同じ2人が、別々の機会に2回戦う。ハンターハンターでこれが原作で確認できる組は、意外なほど少なく、3つだけです。
ゴン対ギド、ヒソカ対カストロ、モラウ対ヂートゥ。この3組で「2度目に勝ち直した側」を見ると、ある共通点が出てくる。
勝った側は、新しい技を足していない。冨樫が再戦を、技の見せ合いではなく別のものを測る場に使っているのではないか。そう読めるかを、3組で確かめます。
※天空闘技場編・グリードアイランド編・キメラアント編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
同じ2人が2度戦った3組を並べる
まず、3組が「2度目までに何をしたか」を整理する。
| 組 | 1度目 | 2度目までにしたこと | 2度目の結果 |
|---|---|---|---|
| ゴン対ギド | ゴン敗北(全身骨折) | 念の基礎を積んだ | ゴン勝利 |
| ヒソカ対カストロ | カストロ敗北(回想) | 新しい能力ダブルを覚えた | カストロ敗死 |
| モラウ対ヂートゥ | 決着つかず(ヂートゥ逃走) | 何も足さず、使い方を変えた | モラウ勝利 |
足したものの中身が、3組で違う。土台を積んだ側、新技を覚えた側、何も足さなかった側。勝ち負けと重ねると、向きが見えてきます。
ゴン対ギド|足したのは土台で、新技ではない
天空闘技場の200階で、ゴンは一度ギドに負けている。独楽の回転攻撃を弾けず、全身を骨折した。念の防御を知らなかったからです。
2度目は、ゴンが勝った。ただし勝因は、新しい必殺技ではありません。2か月のあいだに積んだのは念の基礎で、オーラによる防御力が上がっていた。ギドの攻撃力ではもう倒せないところまで、土台が伸びていたわけです。
ここで大事なのは、ゴンの代名詞であるジャジャン拳が、まだ存在しないことです。あの技はのちのグリードアイランド編で考案されたもので、ギド再戦の時点では無い。ゴンが足したのは技ではなく、土台のほうだった。
ヒソカ対カストロ|相手に合わせた新技を足して、負けた
逆の側にいるのがカストロだ。1度目にヒソカへ負けた場面は、作中では描かれず、2年前の出来事として語られる。その敗北のあと、カストロは分身を作る能力ダブルを覚えた。次にヒソカと戦うために足した、新しい技です。
ところが2度目、カストロは敗れて命を落とします。相手に照準を合わせて技を増やしたのに、勝てなかった。新技を足した側が、負けている。
なぜダブルで勝てなかったのかは、能力の設計の話になります(→ 念能力の弱点は発動条件に集まる)。ここで見ておきたいのは、カストロが選んだのが「新技を足す」だったこと。そしてその選び方が、勝ちにつながらなかったことです。
モラウ対ヂートゥ|何も足さず、使い方を変えて勝った
3組目は、足したものが一番少ない例だ。
モラウは1度目、ヂートゥの速さに及ばず、取り逃がしています。2度目に持ち込んだのは、新しい能力ではありません。1度目と同じ煙の能力のまま、使い方を変えた。煙で作った偽物を囮に置き、本体がヂートゥの背後からタッチして能力を解いています(→ ヂートゥの念能力は速さを活かせていない)。
ヂートゥの側は、2度目に新しい能力を出した。それでも勝ったのはモラウのほうです。足したものの多い側ではなく、同じ手札の使い方を変えた側が勝ち直している。
3組に共通する点|新技と勝敗が逆に対応する
3組を見ると、勝ち直した側の選び方がそろってくる。
ゴンは土台を積み、モラウは使い方を変えた。どちらも新しい技は加えていない。逆に、相手へ照準を合わせて新技を足したカストロは負けた。再戦で勝敗を決めたのは、技を増やしたかどうかではなかった。
もちろん母数は3組で、ここから法則だと言い切ることはできません。ただ、3組とも新技の有無と勝敗が逆に対応しているのは確かです。技を足した側が負け、足さなかった側が勝っている。
冨樫は再戦を何に使っているか
この3組が同じ結果を指す理由を、冨樫の側から読んでみる。
再戦は本来、パワーアップを見せる場になりやすい。1度目に負けた側が新技を引っさげて勝ち返す、という筋書きは王道です。ところがハンターハンターの3組では、その筋書きが通っていません。
冨樫は再戦を、新技のお披露目には使っていない。1度目の負けから何を変えられたかを見せる場にしているのではないか。ゴンは足りなかった土台を、モラウは通じなかった攻め方を、それぞれ変えて戻ってきた。カストロだけが、相手に技を合わせるという「足し算」で挑み、届かなかった。
この読み方が正しければ、再戦の少なさにも説明が付く。同じ2人を2度戦わせるのは、勝敗をひっくり返すためではない。1度目に足りなかったものを名指しするためだと読める。だから何度も繰り返す必要がなく、3組で足りているのかもしれません。
念能力の強さそのものは、この作品では制約と誓約の重さで測られます(→ 制約と誓約は”念の交換レート”)。再戦が測っているのは、その強さとは違うものに見える。強くなったかではなく、負けから何を直したか。そこを見せる場になっている、と俺は読んでいます。
まとめ|ハンターハンターの再戦が見せているもの
- 同じ2人が別々の機会に2度戦った組は、原作で確認できるかぎり3つ。ゴン対ギド、ヒソカ対カストロ、モラウ対ヂートゥ
- 勝ち直した側は新技を足していない。ゴンは念の基礎という土台を積み、モラウは同じ能力の使い方を変えた
- 逆に、相手へ照準を合わせて新技ダブルを足したカストロは負けた。新技の有無と勝敗が逆に並んでいる
- ゴンのジャジャン拳はギド再戦の時点ではまだ無い。あの技はグリードアイランド編で考案されたものだ
- 母数は3組なので法則とは言えないが、冨樫が再戦を「負けから何を直したか」を見せる場に使っている、という読みは立つ
再戦で戻ってきた3人は、それぞれ違うものを持ち帰りました。土台、使い方、そして新技。持ち帰ったものが少なかった側から順に、勝っています。
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