3組とも同じ条件でそろっているのに、1組だけ語られている中身が違う。
ブラックホエール号に乗ったカキンの3大マフィアは、シュウ=ウ一家・シャ=ア一家・エイ=イ一家。組長・後ろ盾の王子・船内の層・作中で語られている内容。この4つで3組を比べます。
※王位継承戦編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
| 組 | 組長 | 後ろ盾の王子 | 取り仕切る層 | 語られている内容 |
|---|---|---|---|---|
| シュウ=ウ一家 | オニオール=ロンポウ | 第3王子チョウライ | 第4層 | 人と物流の利鞘で稼ぐ |
| シャ=ア一家 | ブロッコ=リー | 第7王子ルズールス | 第5層 | 物資全般を取り仕切る |
| エイ=イ一家 | モレナ=プルード | 第4王子ツェリードニヒ | 第3層 | 組長がカキン国の滅亡を掲げる |
1組だけ、語られている内容が別の種類になっている。
カキンの3大マフィアは縄張りを侵さないかぎり争わない
まず確かめたいのは、3組が同じ基準で比べられるかどうか。
新大陸での縄張りを決めるために乗り込んだ、という乗船の名目は3組に共通。船の中では層ごとに分かれて仕切り、互いの縄張りを侵さないかぎり抗争は起きない。トップ同士が電話で調整する関係でもあります(→ ブラックホエール号の内部は5階層)。
規模には差がある。シュウ=ウ一家は3組のうち資金力も構成員も最大。ただしこれは大小の差で、やっていることの種類は変わらない。
組長3人の立場もそろっている。オニオールとブロッコはカキン国王ナスビーの異母兄弟とされ、モレナも二線者を名乗る。二線者は表舞台に姿を見せないことを条件に生かされ、王族に絶対服従とされる立場。
同じ条件で生かされ、同じ名目で船に乗り、同じやり方で縄張りを分けている。ここまでは3組に差が見当たりません。
シュウ=ウ一家とシャ=ア一家に語られているのは稼ぎ方だけ
差が出るのは最後の列。
シュウ=ウ一家について作中から拾えるのは、第4層で人と物流の利鞘を取っているということ。シャ=ア一家は第5層で物資全般を仕切っている。どちらも稼ぎ方の説明。その先に何を目指しているかは出てこない。
2組が金にしか関心がないわけでもありません。No.378「均衡」でオニオールが電話で語るのは、もっと込み入った話でした。
物質は有限なので分母が増えるほど分け前は減るという話。持つ側が安定して持ち続けるには、割を食う側が大多数でなければならない。だから持たざる側に力を与えてはいけない、と続きます。
取り分の話であると同時に、今の序列を保つという考え方です。ただし向いている先は、あくまで自分たちが今いる場所。壊しにいく話ではない。
シャ=ア一家の後ろ盾は第7王子ルズールス。麻薬常習者の更生を真剣に考えている面があります。ただしこれは王子個人の考えで、組の目的として語られたものではありません。
エイ=イ一家のモレナが掲げているのは国の滅亡
1組だけ、別の種類のものが出てくる。
No.408「交渉②」で、組長のモレナは自分の目的がカキン国の滅亡だと語ります。それが達成できたら人類滅亡まで頑張るつもりだ、とも。
稼ぎ方ではなく、目的そのものが言葉になっている。3組のうちここだけです。
ただしこれはエイ=イ一家の目的ではなく、モレナ自身の目的として語られたもの。エイ=イ一家はもともと富裕層との闇取引で稼いでいた組で、モレナが組長になってからまだ日が浅いとされます。
作中で語られているのは稼ぎ方までで、目的が出てくるのはエイ=イ一家だけ。そう見ると、代替わりで別の方向へ外れた組が1つある、と読めます。
念能力者を増やしていくやり方はモレナの念能力“恋のエチュード”で書きました。向かう先を決めているのは、モレナ自身の目的です。
均衡を破ったのは、王族への服従を捨てた組だった
3組の関係を保っていたのは「均衡」。縄張りを侵さない。トップ同士で調整する。No.378 の話のタイトルがその語そのものです。
抗争状態に入ったのは、エイ=イ一家が他の2組を裏切ってからでした。均衡を破った組と、組長が国の滅亡を掲げた組は同じ。
3人とも表向きは、王族に絶対服従を条件に生かされてきた立場。マフィアの掟と、王族への服従。2つの縛りを同時に受けている3人のうち、両方を捨てたのが1人だけでした。
しかも、そのうち1人は条件を負う血筋ですらなかったと No.408 で明かされます。本物のモレナ=プルードはすでに墓の中にいると本人が語り、いま組長の座にいるのは成り代わった別人。本物の名を名乗ったまま、その名乗りが背負う掟のほうは捨てています。
なおシュウ=ウ一家にも、読む人によって受け取りが分かれる材料があります。No.390 でチョウライが心の中でオニオールを父さんと呼ぶ場面がある。実の親子ではないかと読まれている。
もし血縁なら、この組にも稼ぎ以外の動機があることになる。ただし作中で確定していません。
そろえた3組のうち、1組だけが外れる作り
3組の条件がここまでそろっているのは、意図的ではないか。俺にはそう思えます。
組長の立場も、乗船の名目も、縄張りの分け方も、守るべき掟も同じ。違いは規模くらいで、読者が比べたときに差が出ない。そろえておいたからこそ、1組だけが別の種類のものを持ち出したとき、そこだけ違いが見える。
3組が最初から別々の目的を持っていたら、モレナの発言は「そういう組もある」で終わっていた。同じ条件で生かされてきた3人のうち、1人だけがその条件を捨てた。その形だから、捨てたことの意味が読めます。
王位継承戦は王子同士の争いとして始まりました。そこに、王家の仕組みの内側で表に出ないことを条件に生かされてきた3人が並べて置かれている。
1組が国そのものを壊しにいくのは、外から来た乱入ではありません。同じ仕組みの内側から出てきたものです。冨樫が3組の条件をそろえたのは、そこを見せるためだったように思えます。
まとめ|そろえた3組で違ったのは1つだけ
- 3組とも後ろ盾の王子がいて、船内に取り仕切る層を持つ。乗船の名目も新大陸の縄張りで共通
- 組長3人はいずれも二線者とされ、表向きは王族に絶対服従を条件に生かされてきた立場
- シュウ=ウ一家とシャ=ア一家について作中から拾えるのは稼ぎ方まで。目的として語られたものは出てこない
- エイ=イ一家だけ、組長モレナがカキン国の滅亡という目的を言葉にしている
- ただしそれは一家の目的ではなくモレナ自身のもの。エイ=イ一家はもともと富裕層との闇取引で稼ぐ組だった
そろえてあるから、外れた組の外れ方がはっきり見える。マフィアの掟と王族への服従をどちらも破ったのは、3人のうち1人だけでした。
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