ブラックホエール号の内部は5階層|等級が通じない乗客たち

ブラックホエール号の内部は5つの層に分かれていて、どの層の席を買ったかで扱いが決まります。上の層ほど設備が整い、下の層ほど扱いが雑になる。乗り物というより、人を等級で仕分ける街です。

そして街には、その等級が通じない住人が出てくる。王位継承戦を実際に動かしているのは、この仕分けから外れた側でした。

※王位継承戦編(暗黒大陸編)の展開に触れます。単行本未収録の連載分にも踏み込みます。

ブラックホエール号の階層を分けているのは、身分と支払った額

層を決めているのは、乗る人の立場と、いくら払えるか。カキン王家が用意した席の等級が、そのまま船の中での居場所になります。

上の2層と下の3層で、扱いがはっきり切れている。

主に乗っているのは 扱い
第1層 カキンの王族と護衛、V5の政財界の要人 VIP居住区。王子は生活のすべてが完結する専用の区画を持つ
第2層 各界の著名人・富裕層 上層側。ただし第1層とは原則として往来できない
第3層 一般渡航者 客室の広さや設備で等級が分かれる
第4層 一般渡航者 3層より安く乗れるが、部屋も設備も劣る
第5層 一般渡航者 最下層。警備員がほぼ配置されず、治安はマフィアに委ねられている

第5層は環境が悪く、搾取される側に回っている人も少なくない。同じ船に乗っていても、上と下では別の生活が動いています。

ブラックホエール号の内部は、上からしか開かない壁で仕切られている

この階層が単なる部屋のランクで終わらないのは、行き来を止める作りがあるからだ。

各層をつなぐ通路は王立軍が警備していて、その厳しさは戒厳令に近い水準だとされています。とくに第2層と第3層の間は厚い壁で遮断されている。しかもこの壁は、非常時に第2層の側からしか開けられない。

開閉の権利が上に置かれている。下の層の人間には、上へ抜ける手段が制度として用意されていない。

第3層を中心に一般渡航区域で連続殺人が起きたあとは、往来の制限がさらに強まりました。人が死ぬたびに、層の仕切りは固くなっていきます。

王子は全員この船に閉じ込められている

層の作りは、乗客の待遇だけの話ではない。継承戦の形そのものを決めています。

14人の王子は、全員が第1層に入れられました。王位を継げるのは1人だけで、王子は自分では戦えない決まりになっている(→ 王位継承戦で王子は自分では戦えない)。

逃げ場のない場所に、殺し合う理由のある14人をまとめて入れる。しかも目的地は人類が把握しきれていない暗黒大陸で、船が着くまで降りる先がない(→ 暗黒大陸の広さは世界の外側)。

この密室を作った時点で、王子たちが手を出し合うところまでは決まっていた。

王家が決めた等級が通じない乗客が3組いる

ここまでが船の仕分けです。ただ、実際に乗っている顔ぶれには、この等級で扱えない者がいる。

外れ方は3通り。層に属してはいるが1か所に置けない者、等級の外から最上層へ入った者、等級そのものを無視している者。収まらない度合いが軽い順に見ていきます。

ハンター協会は、ひとつの層に置けない

まずクラピカたちハンター協会。個々の人間はきちんと層に属している。ただ組織としては、どの層にも置けません。

クラピカは第1層にいる。ワブル王子とオイト王妃の護衛という立場だからだ。一方でミザイストムやレオリオは下の層にいて、殺人事件の捜査にあたっている。

同じ組織の人間が、行き来を止められた壁の両側に分かれている。壁で切れているなら、両側に人を置くしかない。協会の配置は、王家の等級ではなく仕事の必要から決まっているように見えます。

第1層でクラピカが開いた念講習には、各王子の私設兵が集まりました。そこに暗殺者が混じっていることまで織り込まれている。上層が安全というのは、あくまで下から来る相手に対しての話でした。

マフィアの組長は、等級の外から第1層に入っている

次がカキン系の三大マフィア。シュウ=ウ一家・エイ=イ一家・シャ=ア一家も、この船に乗っています。

そして各組長は、第1層で上位王妃と同じ扱いを受けているとされる。王族でもなければ、V5の要人でもない。それでも最上層の待遇が用意されています。

等級が想定しているのは、公の身分と支払える額の2つ。マフィアはそのどちらの基準でも上位に置ける相手ではない。それでも上に入っているのは、王家が彼らの力を必要としたからだと読むのが自然でしょう。組織の側も、王子たちと個別に取引する道を持っている。

いちばん外れているのがモレナ=プルードだ。エイ=イ一家の組長で、表向きはナスビー王と愛人の間に生まれた婚外子とされてきました。ところが本人の口から、その本物はすでに墓の中にいると明かされる。今のモレナは、そこへ成り代わった別人です。

王族の列にも、渡航者の等級にも、正面から置けない。買える組織と買えない組織の違いは、幻影旅団との対比でも見えてきます(→ 十老頭と幻影旅団は替えがきく部分が逆)。

幻影旅団は、等級そのものを無視している

3組目は、王家が席を用意した相手ではない側。

幻影旅団は下層にいます。狙いは王子の持つ宝と、ヒソカの命の2つだとされている。王家が想定していない乗客は、どの層にも分類のしようがない。

団員ナンバーが強さの順位ではなく、席の番号だったのと同じ。旅団は外から与えられた序列に乗らない集団だ(→ 幻影旅団の団員ナンバー一覧)。船の等級も、彼らにとっては守る理由のない決まりでした。

層が止めたのは移動だけで、力の広がりは止まらない

3組を並べると、王家の仕分けが何を扱えて何を扱えないかが分かります。

止められるのは人の移動です。壁と警備があれば、体を上へ運ぶことは防げる。防げないのは、人と一緒に動くもののほうだ。

モレナの念能力「恋のエチュード(サイキンオセン)」がその代表になります。唾液を介して他人を発症者に変え、念能力を持たせてしまう能力だ。感染した相手が、また次へ広げていく(→ モレナの念能力”恋のエチュード”が念使いを増やす仕組み)。

これに対して層の壁はほとんど働きません。壁が防ぐのは通行であって、通行できる人間が何を持ち込むかは検査していない。下の層で増えた念能力者は、そのまま船全体の脅威になる。

情報も止まらない。ツェリードニヒは第1層にいながら、守護霊獣の力で相手の嘘を見抜きます。本人の発は、これから起きる10秒を書き換えるものだ(→ ツェリードニヒの念能力が”反則級”な理由)。壁の内側にいても、隠しごとが守られるとは限らない。

俺はここに冨樫のうまさがあると思っています。階層で人を分けて安心させておいて、その仕分けが効かないものを同じ船に積んでいる。読者は先に「上は安全」という図を覚えるので、それが崩れる瞬間の効き方が大きくなる。

第1層だけが助かる船なのか

層の分け方には、もうひとつ気になる点があります。

第1層は、上部に載った別の船のように描かれている。ファンの間では「いざとなれば下の層を切り離せるのではないか」と受け取られています。原作がそう明言しているわけではないので、ここは確定ではありません。

ただ、この読みが出てくること自体が、階層の性質をよく表している。上の層を守るために下の層があるのなら、これは席の等級ではない。誰を先に捨てるかの順番ということになります。

暗黒大陸の五大厄災に出会ったとき、乗っている人全員がまとめて助かる。そんな想定がされているようには見えない(→ 暗黒大陸の五大厄災は”恵み”が罠)。

まとめ|ブラックホエール号の階層は、力の分布とはずれている

  • 船の内部は5層に分かれ、第1層は王族とV5の要人、第2層は著名人・富裕層、第3層から第5層が一般渡航者にあてられている
  • 第2層と第3層の間は厚い壁で遮断され、非常時に第2層の側からしか開けられない。開ける権利は上に置かれている
  • 王子14人を全員第1層へ入れた時点で、逃げ場のない殺し合いの形は決まっていた
  • 王家の等級が通じない乗客が3組いる。ひとつの層に置けないハンター協会、等級の外から第1層に入ったマフィアの組長、等級そのものを無視する幻影旅団
  • 壁が止められるのは人の移動だけ。念能力や情報の広がりは止まらず、モレナの感染がその代表になる

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