ハンター試験編は、念が出てくるまでの前置きではありません。主人公4人がヨークシン編から選挙編までに追う主な目的は9つ。そのうち6つは、ゴンが島を出る No.001 から最終試験までのあいだに、すでに口にされています。
残る3つは後の編で初めて出てくるもので、数え方しだいでは5対4まで縮む。それでも4人の出発点は、どれも試験編の中にありました。ジンを探すゴン、幻影旅団を追うクラピカ、医者を目指すレオリオ、家を飛び出したキルアです。
念の無い試験編は、4人に目的を口に出させる編として組まれていたように見えます。
※ハンター試験編から会長選挙・アルカ編までの内容に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ハンターハンターの最初がつまらないと言われる試験編には、念が出てこない
序盤への不満は、実際に書かれています。つまらん.com(2025年1月)は「序盤が面白くないと感じる人も少なくありません。」と書き、「一般的に、天空闘技場編以降が面白いと評判です。」と続けている。どこから面白くなるかの答えは、ゴンとキルアが念に出会う天空闘技場編です。
ハンター試験編には、念がまだ出てこない。マラソン、料理、島でのプレートの奪い合いと、試験の形も見慣れたものが続きます。試験が何を見ていたかはハンター試験は強さを測る試験?で確かめました。俺も最初に読んだときは、仲間がそろうまでの助走だと思っていた。
ところが読み返すと、試験の途中で4人が自分の目的を口にする場面が、思っていたより多い。しかもその目的は、念が出てきたあとの編で、そのまま4人を動かしていきます。
ハンター試験編で、主人公4人が口にした目的
ゴンの目的は、1巻の最初の話で出てくる。くじら島で出会ったカイトから、父のジンが生きていると聞かされます。ゴンはジンを探すために、ハンターを目指して島を出た。
クラピカは、試験会場へ向かう船の上で、船長に志望の理由を聞かれる。答えは、自分はクルタ族の生き残りで、同胞を皆殺しにした幻影旅団を捕まえるため。1次試験のマラソンの最中には、仲間の眼を取り返すことも目的に挙げています。
クルタ族の眼は、感情が高ぶると鮮やかな緋色に変わる。この緋の眼が、のちにクラピカが取り戻そうとする「仲間の眼」です。
レオリオは、同じ船の上では「金のため」と答えていた。本当の理由を明かすのは、1次試験のマラソンの最中。友人を病気で亡くしたこと、手術代が法外だったこと、だから医者になろうと思ったこと。この3つを、走りながら打ち明けています。その後の歩みはレオリオはまだ大金を手にしていないで追いました。
キルアは、試験の途中で乗った飛行船の中で、ゴンに家のことを話す。家族全員が暗殺を仕事にしていて、母親と兄を刺して家を出てきた、と。最終試験では、ギタラクルに化けていた兄のイルミと向き合う。殺し屋として生きろと押され、降参しました。その後ボドロを刺し、失格になっている。キルアとヒソカを試験の序盤に出すことは、連載の前から決まっていました(ハンターハンターの構想は3話分だけ?)。
クラピカ・レオリオ・キルアが目的を口にしたのは、移動の時間
3人の場面には、共通点があります。目的を口にしたのは、どれも移動している時間だった。会場へ向かう船、地下道をひたすら走るマラソン、試験のあいだの飛行船です。
3つとも、誰かと戦う場面ではない。乗るか走るかしているあいだに、会話が入ります。念の無い試験の形は、4人が互いの事情を話す時間を作っていたように見える。
キルアの最終試験だけは、移動の時間ではありません。ただしここでキルアは目的を口にしておらず、家から離れたい気持ちをイルミに押し戻されている。目的を言葉にした場面は飛行船のほうで、最終試験はその目的が試された場面です。
ゴンだけは、試験の前に目的が決まっています。カイトから聞いた話が、そのまま出発の理由になった。残る3人の目的は、試験の道中で1人ずつ明かされていきます。
ヨークシン編から選挙編で、4人が追った目的を数える
数える範囲は、ヨークシン編・グリードアイランド編・キメラアント編・選挙編の4つ。1人1編につき、主な目的を1〜2個拾います。ゴンとキルアの2人の同行も、1つの目的として数える。試験編は、ゴンが島を出る話から最終試験までです。
ゴンのジン探しは2つに分けています。グリードアイランドに入る段階と、選挙編で実際に会う段階とで、中身が変わるからです。
| 目的 | 誰の | 初めて口にした編 | その目的で動いた編 |
|---|---|---|---|
| ジンを探してグリードアイランドへ入る | ゴン | 試験編 | ヨークシン編〜グリードアイランド編 |
| ジンに会う | ゴン | 試験編 | 選挙編 |
| 幻影旅団と仲間の眼 | クラピカ | 試験編 | ヨークシン編 |
| 家とイルミの支配から離れる | キルア | 試験編 | キメラアント編 |
| 医者になる | レオリオ | 試験編 | 選挙編 |
| 2人で一緒に動く | ゴンとキルア | 試験編 | ヨークシン編〜キメラアント編 |
| 旅団の懸賞金で資金を作る | ゴンとキルア | ヨークシン編 | ヨークシン編 |
| カイトへの負い目 | ゴン | キメラアント編 | キメラアント編 |
| アルカの力を借りてゴンを救う | キルア | 選挙編 | 選挙編 |
試験編で口にされた目的が6つ、後の編で初めて出てきた目的が3つ。境目は近く、数え方で動きます。2人の同行を目的に数えなければ5対3、懸賞金狙いを2件に割れば5対4です。
キルアの欄にも注意が要る。頭に刺さっていたイルミの針をキルアが抜くのは、21巻のキメラアント編です。試験編で描かれたのはイルミに押されて降参する場面までで、針そのものはまだ出ていません。針の場面はキルアはイルミの針が抜けても逃げるで扱っています。
レオリオは、選挙編では医大生として登場する。ジンを殴った一件から票が集まり、会長候補の筆頭に押し上げられる。ただ、本人が目指したものではありません。目的として続いているのは、医者のほうです。
後から出てきた3つのうち2つも、試験編の目的の延長にあります。カイトはゴンが島を出る前に出会った人物で、アルカはキルアが飛び出した家の中にいた。まったく新しく足された目的は、懸賞金狙いの1つだけです。
ヒソカの44番は、試験編で始まり天空闘技場で返し終わった借り
試験編から持ち越されたものには、ヨークシン編より前に返し終わった例外もあります。ヒソカがゴンに渡した44番のプレートです。
4次試験の島で、ゴンは釣り竿でヒソカの44番を取った。そのあとゲレタの毒の吹き矢で動けなくなり、そのゲレタを倒したのがヒソカでした。ヒソカは「今のキミはボクに生かされている」と告げます。44番はゴンに持たせたまま。ゴンが自分の顔に一発入れたときに受け取る、と言い残した。島でのプレートの流れはハンター試験4次試験のプレート争奪戦にまとめました。
ゴンがこの借りを返すのは、念を覚えたあとの天空闘技場。ヒソカの顔に一撃を入れ、44番を返しています。
念の無い試験編で生まれた借りが、念のある編で返された。4人の目的は試験編のあともずっと続くのに、ヒソカの借りは天空闘技場で一度閉じています。試験編から持ち越されたものの中で、途中で返し終わった例です。
冨樫がハンター試験編に持たせた役割
ハンター試験編で冨樫が描いたのは、4人が旅を続ける理由だったと読めます。念が出てくる前に、4人はそれぞれの目的を言葉にしている。念が出てきてからの編は、その目的を果たしに行く旅になりました。
後から出てきた目的は3つあり、境目は近い。それでも、ヨークシンでクラピカが旅団を追うとき、読者はその理由を試験編で聞かされている。グリードアイランドでゴンがジンを追うときも同じです。
冨樫は念の無い試験編を、4人に目的を口に出させる場として使ったのではないか。試験編は前置きではなく、そこから先の話が始まる編だというのが、俺の受け取り方です。
まとめ|ハンターハンターの最初はつまらない?試験編で口にされた4人の目的
- 「序盤が面白くない」「天空闘技場編以降が面白い」という声は実際にある。試験編には念が出てこない
- ゴンはジン、クラピカは幻影旅団と仲間の眼、レオリオは医者、キルアは家とイルミ。島を出る話から最終試験までのあいだに、4人の出発点がそろう
- クラピカ・レオリオ・キルアが目的を口にしたのは、船・マラソン・飛行船という移動の時間だった
- ヨークシン編から選挙編の主な目的9つのうち、試験編で口にされたのは6つ。数え方では5対4まで縮むが、後から出てきた3つのうち2つも試験編の目的の延長にある
- ヒソカの44番は、試験編で生まれて天空闘技場で返し終わった借り。後の編まで続く4人の目的とは別の動き方をしている
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