キメラアント編と寄生獣|似ている点と、偶然の毒・選んだ毒

ライオンが序盤に出てくる。異種の側が人に近づいていく。そして最後は人の出したもので決着がつく。ハンターハンターのキメラアント編が寄生獣に似ていると言われるとき、挙がるのはこうした筋の重なりです。

※キメラアント編(18〜30巻)の結末と、『寄生獣』(岩明均)の結末に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

重なりそのものは、原作と照らしても食い違いません。違うのは決着に使われた毒の出どころ。寄生獣では偶然そこにあった毒が効き、キメラアント編では人間が王のために選んだ兵器が効きます。

ハンターハンターのキメラアント編は寄生獣に似ている、という通説

この通説は、2016年に書かれたブログや質問サイトに残っています。

ブログ「アニメごろごろ」には、毒の結末そのものを寄生獣から読み解く記事があります。両作品とも序盤にライオンが現れ、終盤に毒が使われる。護衛軍のモントゥトゥユピーは、寄生獣の後藤がモデルとしか思えない、と書いています。

Yahoo!知恵袋には、題名が「寄生獣とドラゴンボールの丸パクリですか?」という質問がある。挙げている対応は、たとえば次の3組です。

  • 女王の最期と、田村玲子の最期
  • メルエムの人への意識の変化と、田村玲子の変化
  • 薔薇の毒で倒れるメルエムと、人の出した毒で追い詰められる後藤

回答には「はい全く似てませんよ こじつけすぎです」という否定も並んでいます。

通説が挙げる点を、原作と照らす

知恵袋の質問で寄生獣が対応先に出てくる点は、数え方によって7〜8つ。そのうち、原作どうしで確かめやすいものを比べると次のようになります。

通説が挙げる点 キメラアント編 寄生獣 重なり方
ライオン ライオン型の蟻レオル パラサイト「A」と檻から逃げたライオン 序盤に出てくる
異種が人を知っていく メルエムがコムギと過ごして変わる 田村玲子が赤ん坊を育てて変わる 編をまたぐ変化
毒で倒れる最強の怪物 メルエム・ユピー・プフ 後藤 終盤の決着

レオルは、ハギャと名乗っていたころの蟻です。

1場面の似た絵を集めた、という話ではない。異種の側が人に近づき、最後は人の毒で倒れる。通説が言っているのは、筋の流れの重なりです。

では「パクリ」なのか。筋の重なりは確かにある。ただ、決着に使われる毒の出どころは、次に見るとおり2作品で違う作りになっています。

後藤を倒した毒は、偶然そこにあった

寄生獣の後藤戦で、新一は不法投棄されていた有毒な産業廃棄物のおかげで勝ちます。拾った鉄くずに、たまたま毒が付いていた。

新一は、毒だと知って使ってはいない。ブログの側も「偶然付着していた」と書いています。勝ったあと、新一は生き延びようとする後藤にとどめをためらい、最後に手を下す。

毒の出どころは人間の社会でも、それを後藤に向けた者はいません。

貧者の薔薇は、王を倒すために仕込まれた

キメラアント編の毒は、反対の作りです。

貧者の薔薇は、ネテロが自分の体に手術で仕込んでいました。心臓が止まると爆発する仕組み。王との戦いに敗れたネテロは、自分で心臓を止めて起爆させる(→ 貧者の薔薇)。

毒は最初から王に向けて用意されていた。偶然の入る余地がありません。

俺がこの違いで気になるのは、毒の向きだけではない点です。後藤の最期では、新一がとどめをためらう。貧者の薔薇では、仕込んだ時点で決着が決まっています。

ユピーの毒は、狙いの外で効いた

アニメごろごろは、ユピーも人の作った毒で倒れたと書きます。結果はそのとおりで、ユピーは毒で死んでいる(→ ユピーの念能力)。

ただ、ユピーは薔薇を向けられた相手ではありません。爆心地で王を探し回るうちに毒を浴びた。細胞を王に差し出して、体も小さくなっていた。王に向けた兵器の、巻き添えです。

後藤は戦いの最中にたまたま毒を受け、ユピーは別の相手に向けた毒で倒れた。同じ「毒で倒れる強敵」でも、毒との出会い方は違っています。

寄生獣に似ているのは筋で、毒を選んだのは人間の側

キメラアント編と寄生獣は、異種が人に近づき、最後は人の出した毒で倒れる筋が重なる。通説のこの部分は、原作と食い違いません。

違うのは、毒を誰が選んだか。寄生獣の毒は不法投棄の廃棄物で、偶然、後藤に効いた。キメラアント編の毒は、ネテロが王のために体に仕込んだ兵器でした。

冨樫は、同じ「人の毒」の筋に、人間が自分で選んだ兵器を置いた。王を倒したのは偶然の汚染ではなく、人の意思です。毒を選んだのが人間だという一点で、2作品の終わり方は分かれている。俺はそう思います。

まとめ|キメラアント編と寄生獣

  • ブログ「アニメごろごろ」はユピーと後藤やライオンを、知恵袋の質問は女王・メルエムと田村玲子などを、寄生獣と対応させている
  • 通説が言っているのは1場面の似た絵ではなく、異種が人に近づき、最後は人の毒で倒れる筋の重なりで、ここは原作とも食い違わない
  • 寄生獣の後藤に効いた毒は、拾った鉄くずに偶然付いていた不法投棄の廃棄物
  • キメラアント編の貧者の薔薇は、ネテロが王を倒すために体に仕込んだ兵器で、ユピーはその巻き添えで倒れた
  • 筋は重なっていても、毒が偶然か人の選んだものかで、2作品の決着の作りは違っている

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