ハンターハンターで怒ると強くなるのか|怒りの手前にあるもの

怒りでオーラが跳ね上がった場面といえば、ユピーかクラピカ、あるいはピトー戦のゴン。どれも作品の山場です。

ただ、その場面を1つずつ見ていくと様子が変わる。怒りとオーラのあいだに、必ず別のものが挟まっている。体質だったり、能力の発動条件だったり。怒りがそのまま力に変わっている例は、思ったより少ない。

生きているうちは、感情が直接の力にならないように作られている。そのルールは、死んだあとの念のほうへ置かれている。そう読める根拠を、場面ごとにたどります。

※ヨークシン編・キメラアント編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

ユピーの怒りは、そのままオーラの量に変わる

護衛軍のモントゥトゥユピーは、極度の精神的な負荷を受けて怒ったときに変化します。体の体積とオーラの総量が、爆発的に膨れ上がるとされている。ためこんだ力を一気に放てば、周囲を壊し尽くす爆発も起こせる。

怒りの感情をオーラに変換する。主だった3人の中で、この形にいちばん近いのがユピーです(→ ユピーの念能力は戦いながら進化する)。

ただし、これはユピーだから起きている。ユピーはほかのキメラアントと違い、人間の血が混ざっていない魔獣ベースの個体だとされている。規格外に大きく頑健で、戦いの途中で腕を増やしたり目を増やしたりと、体の形まで変えていく。

原作でユピーについて説明されているのは、その体と変化のほうです。怒りとオーラの関係も、同じ体の性質の話として読める。ほかの念能力者が怒れば同じことが起きる、という説明は付いていません。

フェイタンの怒りは引き金で、威力を決めているのは受けた傷

幻影旅団のフェイタンが使う「許されざる者(ペインパッカー)」。キメラアント編の流星街、ザザンとの戦いで出てきます。フェイタンが激怒したときに発動する能力です。

ここまではユピーと似て見える。違いが出るのは、そのあとです。

この能力の威力と持続時間を決めているのは、相手から受けたダメージの量とされている。どれだけ殴られたか。それが出力に変換される(→ フェイタンの念能力は“痛みが燃料”)。

燃料は痛みで、怒りはスイッチ。同じ「怒って強くなった」場面でも、ユピーとは中身が逆になっている。だから痛みを与えられなければ、フェイタンは怒っても火力が上がりません。

クラピカの怒りが働きかけるのは、念より先に体

3人目のクラピカは、感情が高ぶると目が緋色に変わります。緋の眼。この状態のクラピカは、オーラの絶対量が大幅に増えるとされています。

数字で見れば、いちばん派手に伸びているのはここです。通常時のクラピカは具現化系。それが緋の眼では、すでに習得している能力を系統に関係なく100%の精度で使える体になる(→ クラピカの念能力は“二段構え”)。

ただし緋の眼は、クルタ族だけが持つ体質とされている。怒りなどの激しい感情で目が赤く輝くのは、クルタ族の特性。念を覚えたから手に入れたものではありません。

クラピカの場合、怒りが働きかけているのは念より先に体のほうだ。体が切り替わった結果として、オーラの出方が変わる。

怒りとオーラのあいだに挟まっているもの

3人を同じ基準で並べると、挟まっているものはそれぞれ違う。

人物 怒ると何が起きるか あいだに挟まっているもの 怒りが決めているもの
ユピー 体積とオーラの総量が増える 魔獣ベースの体の性質 増える量
フェイタン 能力が発動する 能力の発動条件 発動するかどうか
クラピカ 緋の眼になり体が切り替わる クルタ族の体質 切り替わるかどうか

怒りが増える量まで決めているのはユピーだけです。あとの2人では、怒りは入口を開く働きしかしていない。

そして3つとも、その人物にしか付いていないもの。魔獣ベースの体も、ペインパッカーという能力も、クルタ族の目もそうだ。ほかの誰かが怒って手に入るものではありません。

怒りで覚醒したように見えるゴンは、力の出どころが違う

怒って強くなった場面と聞いて、真っ先にゴンを思い浮かべる人は多いはずです。カイトが戻らないと知り、ピトーへの憎しみに染まったあとの、いわゆるゴンさん化。

きっかけが怒りだったのは確か。ただし、あの力について作中で挙がる理由は怒りではない。

ピトーはあの姿を、命を圧縮してしか出せない力だと読んでいる。二度と念能力を使えなくてもいい、それほどの決意と覚悟がなければ届かない、という分析です。

挙がっているのは覚悟のほうで、感情ではない。ここは制約と誓約の話です。自分に重い縛りを課すほど力が上がる仕組みで、縛りを設定するという手続きが要る。

怒って自動的に開いたわけではありません。ゴンが自分で、差し出すものを決めている。怒りが関わっているのは、その決断の手前までです。

感情とオーラが逆に出た場面と、感情に見えて別物だった場面

感情が働いた場面は、増える側ばかりではありません。

キメラアント編で、ノヴは絶のまま単独で王宮へ潜入します(→ 隠と絶と神の不在証明)。そこでプフのオーラを目にしただけで精神が折れた。行けば確実に殺される、と口にして、そこから先へ進めなくなり、討伐隊の前線から外れています。

オーラの量がどうなったかは描かれていません。それでも、強い感情がいつも力に変わるなら、ノヴのような場面は起きないことになる。

もう1つ、感情に見えて別物だった例がある。同じ編で、キルアは強敵を前にすると逃げ出す思考に陥っていました。恐怖のように見えて、正体は違った。

原因は脳に埋め込まれたイルミの針。キルアの思考は、他人の念能力に操作されていました。針を抜いて、はじめて自分の判断で戦えるようになる。

感情がオーラを動かしたように見える場面を開けると、中に別の仕掛けが入っている。ここでも同じ形が出てきます。

感情と念を結ぶルールは、死んだあとの念に置かれている

念の四大行(纏・絶・練・発)の説明は、どれも技術の言葉で書かれています。練は精孔(しょうこう)を一気に開いて、通常より多くのオーラを生み出す技術(→ 念の基本4つ)。説明されているのは開き方だけ。気合や感情の量は出てきません。

作中の説明を追うかぎり、生きている念能力者に、感情とオーラを直接つなぐ一般のルールは見当たりません。代わりに置かれているのは、死んだあとのほうです。

深い恨みや未練を持ったまま死ぬと、その念はおそろしく強く残る。残された念は行き場を求めて、憎悪や執着の向かう先へ自ずと進んでいく。これは誰か1人の体質の話ではない。念そのものの性質として語られています(→ 死後の念はなぜ消えない?)。

感情が効く場所が、生きている側と死んだあとで入れ替わっている。この置き方には冨樫の狙いがありそうだ。生きているキャラが怒るだけで強くなれるなら、修行や制約を積まなくても同じ強さに届いてしまう(→ 念の修行が伸ばすのは時間と配り方)。

感情を力へ直結させなかったのは、そのためではないかと俺は思う。だから怒りの手前には、どの例でも何かが挟まっている。体質か、能力か、覚悟か。どれも本人がすでに持っているもので、その場の感情では手に入りません。

逆に、死んでしまえばもう積み上げようがない。そこでだけ、感情が直接効くルールが用意されています。ピトーの体が動き続けたのも、このルールが働いていたからでした(→ ネフェルピトーの念能力に“攻撃技”は一つもない)。

まとめ|ハンターハンターで怒ると強くなるのか

  • 怒ってオーラが増えた場面がはっきり描かれているのは、主にユピー・フェイタン・クラピカの3人
  • 3人とも怒りとオーラのあいだに本人固有のものが挟まる。ユピーは魔獣ベースの体、フェイタンは能力の発動条件、クラピカはクルタ族の体質
  • 怒りが増える量まで決めているのはユピーだけ。フェイタンの威力は受けたダメージ量で決まり、クラピカは体が切り替わるかどうかだけ
  • ゴンさん化はきっかけが怒りでも、作中で挙がる理由は命と覚悟。制約と誓約の側にある
  • 感情と念の強さを一般のルールとして結んでいるのは、死んだあとの念のほう

怒りが力になるのは、その人物が怒りを力に変える仕掛けを持っていたときだけ。持っていなければ、ノヴのように前へ進めなくなります。

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