ハンターハンターのヨモツヘグイ|カミーラ私設兵の呪詛は自刃した兵1人が王子1人に届く念

カミーラの私設兵には、王子1人につき1人、「つじつま合わせに生まれた僕等(ヨモツヘグイ)」でその王子を呪い殺す担当がいます。この念は、強い相手を倒すための技というより、兵1人の死を王子1人に当てる仕組みとして作られているように見える。

担当の兵が自分で命を絶ったときに初めて、相手の王子へ届く呪いです。単行本の範囲では、まだ一度も使われていません。手がかりになるのは、手順と割り当てと使い手の出自の3つ。

※王位継承戦編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

ヨモツヘグイとは|つじつま合わせに生まれた僕等の手順

呪詛の中身が語られるのは、37巻 No.389「呪詛」の回。

手順は3つの段に分かれます。

  1. 標的に縁のある物を小刃と一緒に持ち歩き、毎日その相手を想う
  2. 決行の日に、その物を燃やし、灰を煎じて飲む
  3. 持ち歩いた小刃で自刃する

自刃したところで念が発動し、呪いが標的に取り憑く。引き金は、使い手自身の死です。

取り憑かれた側は、呪いの念にオーラを奪われます。最も強い呪いの場合は、強制的に絶の状態にされ、数時間で死に至る。絶にされた側が、自力で戻るのは難しい(→ ハンターハンターの絶は誰が決めるのか)。

呪いの強さを決めるものは3つあります。

  • 標的を想ってきた期間の長さ
  • 標的との距離の近さ
  • 自刃する覚悟の固さ

理想は、標的の目の前で命を絶つこと。遠くから呪いを飛ばすだけでは相手が死ぬまでずっと長くかかる、という見立ても陣営の中で語られます。

強い想いを残して死ぬほど念が強まる、という話は作中にほかにもある(→ 死後の念はなぜ消えない?)。

ヨモツヘグイは、その死を最初から手順に組み込んだ念と言える。差し出すのは、取り返しのつかない命です。この点も、縛りが重いほど念が強くなる制約と誓約の考え方に沿っている(→ 制約と誓約は“念の交換レート”)。

カミーラ私設兵の呪詛担当|王子1人に兵1人を割り当てる

手順のほかに描かれるのは、担当の割り当てと、隊長サラヘルの計画。前の節の効き目の見立ても含めて、どれも No.389 の1話で描かれる。

まず割り当て。カキンの王子は14人で、カミーラの私設兵は、ほかの王子1人ずつに呪詛の担当を付けています。

  • 私設兵の隊長サラヘルは、第14王子ワブルの担当
  • HUNTER GUIDE の一覧では、モスワナが第1王子ベンジャミンの担当
  • 残りの王子にも、それぞれ担当の兵がいる

次に、サラヘルの計画。クラピカが開く念の講習会に出て、ワブルの目の前で自刃するつもりでいる。単行本の範囲では、この計画はまだ実行されていない。

この1話で決められているのは、誰が・誰を狙って・どこで死ぬか。相手の王子をどう倒すかの段取りは、ほとんど出てこない。呪詛は、腕の立つ兵が強い相手を選んで使うものとしては描かれていません。担当の名前が先に決まり、死ぬ場所を探す話になっている。

不可持民と死後伴侶|呪詛担当の私設兵の出自

呪詛担当の私設兵は、不可持民の出身です。

不可持民は、カキンに残る生まれで決まる身分の下層。一生変わらない身分で、公職には就けない。古代のカキンでは、王になれなかった王子が死んだとき、一緒に葬られる「死後伴侶」がこの身分から選ばれていました。

Weblio に載る解説によれば、カミーラの私設兵は死を覚悟していて、忠誠心が高い。カミーラは、その不可持民に私設兵になる道を開いた。

この出自を、呪詛の手順と並べてみる。王子の死に合わせて葬られる役目を負わされてきた身分から、死んで王子に届く念の使い手が出ている。呪詛担当の役目は、死後伴侶の役目を継承戦に持ち込んだ形に近い。

能力の名前も、この読みに沿っています。ヨモツヘグイの読みは、日本神話の黄泉戸喫(よもつへぐい)と同じ。黄泉の国の食べ物を口にした者は、元の世界へ戻れなくなるという話です。

灰を煎じて飲む手順は、この「口にしたら戻れない」と重なる。名前の時点で、使い手が帰らない念として作られていると見ることができます。

呪詛を持たないウマンマとフカタキ|カミーラ陣営の例外

カミーラの周りには、呪詛を使わない人物もいます。私設兵の除念師ウマンマと、執事長フカタキの2人です。

ウマンマは私設兵ですが、担当の王子を持たない。役目は除念です。フカタキは執事長で、私設兵ではなく王子付きの従事者の枠にいます。念能力があるかどうかも、明かされていません。

俺は、この例外があるおかげで、呪詛担当の役目がかえってはっきりすると思います。呪いをかける兵は、死ぬことまでが役目に入っている。陣営に残る2人の役目には、それが入っていない。

2人はどちらも、王子1人に兵1人の割り当ての外にいます。割り当てに入った兵は、呪いを使えば必ず死ぬ。例外がいても、呪詛が死を前提にした役目だという読みは崩れません。

除念師がいることにも意味があります。呪いをかける陣営が、かかった念を外す手段も持っている。念は外せる、と分かっている陣営です(→ かかった念を解除する3つの方法)。

相手の側にも除念の手段があるとしたら、どうなるか。遠くから飛ばした呪いは、死ぬまでの長い時間のうちに外されるかもしれない。もしそうなら、サラヘルが目の前での自刃を選んだのは、この弱みを避ける形として読める。

冨樫がヨモツヘグイに持たせた役割|戦えない王子に代わって、命と引き換えに相手を呪う兵

王位継承戦の王子は、自分の手で相手を倒しにいけない作りになっています。実際に動くのは、周りに付いた兵です(→ 王位継承戦で王子は自分では戦えない)。

その中で、ほかの念も死を別の形で使っている。ベンジャミンは、死んだ私設兵の念能力を受け継ぐ(→ ベンジャミンの念能力は補充が効かない)。陣営の主であるカミーラは、兵ではなく自分の死を使う。本人が殺されたときに動く念です(→ カミーラの念能力)。

ヨモツヘグイは、そのどちらとも違います。死ぬ兵の数が、そのまま狙える王子の数になる作りです。

この念は、急ぐほど弱くなる。長く想うほど強く、近づくほど強い。決行は先へ延ばされ、標的のそばへ行ける日を待つことになりやすい。単行本の範囲で一度も発動していないのは、この作りと食い違いません。

王子が自ら手を下せない継承戦に、冨樫は兵1人の死を王子1人に当てる念を置いた、と読める。強い者が勝つ戦いではなく、誰が誰のために死ぬかで動く戦い。その道具として、俺はヨモツヘグイを読んでいます。

まとめ|ヨモツヘグイとカミーラ私設兵の呪詛

  • ヨモツヘグイは、縁のある物の灰を飲み、小刃で自刃したときに発動する呪い。強さは想った期間・距離の近さ・覚悟で決まり、最も強い場合は強制的な絶にされて数時間で死に至る
  • 王子1人に兵1人の担当が割り当てられ、隊長サラヘルはワブルの目の前で自刃するつもりでいる
  • 呪詛担当は、死後伴侶を出してきた不可持民の出身。除念師ウマンマと執事長フカタキは呪詛を持たない例外
  • 急ぐほど弱い作りは、39巻まで一度も発動していないことと食い違わない
  • 強い者が勝つための念ではなく、誰が誰のために死ぬかで動く念として置かれている

関連記事:

タイトルとURLをコピーしました