師匠役が弟子に渡したもの|継がれたのは発ではなく手順だった

師匠役と呼べる人物は6人。渡されたのは纏からの順番、水見式、修行のメニュー、暗殺術、そして箱ひとつです。

6人とも、自分の発を相手に使わせてはいない。師匠役と弟子のあいだで能力そのものが渡った場面は、暗黒大陸編に1つだけ。そこで使われたのは借り物でした。

※天空闘技場編・グリードアイランド編・キメラアント編・暗黒大陸編の範囲に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

師匠役が弟子に渡したもの

師匠役 渡した相手 渡したもの
ウイング ゴン・キルア・ズシ 纏から順に踏ませる段取り
イズナビ クラピカ 水見式・制約と誓約・能力の枠の使い方
ビスケ ゴン・キルア 凝・堅・流・硬の反復と実戦
モラウ ナックル・シュート 本編では描かれていない
シルバ キルア 念より前の体と、家の技
ジン ゴン・カイト 条件

6人の発は、1つも相手側へ動いていません。動いたのは、相手が自分で繰り返せるものだけだ。

ウイングとビスケとイズナビは、渡し方が3つとも違う

ウイングがゴンとキルアに最初に教えたのは纏。そこから絶・練・発と順番を踏ませ、水見式で系統を見る(→ ウイングが最初に教えたのは纏)。渡しているのは段取りそのものです。

このとき系統が分かれる。ゴンは強化系、キルアは変化系。7巻 No.060「合格」の場面だ。ウイング自身も水見式で強化系と紹介されますが、これは資料の側の情報で、本人の発は原作に描かれません。

ビスケの渡し方は違う。グリードアイランドで課したのは、凝や堅を繰り返させ、実戦で使わせるメニューのほうです。魔法美容師(マジカルエステ)は他人に施す能力で、ゴンとキルアが使えるようになったわけではない。

イズナビがクラピカに渡したものは3つ数えられる。水見式、制約と誓約、そして能力の枠を1つ空けておけという助言(→ イズナビはクラピカを強くしたのか)。ここでもイズナビ本人の発は出てきません。

段取り・メニュー・助言。中身は3つとも違うのに、相手が自分で繰り返せる点だけがそろっている。

モラウと弟子は、別々の発を持っている

モラウがナックルとシュートの師匠であることは本編で分かる。ただし何をどう教えたかは描かれない。

はっきりしているのは、3人の発が別々だということ。モラウの紫煙拳(ディープパープル)を弟子が使う場面はありません(→ モラウの念能力は“戦場ごと作り替える”)。

ユピー戦では、モラウが先に出しておいた89体の煙人形を動かしてナックルを助けます。動かしているのはモラウのほうだ。自分の能力を相手に向けて使うことと、相手に渡すことは別の話です。

閉じた精孔(しょうこう)をウイングが外からの念でこじ開けたのも、能力を渡したことにはなりません。

ゾルディック家が渡したのは念より前の体

家の側はやり方が違う。キルアは幼いころから、高圧電流や毒への耐性を作られ、拷問に耐える体にされ、暗殺術を教え込まれた(→ ゾルディック家の暗殺依頼料は原作に出てこない)。シルバが渡したのは、念の段取りではありません。

念そのものは、家の外で開いている。キルアが念を知るのは、ゴンと天空闘技場へ行ってからです。それまで正体を教えられていなかった。家業を継がせる側が、いちばん基礎の部分を渡していません。

渡っているのは体と技で、発ではない。ここでも能力そのものは動いていません。

ジンが置いたのは条件だけ

ジンのやり方はもっと極端だ。ゴンに残したのは箱ひとつで、念の力とハンターライセンスの両方がないと開かない作り。手順は付いていません(→ ジンの目的は“探すこと”そのもの)。

弟子にあたるカイトにも、同じことをしている。ハンターになる最終試験として課したのが「ジンを探し当てる」こと(→ カイトの転生は同じ人物なのか)。会いに来させる条件を置いて、あとは動かない。

ジンの系統も発も、本編では明かされていません。渡しようがない、とも言える。

1か所だけ、能力そのものが相手に渡っている

師匠役と弟子のあいだで能力そのものが渡った場面が、暗黒大陸編に1つだけある。

クラピカが船内で開いた念講習です。ここでクラピカは、受講者の精孔を開かせるために能力そのものを使わせている(→ クラピカの念講習)。

ただし使われたのはクラピカの発ではありません。奪う人差し指の鎖(スチールチェーン)でビルから借りた球根(ハルジオン)のほうです(→ ビルの念能力・球根(ハルジオン))。

師匠役が自分の発を継がせた例にはならない。しかも能力を借りられたビル自身も、講習を受ける側にいる。

6人から外れたこの1例が、借り物で回っている。師弟のあいだでは発が本人から離れない、という見方の裏づけになります。

まとめ|師匠役が弟子に渡したものは何か

  • 師匠役6人のうち、自分の発を相手に継がせた例は1つも描かれていない
  • ウイングは纏からの段取り、ビスケは凝や堅の反復と実戦、イズナビは水見式と制約と誓約。渡し方は3つとも違う
  • モラウは教えた中身が描かれないが、紫煙拳を弟子が使う場面はない。煙人形を動かしているのはモラウ本人
  • ゾルディック家が渡したのは念より前の体と家の技で、キルアの念は家の外で開いた。ジンはゴンに箱、カイトに最終試験と、条件だけを置く
  • 師匠役と弟子のあいだで能力そのものが渡ったのはクラピカの念講習だけ。しかも使われたのはビルから借りた球根だった

段取りなら繰り返せるし、条件なら自分で満たしにいける。渡されたものは、どれも相手の側で動かせる形でした。

俺が面白いと思うのは、発だけが誰にも譲られていないことです。強さの土台を分けることはできても、自分の発は自分で作るしかない。師匠役が置いていくのは、そこへ行くまでの道だけでした。

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