ビノールトが咬ませ犬なのは前半だけ|倒されたあとの出番は扱い方の場面

ビスケに倒されるまでのビノールトは、たしかに咬ませ犬です。ただ、出番の後半は、ゴンたちが彼をどう扱うかが決まっていく場面で埋まっている。

場面で数えると9つ。そのうち5つは、倒されたあとに置かれていた。

※グリードアイランド編(14巻)の内容に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

ビノールトと切り裂き美容師|「ただの咬ませ犬」という通説

ビノールトは、グリードアイランドでゴンたちを狙った賞金首ハンター。ビスケのセリフによれば、本人も賞金首です。念能力は「切り裂き美容師(シザーハンズ)」。ハサミで切った髪を食べて、相手の肉体の情報を読む。

この人物を咬ませ犬と見る感想は、実際にある。ある考察ページは「言ってしまえばただの咬ませ犬だったようにも思えます」と書いている。ビスケに敗れたあとはゴンやキルアの練習台にされた、とも続ける。かませ犬キャラを集めたランキングの記事でも、ランク外の候補に名前が挙がっていました。

つまり通説は、倒される場面だけでなく、修行の相手にされた後半まで咬ませ犬の側に数えている。ただし同じページは「最後のシーンがなければ本当に咬ませ犬でした」とも書き、最後の場面だけは外しています。

ビノールトの出番を、場面で追う

出番は No.136 の最後から No.139 まで。場面で分けると、次の順に進みます。

  1. 遠くからゴンたちを窺う、ハサミを持った男の影
  2. 殺気に気づいたビスケが、自分を囮にして二手に分かれる
  3. ビスケの髪を食べ、実年齢と鍛えた肉体を知って戦慄する
  4. ビスケに完敗し、命だけは取り留める
  5. ビスケが「Dランク」と評価し、ゴンとキルアの修行相手に決める
  6. 岩を盾にするゴンの作戦に押され、かわすことに徹する
  7. とどめを刺しかけたキルアを、ゴンが止める
  8. 夢の中で、スラムの子どもだった頃を見る
  9. 10日後、2人に勝てなくなって膝をつき、自首を申し出る

髪からビスケの実年齢を読み取る場面は、高齢の念能力者の描かれ方として別に詳しく見た(→ 高齢の念能力者の年齢はどう描かれたか)。

咬ませ犬に当たるのは、ビスケに完敗するまで

通説とぴったり重なるのは、影で登場してからビスケに完敗するまで。強そうに出てきて、能力で相手を読み、主人公の側の強さを見せて退場する流れです。

しかも、髪を食べて読み取ったのはビスケの強さでした。自分の能力で、相手が格上だと知らされている。この前半は、咬ませ犬という言い方がそのまま当てはまる。

俺がこの人物で面白いと思うのは、ここで出番が終わらないところ。普通なら完敗した時点で退場する役です。ところが、そのあとに5つの場面が続く。

ビノールトのその後|修行相手から自首の申し出まで

通説は、この後半も「練習台」として咬ませ犬の側に入れていました。けれど場面を追うと、後半で決まっていくのはビノールトの扱いのほう。決める人が、場面ごとに替わる。

最初に決めたのはビスケ。2週間、2人の攻撃をかわしきれば見逃す、という条件で、彼をゴンとキルアの実戦の相手にした。2人だけで出会っていたら殺されていた相手を、修行に使う判断です。

次に決めたのはゴン。キルアがとどめを刺そうとした寸前に止め、1対1で勝てるまで続けるつもりでいた。ビノールトにも休むように声をかけています。

最後は、ビノールト本人の申し出。10日後、2人に勝てなくなった彼は「殺せ」と膝をつく。そのうえで、ゲームを出たら自首すると申し出て、ビスケがそれを受けて見逃した。2週間の条件の途中で折れたことになります。

申し出の前には、ゴンの言葉がありました。殺すつもりはなく、相手をしてくれたことに礼を言う。スラムの夢で、彼は親切にしたのに殴られた子どもの頃を見ていた。真っ直ぐに礼を言われたことが、自首の申し出につながったと読めます(→ ハンターハンターの自白と尋問)。

冨樫がビノールトに持たせたのは、ゴンたちの扱い方を見せる役

ビノールトは、倒された場面だけを見れば咬ませ犬です。それでも、9つの場面のうち5つは倒されたあとに置かれている。

その5つで描かれたのは、3人の扱い方でした。ビスケは、倒した相手をすぐ修行の材料にする。キルアはとどめを刺しにいく。ゴンはそれを止めて、礼まで言う。同じ賞金首を前にして、3人の態度がはっきり分かれます。

賞金首ハンターが賞金首でもあるという設定も、追う側と追われる側を行き来するこの役によく合う(→ ハンターの種類は数えられない)。冨樫は、倒されて終わるはずの相手に、倒されたあとの出番を与えた。俺は、そこで見せたかったのがゴンたちの人柄だったと思う。負かした相手をどう扱うかで、3人の違いが一度に分かるからです。

まとめ|ビノールトは咬ませ犬だったのか

  • 「ただの咬ませ犬」という通説は実在し、修行の練習台にされた後半まで咬ませ犬の側に数えている
  • 咬ませ犬がそのまま当てはまるのは、影で登場してビスケに完敗するまでの前半
  • 後半は、ビスケが修行相手に決め、ゴンがとどめを止め、自首の申し出をビスケが受けて見逃す場面で埋まる
  • 自首はビノールト本人の申し出で、ゴンの感謝がそこにつながったと読める
  • 9つの場面のうち5つは倒されたあと。そこでは、ゴンたちが負かした相手をどう扱うかが描かれている

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