教室に入った小学生たちが、地球から5億光年先の星へいきなり飛ばされる。冨樫義博の『レベルE』のカラーレンジャー編は、グリードアイランドの元ネタという見方がある話です。ただ、元ネタだと冨樫や集英社が述べた資料は見つかっておらず、読者の見立てです。
2作の描写を突き合わせると、重なるのは作り手が遊び場を用意して人を入れるところまで。どう入るかと、どう出るかは、2作で反対の作りになっていました。
※『レベルE』カラーレンジャー編の結末と、グリードアイランド編の内容に触れます。ハンターハンターは単行本既刊分(〜39巻)まで。
「レベルEはグリードアイランドの元ネタ」という見方の出どころ
この見方を書いているのは、『レベルE』を紹介した読者のレビューです。レビューはカラーレンジャー編を「RPGの世界に入ってしまうという展開」とまとめている。そのうえで「ハンターハンターの「グリードアイランド」の元になったと思われるストーリー」と書いています。
表面が似ているのは確か。どちらも作り手がゲームの規則ごと世界を用意し、人がその中へ体ごと入って冒険する。カルバリ星はRPG、グリードアイランドはカードを集めるゲームと、形が違うだけです。
言い方は「思われる」。読み比べた人の見立てで、出どころのある説ではない。冨樫や集英社が2作の関係を述べた資料も、見つかっていません。
『レベルE』は1995年から1997年に週刊少年ジャンプへ月1回載った作品で、全16話・単行本3巻。幽☆遊☆白書(幽遊白書)とハンターハンターのあいだに描かれた作品です。2作の似たところを探す読者が出るのも分かります。
レベルEのカラーレンジャー編で、子どもたちが星へ送られるまで
カラーレンジャー編は単行本2巻、No.006〜009の話。主人公は、地球で暇つぶしの悪ふざけを繰り返すドグラ星の第1王子です。
その王子が、学校帰りの小学生5人を宇宙船へさらう。5人はなかば無理やり、変身ヒーロー「原色戦隊カラーレンジャー」に改造されてしまいます。
送られる先は惑星カルバリ。王子が遊戯専用の惑星を買い、自分で造り変えた星です。中身はRPGそのもの。5人のうちの1人は、RPGを自分で作るゲームソフトのような世界だと気づきます。
5人が教室に入ると、星へワープする。5人がつけられた腕輪は、捨てられない仕組みになっていた。
2011年のアニメの公式あらすじには、「地球に戻るには、モンスターを統べる魔王を倒さなくてはならない。」とあります。ところが原作の結末で5人が地球に帰れたのは、魔王を倒したからではない。王子の企みが崩れたからです。
王子の企みは、子どもたちが安全なまま、本気で苦しむ姿を楽しむこと。帰れたあとも話は終わらない。腕輪をつけたまま教室に入った5人は、また星へ飛ばされています。
グリードアイランドに入る方法と、出る方法
グリードアイランドは、ジンを中心に11人の念能力者が作ったゲーム。作った11人の顔ぶれはグリードアイランドの製作者は11人にまとめています。
入るには、ゲームソフトをセットしたゲーム機に両手を添えて、練を行う。すると、体ごとゲームの世界に入ります。練を使えない人は、始めることもできない。
中の規則は、カードと呪文で動く。ゲンスルーたちのように、カードを奪ったうえでプレイヤーを殺す組も出てきます。ゲームの中で死ねば、現実でも死ぬ。死体は現実の側へ戻されます。
出る方法は、規則の中に3つある。
- 指定ポケットのカードを100種類そろえてクリアする
- 呪文カードの離脱(リーブ)で、島の外へ飛ぶ
- 港で、島から出るためのチケットを使う
作った理由は、ゲームを始めたゴンに向けたジンの伝言で語られる。自分たちの作ったゲームを自慢したかっただけ、というものです。一方でビスケは、ゴンを強く育てるために用意したのではないか、と推測している。前者は作中で語られた理由、後者は登場人物の読みです。
レベルEのカルバリ星とグリードアイランドで、同じ向きなのは作り手だけ
比べる基準は5つ。作り手、入り方、中の規則、出る条件、作り手の目的です。
中の規則は、中で負けたとき・死んだときに何が起きるか。作り手の目的は、その遊びが誰のためにあるか。規則に従って遊ぶこと自体は2作とも同じなので、違いが出るのはこの2点です。
| 基準 | カルバリ星 | グリードアイランド | 向き |
|---|---|---|---|
| 作り手 | 王子が星を買って造り変えた | 11人の念能力者が作った | 同じ |
| 入り方 | 教室に入ると飛ばされる | 本人がゲーム機に練を行う | 反対 |
| 中の規則 | 王子の意図では死なせない | 中で死ねば現実でも死ぬ | 反対 |
| 出る条件 | 王子の企みが崩れて帰れた | クリア・離脱・港の3つ | 反対 |
| 作り手の目的 | 苦しむ姿を王子が見て楽しむ | 他人に遊ばせて自慢する | 反対 |
同じ向きなのは、作り手が遊び場を用意している点だけ。作り手は1人と11人で違う。それでも、誰かが先に場所と規則を作り、そこへ人を入れる形は2作で共通しています。
入り方は反対です。飛ばされる点だけを見れば似ている。けれどカルバリ星の5人は、教室に入っただけで送られ、腕輪も捨てられない。行くかどうかは、本人たちの都合と関係がありません。
グリードアイランドは、練を行う本人の手がなければ始まらない。入るかどうかを、遊ぶ側が自分で決める作りです。
出る条件も違う。グリードアイランドは、出る方法をゲームの規則として3つ書いています。カルバリ星は、アニメのあらすじでは魔王を倒すこととされていた。けれど原作で実際に帰れたのは、王子の企みが崩れたからです。帰れるかどうかは、規則ではなく王子の側の事情で決まっていました。
レベルEの安全なつもりの星には出口がなく、出口のあるグリードアイランドでは死ぬ
2作を比べて俺がいちばん引っかかったのは、中の規則と出る条件の組み合わせです。2作は、この2つを反対の組み合わせで持っている。
カルバリ星の王子は、子どもたちを安全なまま苦しませるつもりでした。死なせる気はない。その一方で、帰り方を子どもたちに渡していません。いつ終わるかを決めているのは王子で、5人は星の規則の中で帰り方を選べない。
グリードアイランドはその反対。中で死ねば本当に死に、死なないための仕組みはありません。その代わり、出る道は規則としてプレイヤーの手元にある。カードをそろえるか、離脱を使うか、港へ行くか。どれを選ぶかはプレイヤーが決められます。
死なせない代わりに帰り方を渡さない王子と、死を防がない代わりに帰り方を3つ書いたグリードアイランド。この2つを合わせて読むと、遊ぶ側が受け取るのは、死なないつもりの扱いか、出る道か、そのどちらか一方。俺にはそう読めます。
入り方の違いも、この組み合わせに沿っています。帰り方を持たない5人は、行くかどうかも選べなかった。帰り方を持つプレイヤーは、入るところから自分で選んでいる。入り口と出口が、2作それぞれで同じ側にそろっています。
読者が追うものも、この違いに沿って分かれると考えられる。カラーレンジャー編の結末は、5人が地球へ帰れるかどうかに向かいます。グリードアイランド編では、死人が出るなかで誰が生き残り、カードをそろえ切るかが続きます。
作り手の目的も同じ向きで分かれる。王子のゲームは、苦しむ子どもたちを王子が見るためのものです。グリードアイランドの作り手が自慢したかったのは、他人に遊ばれるゲーム。ビスケの推測を採っても、ゴンが中で鍛えられることが目的になります。どちらにしても、遊ぶ側が中で動くことが前提です。
閉じ込める場所と自分で入る場所の違いは、トリックタワーは条件を渡し、地下室は渡さないでも比べています。グリードアイランドはそちらでも、出口が最初から公開されている側でした。
レベルEはグリードアイランドの元ネタと言えるか
元ネタだと言い切れる材料は、いまのところ見つかっていません。冨樫や集英社が2作の関係を述べた資料は見つからず、この見方を書いているのも読者の感想です。
いま見た違いも、元ネタかどうかを決める材料にはならない。言えるのは、仮にカラーレンジャー編が下敷きでも、入り口と出口は作り替えられている、まで。
2作で同じなのは外枠です。作り手が遊び場を用意して人を入れ、冒険させる形は2作にあります。入り口と出口の作りは、その先で反対に分かれていました。
作り手が遊び場を用意する話は、幽遊白書にもあります。仙水編の天沼月人の遊熟者(ゲームマスター)です。天沼は、自分の能力で現実にしたゲームの規則で負けて命を落とした。のちに生き返っています。
作り手自身もゲームの中に入り、自分の規則に縛られる。カルバリ星の王子とも、グリードアイランドの作り手とも違う形です(→ 幽遊白書のテリトリーと念能力)。
グリードアイランドでは、死ぬかもしれない島に、出る道が規則として書かれている。そのおかげでプレイヤーは、自分の判断で入り、自分の判断で出られます。
まとめ|レベルEとグリードアイランドで同じなのは外枠だけ
- 「レベルEはグリードアイランドの元になった」という見方は、読者のレビューの推測。冨樫や集英社がこの関係を述べた資料は見つかっていない
- 同じ向きなのは、作り手が遊び場を用意して人を入れる外枠だけ
- 入り方は反対。カルバリ星は教室に入ると飛ばされ、グリードアイランドは本人が練を行って入る
- 出口も反対。グリードアイランドは規則の中に3つあり、カルバリ星の5人は王子の企みが崩れて帰った
- 王子は死なせないつもりで帰り方を渡さず、グリードアイランドは帰り方を書いて死の危険を残した
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