暗黒大陸の広さは世界の外側|人類の世界は湖に浮かぶ島だった

暗黒大陸は、世界の端にある未開の土地ではありません。位置関係は逆です。人類が知ってきた世界のほうが、暗黒大陸の内側に収まる小さな区画。

暗黒大陸編で明かされた世界地図が、この関係をひっくり返した。海だと思っていたものは、暗黒大陸の規模で見れば湖だった。

なぜ冨樫は、世界の大きさをここまで入れ替えたのか。地図・渡航の記録・外から来た生き物の3つから読み解きます。

※暗黒大陸編と、連載中の王位継承戦の展開に触れます。

暗黒大陸の広さ|人類が知る世界はその内側にある

人類が知る6つの大陸(既知世界)は、世界のすべてではなかった。

明かされた地図では、既知世界は暗黒大陸の中央にある巨大湖メビウス(無限海)に浮かぶ島々。6つの大陸が丸ごと1つの湖に収まる、と言い換えてもいい。その湖ごと囲んでいるのが暗黒大陸です。外側にあるのは暗黒大陸のほうで、人類の世界はその中にある。

ジンはそれ以前から、世界地図には外側があるとゴンに告げていた。蟻も外側から来た外来種だと明かしたのも、このときです。

ハンター試験も、ヨークシンも、キメラアント編も、全部この内側で起きた出来事だった。地図が一枚出てきただけで、これまでの舞台が丸ごと小さくなる。

サイズの入れ替えとしては、かなり思い切ったやり方に見えます。それでも成立しているのは、既知世界の外を「まだ描かれていない場所」として置いてきたからでしょう。

暗黒大陸は未知ではない|渡航の記録は残っている

辺境という受け取り方が外れるのは、大きさの話だけではありません。

渡航は149回試みられている。うち帰還した生存者が確認されたのは、案内人の協力を得た5回だけ。

200年以上前にはV5と呼ばれる5つの大陸が不可侵条約を結び、暗黒大陸は人類最大の禁忌になった。古文書や遺跡には、人類が進出するたび大きな災いがふりかかったと記されている。

つまり、踏み込んだ者はいた。記録も残っている。分からないから近づかないのではなく、何が起きたかを覚えているから封じている。未知の土地なら、条約ではなく探検の対象になっていたはずです。

条約のあとも、持ち帰りは繰り返されました。その危険度は暗黒大陸の五大厄災は”恵み”が罠にまとめている。

暗黒大陸から来たキメラアント|内側の物語はもう混ざっている

内側で起きた事件の出どころも、同じ方向を指しています。

キメラアントは、既知世界の生き物ではない。魔獣とあわせて、外から入ってきた外来種として扱われている。五大厄災も同じ経路で、ゾバエ病もブリオンも発生源は外側。ジンはこれを、案内人が戒めとして持ち帰らせたものだと見ている。

キメラアント編で描かれた進化と摂食交配も同じです。外側の理屈が内側に持ち込まれたと考えると筋が通ります(→ メルエムはなぜ最強で生まれた?)。

つまり境界は、思われているほど閉じていない。内側の物語は、これまでも外側からの流入で動いてきた。キメラアント編そのものが、その実例だった。

冨樫が用意したのは物語を広げるための外枠ではないか

地図・渡航記録・外来種の3つは、置かれ方がそろっています。どれも既知世界を閉じた完成品として扱っていない。地図では内側に置かれ、条約では外との行き来を禁じられている。事件の原因も外から入ってくる。

3つを合わせて見ると、暗黒大陸の役割は「新しい強敵の産地」ではなさそうだ。むしろ、強さの積み上げに頼らず物語を広げるための外枠として置かれているように見えます。

ハンター試験からキメラアント編まで、作品は「もっと強い相手」を積み上げてきました。同じ方向に伸ばし続ければ、いつか限界が来る。地図を一枚差し替えて舞台の外側を出せば、強さ以外の方向へ話を広げられる。

ネテロとビヨンドの動機が正面から食い違っているのも、この外枠があるから成り立つように見える。片方は封じる側、片方は取りに行く側。どちらの立場も、外側が既知でなければ生まれない。2人の対比はビヨンドとネテロが暗黒大陸に求めたもので扱いました。

暗黒大陸に着く前|王位継承戦が船の中で起きている理由

この読みが正しいなら、いま進んでいる話の置き方にも表れているはず。

王位継承戦の舞台は、暗黒大陸へ向かう船の中です。目的地には着いておらず、争っているのは既知世界の権力のほう。王子が自分では戦えない仕組みは王位継承戦で王子は自分では戦えないにまとめた。

暗黒大陸が「未知の強敵がいる場所」として用意されたなら、まず上陸させるほうが早い。そうせずに船内へ話を寄せているのは、外側を出したこと自体がすでに効いているからだと読めます。

行き先が変わると、内側の人間関係の意味も変わる。ジンが探すこと自体を目的にしているのも、同じ理屈で説明がつきそうです(→ ジンの目的は”探すこと”そのもの)。

まとめ|暗黒大陸の広さと役割

  • 人類が知る6つの大陸は、暗黒大陸の中央にある湖に浮かぶ島々。外側にあるのは暗黒大陸のほう
  • 渡航は149回試みられ、案内人の協力を得た5回だけ生存者が確認されている。未知ではなく既知の危険
  • V5の不可侵条約は200年以上前のもの。進出のたびに災いが起きたという記録があるから封じている
  • キメラアントも五大厄災も外から入ってきたもので、内側の物語はすでに外側から動かされてきた
  • 暗黒大陸は新しい強敵の産地ではなく、強さに頼らず物語を広げる外枠として置かれていると俺は読んでいる

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