ディーゴ総帥の本物と影武者|国を動かす名前だったのは本物ではない体

21巻で宮殿に乗り込んできた王メルエムに殺されたマサドルディーゴ総帥は、本物ではなかった。30巻で、「本物」と説明書きの付いた別のディーゴが出てくるからです。

ディーゴ総帥として画面に出た体は、21巻の独裁者、ピトーに操られた体、30巻の本物の3つ。国を動かす名前として使われたのは最初の2つで、本物は国の側に何もしないまま出てきます。

※キメラアント編(21巻〜30巻)の内容に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

ディーゴ総帥(21巻)は、女性と酒に溺れていたとされる独裁者

21巻に出てくるディーゴ総帥は、毎日女性と酒に溺れて暮らしていたとされる独裁者です。実際の政治は、長官のビゼフが代わりに回していた(→ ビゼフ)。

その宮殿に、キメラアントの王メルエムが乗り込んでくる。総帥は、自分の神通力で天罰を下す、と王の前で喚いた。そしてそのまま殺されます。

俺がこの総帥でまず目を留めるのは、自分では政治をしていない点です。それでも国は「総帥」の名前で動いていた。中身より名前のほうが、国にとって大事だったように見えます。

総帥の体はピトーに操られ、選別の招集に使われた

殺された総帥の体は、ピトーに修復され、操られた(→ ピトーの念能力)。

蟻たちは、この体の権力と支配力を使います。総帥の名前で国民を集め、念能力者を選り分けて王の食料や兵にする「選別」の準備を進めた。国民は、総帥がすでに死んでいることを知らないまま呼び出されていく(→ 東ゴルトーの鎖国体制)。

ディーゴ総帥の名前で国が動いた2つの体

国を動かす名前として使われた2つの体を比べると、次のようになります。

体 出てくる巻 中身 総帥の名前で動いたもの
21巻の独裁者 21巻 政治をしない独裁者 ビゼフが回す行政
ピトーに操られた体 21巻以降 死体 選別のための国民の招集

どちらも、総帥本人が国を動かしているわけではない。独裁者のときは長官が、死体のときは蟻が、総帥の名前を使って国を動かしています。

本物のディーゴは、晴耕雨読の暮らしの中で詩を添えられる

この表に入らないのが、30巻 No.315「帰郷」に出てくる本物のディーゴ。説明書きは、某国で晴耕雨読の生活30年目に入った、というものです。

本物は、東ゴルトーとNGLの事件を報じるニュースを見終わると、テレビを消す。そこに、民明書房の『人といふもの』から引いた体裁の詩が添えられる。民明書房は架空の出版社で、詩は冨樫のオリジナルとされます。

描かれた場面で、本物は国の側に何もしていない。命令も発表もせず、自分の言葉で国を語ることもありません。総帥として画面に出たのに、総帥の名前で何かを動かすことのない、ただ1つの体。

ファンの間では、この本物を「権力欲のない隠居」と読む説と、国民が殺されたニュースを切った「真の悪」と読む説がある。どちらも本編では語られない、読者の側の読み方です。

コムギの寝言の「4-7-1帥」は、体の無い「帥」

本物の場面の1話前、30巻 No.314「説得」の最後に1コマがある。コムギが寝言で「4-7-1帥」とつぶやく場面だ。軍儀の手で、「帥」は軍儀の王にあたる駒(→ 軍儀)。

ファンの間では、この手を本物の総帥が生きていたことにつながる合図と読む見方もある。総帥が死んだはずの話の終わりに「帥」の字が出て、次の話で本物が現れる並びだからです。本編がこの手と本物を結びつけているわけではない。

それでも、この1コマには体が無く、「帥」という名前だけが出てくる。体を持たない名前が盤の上で動く場面が、本物の現れる直前に置かれています(→ コムギ)。

ディーゴ総帥は、本人より席の名前に近かった

説明書きどおりなら、本物のディーゴは30年近く前から国を離れていたことになる。そのあいだ東ゴルトーは、本物ではない総帥のもとで回っていた。その総帥が殺されたあとも、ピトーに操られた体で回り続けている。

国を動かすのに要ったのは、総帥の名前と、それを名乗る体でした。中にいるのが本物でも、本物ではない独裁者でも、死体でも、国民の側からは同じ「総帥」に見えていた。

だから本物は、国の側に何もしないまま出てきても話が成り立つ。ニュースを消し、詩とともに座っている本物の姿。そこから、総帥という席が本人のいないまま30年近く使われていたと読めるようになります。

3つの体を比べると、東ゴルトーの「総帥」は人より席の名前に近い。本物がその席を30年近く空けていたことこそ、この国のいちばん奇妙なところだと、俺は思います。

まとめ|ディーゴ総帥の本物と影武者

  • ディーゴ総帥として画面に出た体は、21巻の独裁者、ピトーに操られた体、30巻の本物の3つ
  • 21巻で王に殺された総帥は、30巻で「本物」の説明書きが付いたディーゴが出てくるので、本物ではなかったことになる
  • 総帥の名前で国を動かしたのは、独裁者のときは長官ビゼフ、死体のときは蟻だった
  • 本物は描かれた場面で国の側に何もせず、本から引いた詩とともに出てくる
  • 説明書きどおりなら総帥の席は30年近く本物を欠いたまま使われていて、総帥は人より席の名前に近かったと読める

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