第289期ハンター試験で問われたのは、受験者の腕ではなく、答えに嘘があるかどうか。
ミザイストムも認めた傭兵ミュヘルは、最後にクラピカの鎖で嘘を見抜かれて落ちた。一方で、事前に協会と話が通っていたツェリードニヒの兵は5人とも通っています。この試験は、協会が誰を内側に入れるかを決める場だった。そして冨樫は、その審査でも止められないものを、出航の前に見せている。俺はそう読んでいます。
※会長選挙編のあと、暗黒大陸への渡航の準備(33巻)の内容に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
第289期ハンター試験は暗黒大陸行きの選抜
ハンター協会は、V5(五大陸の大国)の依頼を受けて暗黒大陸へ向かうことになった。その渡航に加える人を選んだのが、Wikipedia などで第289期とされるハンター試験です。暗黒大陸の攻略に特化した選抜だった、と整理されている。
結果を伝えるのは、33巻 No.346 のパリストン。ビヨンドの側に立つパリストンは、ジンたちのいる場で「こちら側の刺客は全員不合格でした」と報告します。試験の中身が描かれるのは、その2話あと。
1期前の288期は、キルアが1日で合格した試験でした(→ ハンター試験288期)。289期は、それとはまるで違う作り。
289期の試験の段|腕前を試す段は描かれていない
ファンの資料の整理に沿って、試験の段を並べると次のとおり(段の切り分けは資料による)。
| 試験の段 | 中身 | 落ちたと描かれる受験者 |
|---|---|---|
| 第1次 | メンタルテスト | 名前の出る者はいない |
| 第2次 | サーモグラフィーと嘘発見器を使った質問 | 名前の出る者はいない |
| 最終 | 質疑応答(クラピカの鎖) | ミュヘル |
ビヨンド側の生化学者ユンデも、鎖より前の段で落ちたとされる。どの段かは資料で割れています。
メンタルテストは、協会の任務を邪魔する者を外すための偽のテストだった、と整理する資料もある。体力や戦闘の腕を試す段は、描かれた範囲に出てきません。腕が足りずに落ちた受験者も描かれていない。
287期は、走る・料理する・塔を降りると、試験官ごとに課題がばらばらでした(→ ハンター試験は強さを測る試験?)。
289期は、どの段も受験者の内側を確かめる方向を向いている。少なくとも後半の2段は、答えに嘘があるかを見る仕組みです。
ミュヘルが289期で落ちたのは最終試験の鎖
ミュヘルは傭兵たちのリーダー。ミザイストムも非常に優秀な人材と評価していた受験者です(→ ミザイストムの念能力)。サーモグラフィーと嘘発見器の段は、そのまま通った。
止まったのは最終試験。仕事は情報屋が仲介してきた、と答えたミュヘルを、クラピカは別室から鎖で見て嘘と見抜く。導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)は、相手の答えに嘘があるかを見分けられる鎖です(→ クラピカの念能力)。
機械では見抜けなかった嘘を、念の鎖が見抜いた。この試験でいちばん作りがはっきり出ているのは、ここだと俺は思います。ミュヘルの腕も経歴も、合否には関わっていない。
落ちたあとのミュヘルの部下は、パリストンが仕込んだ芝居としてジンに銃を向け、ジンに退けられる(→ ジンの念能力)。ビヨンドの側が試験に送った刺客は、全員そこで落ちたことになります。
ルズールスの兵は全員落ち、ツェリードニヒの兵は5人とも通った
落ちたのは、ビヨンドの側だけではない。第7王子ルズールスが送り込んだ兵も、全員落ちたと語られる。理由は作中で明かされず、ほかの王子が推し量るだけです。
一方で、第4王子ツェリードニヒの兵は、テータを含む5人全員が合格した。ツェリードニヒ自身は、これを「出来レースみたいなもん」と言っています。協会から事前に連携の要請が来たうえでの話だ。
ルズールスの兵の件から言えるのは、ビヨンドの側だけを狙った審査ではなかったこと。隠し事で落ちたと描かれているのは、ミュヘルだけ。
ツェリードニヒの兵の件から言えるのは、もう1つの通り方があったこと。事前に協会と話が通っていた陣営は、本人の言い分では、決まった結果として通っている。
整理すると、外から入ろうとした者は鎖で答えを問われ、協会と話の通った者は通った。289期の試験は、腕を測る場というより、協会が誰を内側に入れるかを決める場として描かれています。
289期の試験が止められなかったもの|通った兵と、鎖を握るクラピカ
ここからは、冨樫がこの試験を出航の前に置いた理由を考えます。
暗黒大陸へ向かう船には、カキンの王子たち・ビヨンド・ハンター協会が乗り込む。それぞれの狙いは違う(→ ハンター協会の派閥)。
289期の試験は、その船に乗る者を確かめる場面。ただ、確かめた結果として描かれるのは、止めた側と止められなかった側の両方でした。
1つ目は、ツェリードニヒの兵。王位継承戦を戦う王子の兵が、事前の連携で通り、渡航中だけの準協会員になっている(→ 王位継承戦の人数の上限)。鎖が問えるのは本人の答えの嘘で、本人が嘘と思っていない答えには反応しないとされます。
2つ目は、鎖を握るクラピカ自身。クラピカは、緋の眼を持つツェリードニヒに近づくために船に乗る(→ ツェリードニヒの念能力)。審査する側にも、協会の任務とは別の目的があります。
3つ目は、落ちたビヨンドの側。刺客は落ちても、パリストンの芝居には落ちたミュヘルの部下が加わっていた。協会の内側に入れなかった者も、船の周りで動き続けている。
嘘の審査を丁寧に描いたうえで、それでも船に持ち込まれる目的を3つ並べる。読者に見せているのは「誰も中身を確かめきれない船」。冨樫は289期の試験を、それを出航前に見せる場面として置いたと読めます。
第289期ハンター試験の鎖は嘘をついた受験者を止めたが、協会と話の通った陣営と、審査役自身の目的までは止めなかった。
まとめ|第289期ハンター試験が選んでいたもの
- 第289期は、暗黒大陸への渡航に加える人を選ぶハンター試験。描かれた段に、腕前を試す段は出てこない
- ミザイストムが認めた傭兵ミュヘルは、機械の段を通ったあと、クラピカの導く薬指の鎖で嘘を見抜かれて落ちた
- ルズールスの兵も全員落ち、ツェリードニヒの兵は事前の連携のうえで5人とも通った
- 試験は、外から来た者の嘘を問い、協会と話の通った者を通す場として描かれている
- 鎖を握るクラピカ自身にも別の目的があり、船には確かめきれない目的が持ち込まれる
関連記事:

