ヒソカの語尾に付く♥♠♦♣のマークを、冨樫は「勘」で付けていると話している。決まった意味を当てる説はネットに多い。けれど冨樫が認めたのは、ハートが気に入った相手に寄る感覚だけ。キレたフェイタンが話す漢字のような言葉にも、母語だという説があります。その出どころは、38巻の過去編でもまだ語られていない。
俺が2016年の対談と本編の場面を当たった範囲では、意味の説6つのうち、裏づけが取れたのは♥の一部だけでした。
※天空闘技場編・キメラアント編・王位継承編までの場面と、冨樫の対談に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ヒソカの語尾のマーク|♥は好意、♠は殺意という意味づけ
ヒソカの台詞の語尾には、♥♠♦♣のトランプのマークがよく付く。ゴンに話しかけるときも、戦いの最中も同じ。この4つに感情の意味を当てた説が、ネットでは広く出回っています。
トランプの解説サイトの一つは、♥を「高揚、好意、期待」、♠を「怒り、殺意、真剣」とする。♦は「冷静さや分析」、♣は「軽い挑発、ユーモア」。そのうえで「冨樫先生は決して気まぐれで書いているわけではありません」と言い切っている。ただし同じページは、法則が公式に明かされたわけではないとも断っています。
別の解説サイトでは、♠が「敵意」、♥が「好意」。ここまでは同じ向きです。けれど♦は「中立的な態度」、♣は「無関心」で、残り2つの意味がずれる。このページは、冨樫が法則性を否定したことも合わせて紹介していました。
冨樫は対談で、ヒソカの語尾の記号を「勘」と答えた
意味づけの中身は、書く人によって割れています。どこかに決まった法則が書かれていて、それを写したのなら、こうはなりにくい。冨樫本人の言葉は、その法則が無いほうに寄っていました。
マークの話を冨樫が自分でしたのは、2016年6月に少年ジャンプ+で公開された石田スイとの対談です。石田が、マークに法則性はないのかと尋ねる。冨樫の答えは「あれは勘でやってますからね(笑)。」でした。
石田が「特に決まりはないんですか?」と重ねると、冨樫は「ほとんどないですね。」と答え、こう続けています。
「ただ、ハートはヒソカがお気に入りの人に対して使うみたいな感覚はあると思います。クローバーとダイヤはどうやって使い分けているのか、僕の中でも一切ないですね。」
「一切ない」と言ったのは、クローバーとダイヤの使い分けについて。スペードには触れていません。4つ全部の意味を打ち消したわけではないのです。
石田はこのあと、自分の読みを話します。ダイヤは「真面目な時」、クローバーはヒソカが「思考を巡らせている時」に多い、という分析。冨樫はそれを打ち消さず、「自分の勘に従ってやっていると、もしかしたらそういう傾向が出ているのかもしれませんね。」と返しました。
冨樫は決まりを否定しても、勘で付けた結果として偏りが出ている見込みまでは否定していない。ただ、石田の読みは真面目な話と考えごとの場面です。ネットの説の「冷静・分析」「挑発・ユーモア」とも、「中立」「無関心」とも、中身が合いません。
ハートは好意に寄るが、とどめを刺す台詞にも付く
♥=好意の説だけは、冨樫の言葉と向きが合います。ただ、台詞をたどると、この説もきれいには当てはまらない。
ハートは、ゴンやマチ、クロロへの台詞に付いています。どれもヒソカが目をかけている相手で、「お気に入りの人に」という冨樫の言葉とそろう。
一方で、天空闘技場で戦ったカストロにとどめを刺す場面の台詞にも、ハートが付いています。「キミの敗因は容量(メモリ)のムダ使い♥」。1つの台詞の中で♣と♠と♥が混ざる例もある。♥を「好意」の一語で読むと、相手を殺す台詞に付いたハートの説明がつきにくいのです。
原作に合うのは、冨樫が台詞の調子に合わせて勘で付けた印として、マークを読むことです。ハートが気に入った相手に寄るのは、冨樫自身も感じている。けれど、1つずつのマークに決まった感情が割り当てられているわけではありません。
ヒソカの採点の数字も、強さの順位として読む根拠は原作にありません。ヒソカが何を測っているのかは、点数でも語られていない(→ ヒソカの点数(95点・90点)の意味)。マークも同じで、何に心が動いたかを読者が細かく決められる形にはなっていません。
フェイタンの話し方|キレると変わる言葉は母語なのか
フェイタンは普段、語尾の崩れた片言で話します。その話し方が変わるのが、22巻のザザン戦(No.228〜229)。深手を負って怒ったフェイタンは、漢字に似た文字の言葉で話しはじめます。
この場面から生まれたのが、「あの言葉がフェイタンの母語だ」という説です。ある解説サイトは、あの言葉を「おそらく」フェイタンのネイティブ言語とする。そこから、流星街の生まれではなく、5歳前後を過ぎてから流星街に来たと推察しています。別の解説サイトには、この言葉を話す地方が本当の出身地だとする書き方もある。
本編で確かめられることは、思ったより少ない。22巻の場面では、言葉が変わることは描かれても、何語か、どこで覚えたかの説明はありません。
38巻の旅団の過去編(No.395〜397)には、幼いフェイタンも出てきます。けれど、言葉の出どころはここでも語られない。36巻には、フェイタンと似た訛りで話す人物もいます。シャ=ア一家のソンビンです。ただ、2人のつながりは本編では語られていません。
本編から言えるのは、フェイタンが流星街で育った旅団の結成メンバーだということまで。生まれた場所は描かれていません。母語説は、あの言葉の正体に答えを出そうとした読みです。誤りと決まったわけではないものの、裏づける描写は本編にまだ無い。
本編の描き方に沿うなら、あの言葉は出身の手がかりより、フェイタンが冷静さを失った合図として読めます。普段の片言が消えて別の言葉に変わる瞬間に、怒りをきっかけに能力が動き出す。言葉の切り替わりと能力の発動が、同じ場面に重なっています(→ フェイタンの念能力は“痛みが燃料”)。
2011年版アニメでは、この台詞は日本語の字幕を逆から読んだ音だと、視聴者のあいだで指摘されています。原作の文字とは別の話です(→ アニメ1999年版と2011年版)。
意味の説6つを、冨樫の言葉と本編に照らす
ヒソカのマーク4つとフェイタンの2つ、合わせて6つの説です。
| 意味の説 | 冨樫の言葉・本編 | 裏づけ |
|---|---|---|
| ♥は好意・高揚・期待 | 「ハートはお気に入りの人に」 | 好意の一部だけ |
| ♠は怒り・殺意・敵意 | 冨樫は触れていない | 無い |
| ♦は冷静・分析・中立 | 使い分けは「一切ない」 | 無い |
| ♣は挑発・ユーモア・無関心 | 使い分けは「一切ない」 | 無い |
| キレた言葉はフェイタンの母語 | 22巻・38巻とも説明なし | 無い |
| 流星街の生まれではない | 本編は流星街で育ったところまで | 無い |
6つのうち、冨樫の言葉で裏づくのは♥の「好意」の一部だけです。それも、「もしかしたらそういう傾向が出ているのかもしれませんね」という冨樫の一言と合わせて読む必要がある。冨樫はマークに偏りが出ている見込みを残していて、全部を否定したわけではありません。
裏づけが無いことと、誤りであることは違います。フェイタンの出身は、この先の本編で明かされるかもしれない。ただ、今の時点では、♥の一部を除けば、6つの説は冨樫の言葉にも本編にも根拠が無い。どれも、読者が場面から後で組み立てた読みです。
ヒソカの語尾とフェイタンの話し方は、決まりより人物の調子を伝えている
ヒソカのマークも、フェイタンの言葉の切り替わりも、決まった意味を伝えるための仕掛けではなさそうです。冨樫がはっきり口にした決まりは、ハートを気に入った相手に寄せる感覚ひとつ。残りは勘で付けた結果で、傾向が出ているかもしれない、と冨樫は言うだけでした。
それでも、意味の説はいくつも生まれた。俺は、記号や言葉が変わる場所が、人物の気分が動く場所とそろっているからだと思う。ザザン戦でフェイタンの言葉が変わったのは、怒りで能力が動き出すのと同じ場面でした。
ヒソカの気まぐれな性格は、能力の作りにも出ています(→ ヒソカの念能力(バンジーガム・ドッキリテクスチャー))。冨樫が勘で付けたマークにも、フェイタンの見慣れない文字にも、読者は1つずつ意味を割り当てるほど読み込んできた。俺は、それだけ2人の台詞の調子が読者に届いている、ということだと思います。
まとめ|ヒソカの語尾とフェイタンの話し方
- ヒソカの語尾のマークに感情の意味を当てる説は、サイトによって♦と♣の意味が割れている
- 冨樫は2016年の石田スイとの対談で、マークは「勘」で決まりは「ほとんどない」と答えた。「一切ない」はクローバーとダイヤの使い分けの話で、勘の結果として傾向が出ている見込みも残している
- マークは冨樫が台詞の調子に合わせて勘で付けた印で、ハートだけは気に入った相手に寄る。とどめを刺す台詞にも付くので、♥=好意とは決められない
- フェイタンのキレたときの言葉が何語か、どこで覚えたかは、22巻でも38巻の過去編でも語られていない。言葉の切り替わりは、出身の手がかりより冷静さを失った合図として読める
- 意味の説6つのうち、冨樫の言葉で裏づくのは♥の「好意」の一部だけ
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