。
ゴンが相手本人に向けた言葉は、どちらも「友達」ではない。キルアのほうは、本人を前にすると「会えてよかった」さえ声に出していません。
表に入れていない「友達」の台詞も2つあります。5巻 No.36 で、キルアはイルミに、ゴンと友達になりたいと答えている。5巻 No.42 の回想では、子どものキルアが執事見習いのカナリアに友達になってほしいと頼む。カナリアは使用人の立場を理由に断った。どちらも言い切る前の、願いの形の言葉です。
例外はビスケへの「最高の友達だ」|止める相手ではなく紹介する相手
6つのうち、ビスケの場面だけは相手の立場が違う。18巻、グリードアイランド編の終わり。ジンに会ったら何をするかとビスケに聞かれ、ゴンは「もちろんキルアを紹介するよ!『オレの最高の友達だ』って!!」と答えています。
ビスケはグリードアイランドで2人を鍛えた師匠。この場面のビスケは、2人の関係を試したり止めたりしているわけではありません。言葉の中身も、父のジンにキルアを紹介するという話です。
この場面があるので、「友達」は反対する相手に言い返すだけの言葉とは言えない。俺は、2人の関係を2人の外にいる誰かに示す言葉だと思う。量る人はイルミやゴトー、止める人はカナリア、紹介される人はジン。相手の立場が違っても、同じ形で向かっていると読めます。
冨樫が「友達」を相手本人以外に向けさせた理由
ゾルディック家の中には、キルアに友達がいることを認めない側がいた。イルミは「お前に友達をつくる資格はない」と言い、ゴトーは友達としてふさわしいかを試す。カナリアも、かつてキルアの頼みを断っている。
ただ、家の側がみな止めたわけではありません。シルバはキルアに、ゴンたちに会いたいかを聞き、会いたいと答えたキルアを送り出した。ゼブロもゴンたちに優しく接し、門を開けるまで鍛える手助けをしている。
それでも、ゴンの「友達」は門の前でも屋敷へ向かう道でも同じように出てくる。言葉が向かう先を決めているのは、相手が反対しているかどうかではない。相手が2人の外にいるかどうかです。
No.219 の胸の内の言葉も、同じ形で読める。ゴンのいない戦いの中で、キルアは自分に向けて、ゴンが何者なのかを言い切った。関係を示す相手が、キルア自身になった場面です。
2人が向き合うと、この言葉は出てこない。ゴンは「会えてよかった」「仲間」と言い、キルアは「会えてよかった」さえ胸の内にしまう。キルアは、友達をつくる資格はないと言われて育った人物。その友達づきあいを、冨樫は2人の告白ではなく、外の誰かに向けた言葉で見せたように読めます。
その組み方のおかげで、読者は2人の関係の名前を、イルミやビスケとのやり取りから知ることになる。「友達」が相手本人ではなく外へ向かうこと自体が、2人の近さの描き方だと俺は思います。
まとめ|ゴンとキルアの「友達」の台詞
- ゴンの「友達になるのにだって資格なんていらない!!」(5巻 No.37)は、キルアのいない場でイルミに向けた言葉
- キルアの「友達だもん」(21巻 No.219)は、ゴンのいないラモット戦の中の、胸の内の言葉として読める
- 「友達」と言い切る6つの場面に限れば、5つが第三者、1つが胸の内に向いていて、相手本人に向けたものはない
- ゴンがキルア本人に向けたのは「会えてよかった」と「仲間」。キルアの「会えてよかった」は胸の内の返事だった
- 「友達」は、量る人・止める人・紹介される人のように、2人の外にいる誰かへ関係を示す言葉だと読める
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