ゴンの嗅覚や野生の感覚が話を動かした場面は、4つともハンター試験編にあります。念を知らない受験生の中で、ゴンだけが持つ情報を運ぶ役。この鼻と肌は、そのために置かれていたように見えます。念を覚えたあとは、同じ感覚が前に出る場面がぐっと減る。
※ハンター試験編からキメラアント編の序盤までの展開に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ゴンの嗅覚と野生の感覚が話を動かした4つの場面
くじら島の森で育ったゴンは、匂い・風・物音に敏感な子どもとして描かれます。その感覚が話の向きを決めた場面と、仲間に当てにされた場面を拾うと、次の4つ。念の技としての感知(凝や円)は入れていません。
- 嵐の予告: 試験会場へ向かう船の上で、嵐が来ると言い当てた
- 湿原の追跡(1次試験): はぐれたレオリオを、つけている香水の匂いでたどった
- ポンズ探し(4次試験): 薬品を扱うポンズなら、ゴンの鼻で探せるかもしれないとクラピカが当てにした
- ゼビル島の待ち伏せ(4次試験): 気配を消してヒソカに近づき、釣り竿でプレートを取った
嵐の場面の手がかりは、風と海鳥。風が生暖かく潮っぽいこと、海鳥が警告の声で鳴いていること。船長は、鳥の言葉が分かるのかと半信半疑でした。嵐をしのいだゴン・クラピカ・レオリオの3人は船長に見込まれ、ハンターを目指す理由を尋ねられます。
1次試験では、霧の中ではぐれたレオリオを匂いで追いかけ、そのまま湿原を抜けた。ゼビル島の場面の中身、つまり誰が何枚のプレートを集めたかはゼビル島のプレート争奪戦にまとめています。
ゴンの野生の感覚に共通するのは、年上が持っていない手札
4つを比べると、どれも周りの年上や強い相手が持っていない情報を、ゴン1人が持ち込んでいます。
嵐の予告では、船の扱いに慣れた船長より先に天気を読んだ。湿原では、霧で見えない仲間の居場所を鼻で探した。4次試験では、頭の回るクラピカのほうがゴンの鼻を当てにしている。ゼビル島では、明らかに格上のヒソカに、気づかれずに近づいた。
この時点のゴンは、念も武術の型も持っていません。釣り竿と身軽さのほかに、大人の受験生と比べて目立つ持ち物は少ない。
俺がここで気になったのは、その少なさです。冨樫は、修行の場面を挟まずに子どもを試験の中で役立たせるため、この鼻と肌を用意したのではないか。仮説にすると、こうなります。
- 野生の感覚は「強さ」ではなく、周りが持っていない情報を1つだけ持ち込む役割
- だから、その情報を周りがすでに持っている場では、出番が来ない
気配を消す感覚だけは向きが逆だったゼビル島
4つのうち、ゼビル島だけは向きが違います。ほかの3つは何かを感じ取る場面。ここは自分の気配を消す場面です。
ゴンは、ヒソカが自分の獲物を襲う瞬間を狙うと決めていた。その時機は、鳥が水中の魚を捕る様子を見て思いついたもの。そこで気配を消して待ち、釣り竿でプレートを取りました。
気配を消せた理由は、セリフでは語られません。くじら島で獲物に気づかれずに近づく暮らしをしてきたから、というのは俺の読みです。とはいえ役割は同じ。格上の相手が持っていない「近づいても気づかれない」力を、ゴンが1人だけ持ち込んでいます。
念の世界では、気配を断つのは絶という技になります。素の感覚で消すことと念で消すことの違いは、隠と絶と神の不在証明で整理しました。
天空闘技場とNGLで、ゴンの鼻が前に出なかった理由
仮説が正しければ、念を覚えたあとは、ゴンの鼻と肌が話を動かす場面は減るはず。念のあとにも素の感覚で筋が動く例外が多ければ、この読みは崩れます。念を覚える境目から先は、天空闘技場・グリードアイランド・NGLの場面で確かめます。
境目にあたるのが、天空闘技場の200階クラスの受付。ゴンとキルアは、ヒソカのオーラに押されて前へ進めなくなった。2人はウイングのもとで念を習い、そのあと同じ受付へ戻っています。
素の感覚は「ここに何かある」とまでは教えてくれる。ただ、通り抜ける方法は与えてくれません。この場面の読み方は念を知らない相手に念は効くのかに詳しく書きました。
キメラアント編、NGLの森でネフェルピトーと出会った場面。3人のうちで、禍々しいオーラに先に気づいたのはカイトで、ゴンとキルアはその圧に怯んだ側でした。ピトーの側も、近づくカイトの気配を感じ取って向かってきている。オーラで気配を読める相手が周りにいる場では、ゴンの鼻は1人だけの情報になりません。
グリードアイランド編でも、鼻や肌で話が動く場面は目立って出てこない。少なくとも、ハンター試験編の4つと比べられる数はありません。
冨樫が野生の感覚に持たせた役割
ゴンの釣り竿は、念を覚えたあとの戦いではほとんど使われず、その使い方は念の側へ移りました(→ ゴンの釣り竿とキルアのヨーヨー)。感覚のほうは向きが違う。念の側へ移ったわけではありません。ゴンの鼻も肌も、念を覚えたあとも持っているはず。変わったのは周りのほうです。
カイトやピトーのように、オーラで相手の気配を読める者がそばにいる。そういう場では、ゴンの鼻が運ぶ情報は、もう1人だけのものではありません。
ハンター試験編は、念を知らない受験生が、それぞれ自分の持ち物で戦う場でした。そこでは、くじら島で育った子どもの感覚が、ほかの誰も持っていない情報になる。冨樫が序盤のゴンに鼻と肌を持たせたのは、この状態を作るためだった。俺の結論はそこです。
まとめ
- ゴンの野生の感覚が話を動かした場面は、嵐の予告・湿原の追跡・ポンズ探し・ゼビル島の待ち伏せと、ハンター試験編に集まっている
- 4つとも、年上や格上の相手が持っていない情報を、ゴンが1人だけ持ち込む形で働いている
- ゼビル島だけは感じ取るのではなく、気配を消す向きだった
- 念を覚えたあとは、ピトーとの遭遇でも先に気づいたのはカイト。オーラで気配を読める相手が周りにいる場では出番が回りにくい
ゴンの鼻と肌は、釣り竿と違って役目を念に渡していません。持ったままでも、オーラで気配を読める相手が周りにいる場では、ゴンだけの情報にならないのです。
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