ネフェルピトーの性別は、キルアのたとえで決まるのか。女説が真っ先に挙げるのは、コムギを治すピトーをキルアが母親になぞらえた場面です(26巻 No.274)。
キルアの言葉はあくまでたとえです。単行本の本編に、ピトーを男とも女とも呼んだ言葉は見当たりません。男説の決め手とされる「彼」も、公式ガイドブックについての伝聞でした。男説と女説の根拠を、それぞれ原作と照らし合わせていきます。
※キメラアント編の結末に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ピトーの性別を男とする根拠|一人称「ボク」からガイドブックの「彼」まで
一人称の「ボク」と口調
男説でいちばんよく引かれるのが、一人称です。カイトについてゴンに告げる「ボクと闘った時、すでに死んだんだ」のように、ピトーは自分をボクと呼ぶ。口調や性格が男っぽい、という見方も同じ側に入ります。
ただ、ボクは自分の呼び方で、性別を言い当てた言葉ではない。口調が男っぽいかどうかも、読み手の受け取り方の話です。
キメラアントはオスが多い
男の側に寄せるファンサイトは、キメラアントのオス率の高さも理由に挙げている。作中に出てくる蟻の顔ぶれから推した話で、実在の蟻の生態とは別物です。
ただ、これは群れの傾向。蟻全体が男に寄っていても、ピトー1体の性別を言い当てたことにはならない。
名前の由来と、ガイドブックの「彼」
名前の由来を、エジプトの男神ネフェルテムに求める説もあります。ただ、冨樫が由来を語った記述は見当たらない。説は説のままで、性別の決め手にはなりにくい。
男説の材料で、性別をはっきり言い当てているのは『ハンターズ・ガイド』だけ。2004年6月に出た公式のガイドブックが、ピトーを「彼」と書いているという指摘です。
その指摘の出どころは、英語圏の書き込みや読者のコメント。どのページにどう書かれているかは示されていません。ハンターズ・ガイドには、本編と食い違う記述がほかにも見つかっている(→ ハンターズガイドと本編の食い違い)。
本当に「彼」と書かれていたとしても、それは本編の外の本の話。本編の中身は変わりません。
ピトーの性別を女とする根拠|コムギの看病から2011年版の声まで
コムギを看病する場面
女説で最も多く挙がるのは、コムギを看病する姿です。26巻 No.274 で、ゼノの攻撃で傷を負ったコムギを、ピトーが念で治している。そこに居合わせたキルアは、その姿を子どもを守る母親になぞらえました。
本編の言葉の中では、女説にいちばん近い材料。ただ、これはキルアのたとえで、ピトーを女と呼んだわけではない。看病する姿そのものも、男か女かを決める描写ではありません。
兵隊蟻は基本的にメス
あるアニメ解説サイトは、「兵隊蟻は基本的にメス」という話を女説の根拠に挙げています。実在の蟻なら、女王蟻も働き蟻もメス。この点は通説のとおりです。
ただ、キメラアントは実在の蟻と同じ仕組みでは描かれていない。女王が食べた生き物の特徴を子に移す、摂食交配で増える種です(→ メルエムはなぜ最強で生まれた?)。
しかもピトーは兵隊ではなく、王を守るために女王が産んだ護衛軍の1体(→ キメラアントの階級は何で決まったのか)。実在の兵隊蟻の性別を当てはめる根拠がありません。
28巻の表紙と「聖母戴冠」
同じサイトは、28巻の表紙も女説の根拠にしている。表紙に描かれているのは護衛軍の3体です(→ ハンターハンターの表紙は23巻で主人公4人から離れた)。
この表紙を、ベラスケスの「聖母戴冠」に重ねる読み方が広まっています。ピトーは聖母にあたる中央の位置にいる、とされる。
ただ、冨樫や編集部がモチーフを明かした記述は見当たりません。重ねる読み方が当たっていても、絵の役を当てはめることと性別を決めることは別の話。そもそも表紙は本編のコマではなく、単行本の外側の絵です。
2011年版アニメの声
キメラアント編がアニメになったのは、2011年版が初めて。ピトーの声は藤村歩が担当しました。女性の声優が演じたことを、女の根拠に挙げる読者の声もある。
けれど同じ2011年版で、ゴンを演じたのも女性の潘めぐみです(→ ハンターハンターのアニメ1999年版と2011年版)。男の子のゴンを女性が演じている以上、配役は性別の材料にならない。
ピトーの性別の根拠10個を出どころで分けると
ここまでの根拠を、出どころごとに分けるとこうなります。
| 根拠 | 挙げる側 | 出どころ | 性別を言い当てているか |
|---|---|---|---|
| 一人称が「ボク」 | 男説 | 本編のセリフ | いない |
| 口調・性格 | 男説 | 本編のセリフ | いない |
| キメラアントはオスが多い | 男説 | 作中の蟻の顔ぶれ | いない |
| 名前の由来が男神ネフェルテム | 男説 | ファンの説 | いない |
| ガイドブックの「彼」 | 男説 | 2004年の公式資料 | いるとされる |
| コムギを看病する姿 | 女説 | 本編の場面 | いない |
| キルアの母親のたとえ | 女説 | 本編のキルアの言葉 | いない |
| 兵隊蟻は基本的にメス | 女説 | 実在の蟻 | いない |
| 28巻の表紙と「聖母戴冠」 | 女説 | 単行本の表紙 | いない |
| アニメの声が女性 | 女説 | 2011年版アニメ | いない |
性別を言い当てているとされるのは、ガイドブックの1つだけ。本編の中にある4つは、どれも性別を書いた言葉ではありません。
俺が気になるのは、本編の中の材料どうしが食い違っていることです。一人称は男の側、キルアのたとえは女の側。本編の中だけで決めようとすると、材料が互いに打ち消し合う。
母親に見えた看病でピトーが守っていたもの
本編の中で性別にいちばん近づくのは、やはりキルアのたとえの場面。ただ、あのときピトーがコムギを治していたのは、王の命令でした(→ 護衛軍3体はメルエムの何を補ったのか)。ゴンが目の前に来ても、治療をやめていない。
いっぽうでピトーは、群れの母である女王の治療を、護衛軍には関係ないとして断ったとされます(→ キメラアントの女王は餌を5倍にして王を作った)。誰を治すかを決めているのは、母親らしさではなく王です。
覚醒したゴンとの戦いで、ピトーは胸の内で「殺されるのがボクで良かった」とつぶやく。王の身代わりになれた安堵と読まれることが多い言葉で、ここにも性別の話は出てきません。
キルアに母親を思わせた看病は、王のためにコムギを守りきろうとする姿でした。母親らしく見えたその場面も、ピトーの性別を決める材料にはならない。冨樫はピトーの性別を名指ししないまま、この場面を描いています。
まとめ|ピトーの性別の根拠と、その出どころ
- 単行本の本編に、ピトーを男とも女とも呼んだ言葉は見当たらない
- 本編の中の材料は、一人称の「ボク」、コムギの看病、キルアの母親のたとえ。どれも性別を書いた言葉ではなく、男寄りと女寄りに割れている
- 蟻の生態から出た根拠は「キメラアントはオスが多い」と「兵隊蟻はメス」。どちらも群れの傾向で、ピトー1体の性別は決まらない
- 28巻の表紙、2011年版の藤村歩の声、ネフェルテム説は本編の外の材料。性別を言い当てているのはハンターズ・ガイドの「彼」だけで、それも伝聞
- キルアが母親になぞらえた看病は、王の命令でコムギを守っていた場面だった
性別を言い当てた材料は、ガイドブックについての伝聞にしか見当たりません。本編に残っているのは、王の命令でコムギを治し続けたピトーの姿です。
関連記事:
- ネフェルピトーの念能力に“攻撃技”は一つもない — コムギを治した玩具修理者の中身
- 護衛軍3体はメルエムの何を補ったのか — 王の命令で動いた3体の役割
- コムギはメルエムと何が違ったか — ピトーが守った側の人物
- アルカの性別は本編で割れている — 呼び方で性別が割れるもう1人
- クラピカの性別より先に、原作はクルタ族を出す — 性別が名指しされないまま進む人物
