コルトとペギー|キメラアントの王の前と、王が去ったあとで動きが変わった師団長

王メルエムの前で尻尾を拭いたコルトが、王が去ると白旗を掲げて人間のもとへ飛んだ。同じ師団長の動きが、王の目が届くかどうかで変わっています。

冨樫は、生まれたての王の怖さを、戦わせる前に周りの師団長の動きで見せたのではないか。

王の誕生の場にいたペギー、カメ型の師団長、コルトの3体の場面から確かめます。

※キメラアント編(21巻の王の誕生と女王の最期)の内容に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

ペギーは王の誕生の場で、王の言葉を無視して女王に駆け寄った

ペギーはペンギン型の師団長で、キメラアント軍の参謀。いつも分厚い本を抱えている蟻です。師団長は約30匹いて、その数はコルトとペギーの口から語られる(→ キメラアントの階級)。

21巻、王が女王の腹を破って生まれる。ペギーは王の言葉を無視し、女王の容体を見に駆け寄った。王は尻尾の一振りで、ペギーの頭を消し飛ばします。

王は続けて、血で汚れた尻尾を拭けとコルトに命じた。横にいたカメ型の師団長が先に拭こうとして、同じように頭を消し飛ばされる。そのあとコルトが命じられたとおりに尻尾の汚れを落とし、その場を生き延びました(→ 初登場の場面)。

カメ型の師団長は、命じられていないのに尻尾を拭こうとした

ペギーの死だけを見ると、王の前で女王を気遣えば殺される、と読める。けれどカメ型の師団長は、女王を気遣っていません。王の尻尾を拭こうとしただけです。

違いは、命じられた相手かどうか。王が拭けと命じたのはコルトで、カメ型ではなかった。王の意に沿うつもりで動いても、命じられていない者が手を出せば殺されています。

3体を並べると、生き延びたのは、命じられた者が命じられたことだけをした場合に限られる。王の前で許された動きは、従うことよりさらに狭かったと分かります。

コルトは王が去ると、白旗を持って人間のもとへ向かった

王は護衛軍とともに屋上へ移る。残された女王は、腹を破られて死にかけていました。

護衛軍のピトーに女王の治療を頼む声も上がったが、王が生まれたら女王に用はない、と断られている(→ ピトーの念能力)。

ここでコルトが動いた。白旗を掲げて討伐隊のモラウとノヴのもとへ行き、降伏する代わりに女王を助けてほしいと申し出ます。モラウたちはコルトをネテロに会わせ、医療班が女王の治療に当たった。それでも内臓の傷が深く、女王は助からなかった(→ キメラアントの女王が払った代償)。

女王の胎内には、最後の子が残っていました。No.215 で、コルトは涙を流しながら誓います。

「この子はオレが守る、絶対・・・ッ、今度こそ必ず・・・!!」

その子はレイナと名付けられ、コルトに育てられる(→ キメラアントに残った人間の記憶)。

コルトの動きは、王の目が届くかどうかで分かれる

3体の動きを、王の目の前かどうかで分けると次のようになります。

場面 王の目の前か 動いた師団長 結果
女王に駆け寄る 前 ペギー 殺される
命じられずに尻尾を拭こうとする 前 カメ型 殺される
命じられて尻尾を拭く 前 コルト 生き延びる
白旗を持って人間のもとへ 離れている コルト 女王の治療を取りつける

コルトは王の前で女王を見捨てたわけではない。尻尾を拭いた同じ手で、そのあと白旗を掲げている。王に逆らえば死ぬ場所と、そうでない場所を見分けて動いた、と俺は読んでいます。

ペギーとカメ型は、その見分けがつく前に殺された。王の前で生き延びる道が、どれだけ細かったかが分かります。

冨樫はなぜ王の怖さを師団長の動きで見せたのか

王の強さは、戦いの場面でいくらでも描ける。それでも冨樫は、生まれた直後の王を、戦わせる前に師団長の中に置きました。

ペギーの死で、王の前で女王を気遣えば殺されると分かる。カメ型の死で、王の意に沿うつもりの動きでも、命じられていなければ殺されると分かる。王の怖さは、王が何をしたかより、周りの蟻が何をできなくなったかで伝わってきます。

そのうえで、王が去ったあとのコルトの白旗が続く。王の前の服従が忠誠ではなく、生き延びるための動きだったことが、ここで見えてくる。

冨樫は、生まれたての王の怖さを、王の目が届く範囲でだけ命令に従う蟻の姿で見せたのではないか。王の前で尻尾を拭き、王が去ると女王のために白旗を掲げたコルトは、その2つの場面をつなぐ役を担っていると読めます。

まとめ|キメラアントのコルトとペギー

  • 王の誕生の場で、女王に駆け寄ったペギーと、命じられずに尻尾を拭こうとしたカメ型の師団長が殺された
  • 命じられたとおりに尻尾を拭いたコルトだけが、その場を生き延びた。王の前で許された動きは、命じられたことだけだった
  • コルトは王が去ると白旗を持って人間のもとへ行き、女王の治療を取りつけ、最後の子を守ると誓った
  • 冨樫は生まれたての王の怖さを、戦いではなく、王の目が届く範囲でだけ従う師団長の動きで見せたと読める

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