キキョウ=ゾルディックだけ条件を出さない|キルアの母の引き止め方

キルアの頭に刺さっていたイルミの針は抜けた。父シルバに立てた誓いも、守っているかぎりは邪魔にならない。

母キキョウの引き止めだけが、外し方の分からないまま残っています。

3人とも、キルアを家に置いておきたい側だ。それでもキルアの扱いに条件を付けているのは、シルバとイルミの2人。キキョウは条件を出していません。

※ハンター試験編・ゾルディック家編・キメラアント編・会長選挙編(アルカ編)に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

キキョウ=ゾルディックについて原作に出てくるもの

キキョウについて本編で確かめられることは多くない。シルバの妻で、5人の子の母。顔にはゴーグルのような機械のスコープを着けていて、素顔は描かれません。

念能力も技名も原作には出てこない。系統も本編では名指しされていません。ハンターズ・ガイドは操作系と紹介しているが、本編で確かめられる記述ではない。

つまり能力では比べられない。残るのは、この人が何をしたかだけだ。

キルアの選択に対する3人の動きを比較する

比べる基準は次の3つ。

基準 父シルバ 兄イルミ 母キキョウ
キルアが意に沿わない選択をしたときの扱い 誓いを1つ立てさせて自由にした 連れ戻して針で縛った 訪ねてきた友達を追い返した
その扱いに条件が付いているか 仲間を裏切るなという誓い1つ 暗殺者として仕上げるという狙い 見当たらない
キルアの側から外せるか 誓いを守れば通る 針を抜けば外れる 外す手順がない

1行目は3人とも違う。差の中身が出るのは3行目です。

シルバとイルミの引き止めには外し方がある

シルバはキルアに、仲間に会いたいかをもう一度たずねました。そのうえで自由にしている。付けた条件は1つだけ。仲間を裏切るな、という誓いです。

見返りを取らずに解放したわけではない。ただ、その誓いは守っているかぎり効いてきません。

そのあとシルバは、キキョウに向かってこう言っています。「いつか必ず戻ってくる あいつはオレの子だからな」。根拠を血のつながりに置いているので、今すぐ止める必要がない。

イルミのほうは放っておかなかった。ハンター試験の会場まで来て、キルアを連れ戻している。

頭に刺した針の中身は、勝ち目がないと判断した相手からはすぐ逃げろという命令でした。キルアが誰かのために危険を冒さないようにする措置と読めます。ただし針は物として刺さっているので、抜かれれば外れる(針が縛っていたものは → キルアはイルミの針が抜けても逃げる)。

2人とも、キルアの行動に線を引いている。片方は誓い、片方は針。線がある相手なら、守るか外すかで通れます。

キキョウの引き止めには、その条件が見当たらない

ゴンたちがキルアに会いに来たとき、キキョウは会わせまいとしました。執事見習いのカナリアが、キルア様を助けてあげてと口にした。その直後、キキョウはカナリアを一撃で気絶させている(執事たちの立場は → ゾルディック家の執事で一番自由に動いたのはカナリア)。

会わせると決めたのは、最後は父シルバだった。キキョウに決定権はない。それでも止めにかかっている。

キキョウは、キルアに顔を傷つけられた相手でもある。初登場の場面では顔に包帯を巻いていました。

そのキルアから冷たい視線を向けられたとき、キキョウは冷たい眼ができるようになったと受け止めます。のちにキルアがアルカへ、自分の母親を殺せと命じる場面もある。そこでもキキョウは、残酷なことを言えるようになったと言って成長を喜んでいる。

拒まれたことが、育った証拠に変わっている。拒絶が拒絶として届いていません。

届かないなら、条件の出しようがない。シルバは誓いという形で、イルミは針という形で、キルアの行動に線を引いた。キキョウにはその線がありません。

だから外す手順もない。守れば通る条件も、抜けば外れる仕掛けも、この母親は持っていないわけです。

冨樫が条件を出さない家族を1人だけ置いた理由

会長選挙のころ、キルアはアルカを連れ出そうとします。ここでも止めようとするのは、シルバ・イルミ・キキョウの3人。

それでもシルバは、話し合ったうえでキルアを行かせている。イルミは実力で止めようとし、危険がないと判断した時点で退いた。どちらも目的に沿った動き方です。

キキョウには、その両方と違う動き方しか残っていない。

俺は、冨樫がこの配置を意図したと考えています。家族の全員が条件で動いていたら、キルアの家出は交渉の話で終わる。条件を満たせば出られる家になってしまう。

実際、シルバの誓いは守られ、イルミの針は抜かれた。2人は乗り越えられる相手だった。子どもたちが家の外に持った居場所についてはゾルディック家の兄弟にまとめています。

キキョウだけが残る。乗り越える手順が用意されていないからだ。暗殺一家という設定の中で、この母親だけが仕組みの外側に置かれている。

そのぶん、キルアが家を出る選択に重さが出ている。制度から抜けるだけでは足りない。話の通じない相手を残して出ていくことになるからです。

まとめ|キキョウ=ゾルディックが担っている役割

  • シルバの引き止めに付いた条件は、仲間を裏切るなという誓い1つ。守っているかぎり効いてこない
  • イルミの引き止めは頭に刺した針で、こちらは抜かれた。外す手順があった
  • キキョウの引き止めには条件が見当たらず、外す手順も用意されていない
  • 顔を傷つけられ、冷たい視線を向けられても、キキョウはそれを成長として受け取っている
  • 念能力も系統も原作には出てこない。ハンターズ・ガイドでは操作系とされるが、本編で確かめられる記述ではない

この一家は、契約と依頼で動く家として描かれています。キキョウの言葉だけが、その仕事の言葉になっていない。

キルアが越えたのは家業ではありませんでした。話の通じる家族の引き止めは外れた。通じない家族のものだけが残っています。

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