キメラアント編のトラウマはなぜ怖い?|挙がる7場面のうち6つは体の扱い

頭を開かれ、意識のあるまま念の知識を言わされるポックル。キメラアント編のトラウマ場面を挙げたまとめ記事は、どれもこの場面を入れています。

まとめ記事4つが挙げた場面は、全部で7つ。その書き方を見ると、6つは誰が死んだかより、体がどう扱われたかを怖がっています。死だけが衝撃として書かれたのは、ネテロの最期1つでした。

もう1つ、ノヴの場面も変わった入り方をしています。誰にも触れられないまま髪が白くなったのに、体の側でトラウマに挙がっていました。

※キメラアント編の結末までの内容に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

キメラアント編のトラウマで、ポックルの脳と肉団子が外れない理由

ポックルの脳は、4つのまとめ記事すべてに出てくる場面です。19巻 No.198で、ネフェルピトーに頭を開かれ、脳を直接いじられて念の知識を言わされます。マグミクスは「生きたまま脳を解剖されたポックルのシーン」と書いていました。

怖さの出どころは、ポックルが死ぬことではありません。意識の残った体から、頭の中身だけが敵へ抜き出されていく。用が済んだ体は肉団子にされ、女王の餌になりました。ハンター試験で顔を覚えた人物だからこそ効く場面です。その役回りはポックルは”蟻編の戦犯”なのか?で掘り下げています。

肉団子は、4つのうち3つが挙げています。人間を団子状にして、女王の餌にしたものです。女王は1日に人間50人分を食べ、王を宿してからは250人分まで増えました。コロニーには人間の処理場があり、ブタの姿をした蟻が団子作りを受け持っています。

Real Sound は「大量の人間を肉団子にし、捕食する様子はなんとも不気味だ。」と書いています。ここで死ぬのは名前のない人たちで、誰の死かは問われていません。怖がられているのは、人の体が食べ物の形に変えられていく流れのほうでしょう。女王がそれだけの量を求めた理由はキメラアントの女王は餌を5倍にして王を作ったで扱いました。

誰が死んだかより、体がどう扱われたか

トラウマ場面を挙げたまとめ記事は4つあります。2022年11月のマグミクスとアナブレ、2023年12月の Real Sound、2024年5月のアニガラ。キメラアント編の場面だけを拾うと、重なりを除いて7つになります。

怖さの理由は、大きく2つに分けられる。主要な人物が死んだこと自体の衝撃か、体が壊されたり別のものに変えられたりする描き方か。どれか1つの記事でも体の壊れ方や変わり方に触れていれば、その場面は体の側に数えます。

俺がいちばん意外だったのは、カイトの扱いでした。主要人物の死なので、死そのものの衝撃で挙がるはずの場面です。ところが4つとも、腕がちぎれた瞬間か、死んだあとの体を挙げていました。

マグミクスが挙げたのは「カイトの腕が一瞬にしてちぎれた描写」。アナブレは、人形として再登場する場面です。アニガラは死の怖さにも触れつつ、右腕を持っていかれた場面と、カイトの頭を抱えるピトーを挙げています。カイトほどの人物でも、記事に残ったのは死より体のほうが多いと言えそうです。

キメラアント編のトラウマ7場面を、体の扱われ方で分ける

ノヴとネテロを除く5場面は、まとめ記事が何を怖がったかで3つに分かれます。壊される、食べ物や道具に変えられる、生まれ方で壊す。分ける基準は、記事が怖さとして書いた点です。

場面 挙げたまとめ 体に起きたこと 分け方
ポックルの脳 4 頭を開かれ、脳をいじられる 壊される
カイト 4 右腕を切られ、死後に体を継ぎ合わされる 壊される/道具に変えられる
肉団子 3 団子状にされ、女王の餌になる 食べ物に変えられる
ポンズ 1 銃で撃たれ、食べられる 食べ物に変えられる
メルエムの誕生 1 女王の腹が内側から破られる 生まれ方で壊す
ノヴの変化 1 髪が白くなる ―
ネテロの最期 1 書かれ方は死の衝撃 ―

ポックルも、最後は肉団子にされています。ただ、4つの記事が挙げたのは脳の場面なので、壊される側に入れました。カイトは腕と死後の体の両方が挙がっているため、2つにまたがります。

19巻にはポックルの脳、ポンズの最期、カイトの死がまとめて入っている。壊される側と食べ物に変えられる側が、1冊にそろう巻です。

食べ物や道具に変えられる側で怖がられているのは、体が本人のものでなくなっていく描き方です。アニガラはポンズの最期を「ギョガンに銃で撃たれ、さらに内臓を食われる死に方はトラウマものでした。」と書きました。Real Sound はカイトを「改造人間にしてしまうシーン」として挙げています。

カイトの体は、ピトーの玩具修理者(ドクターブライス)で継ぎ合わされました。そのうえで、別の念人形が操り人形のように動かしています。体がそのあとどこへ行ったかはハンターハンターの遺体と墓で扱っています。

生まれ方で壊すのは、メルエムの誕生です。マグミクスは「自身の母の腹を突き破り誕生したシーン」として挙げました。王は出産の日を待たず、女王の腹を内側から破って生まれています。

女王は内臓をほとんど損なって助からなかった。ピトーは、女王は護衛軍とは関係がないとして治療を断っています。ここで体を壊したのは敵ではなく、女王が産んだ子でした。

ノヴの白髪は、誰にも触れられずに体が変わった例外

ノヴの変化は、上の3つのどれにも収まりません。ノヴは宮殿に1人で潜入し、絶の状態でシャウアプフのオーラを目にしました。それだけで戦う気持ちが折れ、黒かった髪が白く変わって、前線から離れています。

殴られても、切られてもいない。誰の手も触れていないのに、体のほうが勝手に変わった。マグミクスはこれを「ノヴの劇的すぎる変化」と呼び、トラウマに挙げています。変わり方が、本人の意思とまったく関係ないところで起きたからだと思います。

ノヴは死んでいないし、怪我もしていません。それでも体の側に入るのは、自分の体が自分の思いどおりにならなかった場面だから。前線を離れたあとも、ノヴの念は負傷者を運ぶ扉として働き続けました。その扉の使われ方は念能力の連携は3つに分かれるで扱っています。

ネテロの最期は、体がいちばん壊れたのに死の衝撃として挙がる例外

7場面のうち、死の衝撃として書かれたのはネテロの最期だけです。マグミクスは「『最強と呼ばれたネテロが死ぬなんて……』と、読者の間に衝撃が走りました。」と書いています。3つの分け方から外れる、ただ1つの場面です。

ところが体の壊れ方で比べると、ネテロがいちばん重い。メルエムとの戦いで右足を切られ、続いて左腕をもぎ取られました。最後は体の中に仕込んだ貧者の薔薇を、自分で心臓を止めて起爆させています。

それでも記事に残ったのは、体ではなく「最強が死んだ」ことでした。違いは、最後に体を壊したのが誰かという点です。

足と腕はメルエムに奪われました。けれど最後に体を爆弾として使うと決めたのは、ネテロ本人です。体の中の薔薇は、王と戦う前から抱えていたもの。この兵器の仕組みは貧者の薔薇は安いから手放せないで整理しています。

トラウマになるのは、本人が選ばずに体を変えられた場面

2つの例外を比べると、トラウマかどうかを分けている点が見えてきます。ノヴは誰にも触れられていないのに、トラウマの側に入った。ネテロは体が最も壊れたのに、死の衝撃の側に入っています。分けているのは、壊れ方の大きさではありません。

分かれ目は、その変化を本人が選んだかどうかだと考えられます。ポックルは頭を開かれることを選んでいないし、肉団子にされた人たちも同じです。女王も、出産の日を待たない王に腹を破られました。カイトは死んだあとで体を継ぎ合わされ、人形として動かされています。

自分で選んだ体の傷は、メルエムにもあります。コムギとの賭けを取り下げ、自分の左腕を引きちぎった場面です。この場面を挙げた記事は4つの中になく、選んだ側の傷はトラウマに数えられていません。

ネテロも、最後の一手を自分で選んでいました。だから記事も、その場面を「体の扱い」ではなく「死」として書いたのでしょう。冨樫がこの編で描いた怖さは、死者の数より、選べないまま体を変えられることにあったと読めます。トラウマとして名前が挙がるのも、そういう場面です。

まとめ|キメラアント編のトラウマと体の扱われ方

  • まとめ記事4つが挙げたキメラアント編のトラウマは7場面。書き方を見ると、6つは誰が死んだかより、体がどう扱われたかで怖がられている
  • ノヴとネテロを除く5場面は、壊される(ポックル・カイトの腕)、食べ物や道具に変えられる(肉団子・ポンズ・カイトの体)、生まれ方で壊す(メルエムの誕生)の3つに分かれる
  • ノヴは誰にも触れられずに髪が白くなった。体が本人の意思と関係なく変わったので、体の側に入る
  • ネテロは体が最も壊れたのに、死の衝撃として挙がる。最後に体を爆弾にしたのは本人の選択だった
  • トラウマかどうかを分けているのは壊れ方の大きさではなく、その変化を自分で選べたかどうか

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